何の日 6月29日 ２０１７

#何の日 佃煮の日
「作った？！」
「お母さんと」
「イヤなら断れよ」
「楽しかったです」
炊きたての飯と一緒に噛みしめる
「ちょっと甘くねぇか」
「甘いほうが長持ちするんですよ」
いそいそと茶を淹れる顔を眺める
「お前は色々甘すぎる」
「え？」
「何でもねぇ」
#1日1のわヒロ

何の日 6月28日 2017

#何の日 パフェの日
「一口食べますか？」
「いらねーよ」
嬉しそうに食べる野分をみつめる
「…可愛いな」
「えっ？」
「あっ、いや、その苺が」
「苺ですか？」
「そうだよ」
「どうぞ」
差し出された苺を口にして
「ヒロさんの方が可愛いです」
甘さに眉を寄せた
#1日1のわヒロ

何の日 6月27日 2017

#何の日 日照権の日
「お前って誰にでも愛想良いよな」
「そうですか？」
「そうですよ」
「怒ってますか？」
「怒ってねぇよ」
絶対に言ってやらねぇけど
「すみません」
「別に謝らなくていいから」
笑ってくれ
おひさまみたいな笑顔は俺だけが独り占めしたいなんて
#1日1のわヒロ

何の日 6月26日 2017

#何の日 露天風呂の日
「すげぇたくさん星が見える」
嬉しそうな顔に見惚れて
「思いきって来てよかったな」
「ヒロさん」
「ん？」
濡れた髪に手を伸ばし上気した頬に唇を寄せる
「ンなとこで…ヤメろって」
どんな所に来ても
「すみません」
俺はヒロさんしか見えない
#1日1のわヒロ

何の日 6月25日 2017

#何の日 住宅デー
「和風も悪くないですよね」
「うん」
「ヒロさんはどれがいいと思いますか？」
「何が？」
「家の話ですよ」
「俺は書庫さえあればいい」
「じゃあお風呂は俺が決めちゃいますね」
「風呂？」
「総ガラス張りの浴室もいいですね」
「却下だ！却下」
#1日1のわヒロ

何の日 6月24日 2017

#何の日 UFO記念日
「野分、見たか？」
「月がきれいですね」
「違う！その隣に飛んでたヤツ」
「…何も見えませんよ」
「絶対UFOだったって！やっぱ宇宙人はいるんだ」
「ヒロさん、もし俺が」
「ん？」
「なんでもありません」
貴方を連れて帰りたいと言ったなら
#1日1のわヒロ

何の日 6月23日 2017

#何の日 踏切の日
雨の中でよく似た黒髪に目が吸い寄せられた
通り過ぎる電車の向こう側を見つめる
淡い期待と諦めが点滅する
ようやく上がった遮断機の向こうには会いたかった人の姿はなく、通わなくなった猫は新しい家を見つけたのかと笑いながら濡れた線路を見下ろした
#1日1のわヒロ

何の日 6月22日2017

#何の日 カニの日
「ヒロさん、蟹嫌いでしたか？」
「そうじゃねぇけど」
「俺が剥きましょうか？」
「いいって」
「遠慮しなくてもいいです。はい、どうぞ」
「やめろって」
「野分ー」
「なんですか先輩」
「すげぇ食いづらいんだけど」
「先輩は自分で剥いて下さい」
#1日1のわヒロ

何の日 6月21日 2017

#何の日 冷蔵庫の日
ドアを開けてため息をついた
「ヒロさん」
「ここんとこ暑くってな」
冷えたビールを隅に寄せて
「ちゃんと食べて下さいね」
「わかってるって」
「作り置きしておきましたから」
「悪ぃな」
俺がいない時間を埋めるように空っぽの冷蔵庫を埋めていく
#1日1のわヒロ

何の日 6月20日 2017

#何の日 ペパーミントデー
「遅刻するッ」
「朝ごはんできてますよ」
「悪ぃ、もう行く」
バタバタと洗面所から玄関へ向かう背中を追いかける
「ヒロさん」
「何？」
「いってらっしゃい」
「…ってきます」
ペパーミント味の唇を反芻しながら走り出す後ろ姿に手を振った
#1日1のわヒロ