何の日 12月31日 2016

大晦日
「帰ってきても本ばっかりね」
「読みたい本がたまってんだよ」
「お蕎麦食べる？」
「食う」
除夜の鐘が聞こえてくる
「来年は野分くんも連れて来てね」
「あいつは忙しいんだよ」
大切なものが増えていくたびに
悩みも増えていくのはなぜなんだろうか
#1日1のわヒロ

何の日 12月30日 2016

地下鉄記念日
改札から出てくる人の群れに目を凝らす
「ヒロさん！」
「でけぇ声出すんじゃねー」
「そのマフラーよく似合いますね」
「聞いてんのか？」
赤く染まる頬を見つめて歩き出せば、冬の色の街も色づいていく
「ヒロさんはすごい人です」
「何がだよ」
#1日1のわヒロ

何の日 12月29日 2016

シャンソンの日
「雪ですよ」
光る時計台の上から雪が落ちて来る
「ほんとだ…」
あの日と違うのは
夜の空に浮かぶ２つの白い息
「寒くないですか？」
「平気」
お前がいれば
「ヒロさん？」
「なんでもねぇ」
来ない人を待つ悲しい歌は今夜は聞こえてこない
#1日1のわヒロ

何の日 12月28日 2016

身体検査の日
「痩せました？」
「いえ」
「絶対痩せましたって。なあ野分」
「先輩、ヒロさんに近寄らないで下さい」
「いーだろ別に。それより上條さん痩せただろ」
「そうですね」
「お前まで適当なこと言うな」
「だってヒロさん軽くなって」
「ッ、帰る！」
#1日1のわヒロ

何の日 12月27日 2016

ピーターパンの日
大事なものをようやく手に入れた俺たちは
「聞いてるのか秋彦〜」
きっともう一緒に歩いていくことはないけれど
「飲みすぎだぞ弘樹」
「うるせぇ」
でかいクマを抱きしめて笑う
たまには戻るのも悪くねぇ
まだ何も失ってなかったあの頃のように
#1日1のわヒロ

何の日 12月26日 2016

プロ野球誕生の日
「すみませーん」
足元に転がってきたボールをひょいと投げ返す
「お前って何かスポーツやってた？」
「いえ」
「そっか。いい身体してんのにもったいなかったな」
「俺、ヒロさんのためなら何にでもなりますけど」
「そーゆー意味じゃねぇバカ」
#1日1のわヒロ

何の日 12月25日 2016

クリスマス
「昨日上條さんに会えたのか？」
「見てたんですか？」
「お前の顔でわかるんだよ。で、プレゼントなんだった？」
「ナイショです」
「ケチ。あーあ、俺にもミニスカサンタ来ないかなー」
「ヒロさんはそんなの履かなくても可愛いです」
「お前な…」
#1日1のわヒロ

何の日 12月24日 2016

クリスマスイブ
来ないやつを待つことはやめた
華やかな街の中を1人歩く
「ヒロさん！」
「おう」
会いたいのなら
「会いに来てくれたんですか？」
「アホか。着替え持ってきただけだ」
会いに行けばいい
「ありがとうございます」
想いは鞄の底に隠して
#1日1のわヒロ

何の日 12月23日 2016

天皇誕生日
「余計なお世話だ…」
いつも買う惣菜のパックに貼られたサンタのシールを破り捨てる
「クリスマスのための連休じゃねぇっての」
簡単な夕飯をすませて読みたかった本を積み上げ、ソファーに身を預けてページをめくる
一人の夜はゆっくりと更けていった
#1日1のわヒロ

何の日 12月22日 2016

ショートケーキの日
「ケーキ買ってきました」
「え？」
「コーヒー淹れますね」
「何のケーキなんだ」
「イチゴです」
「そうじゃねぇ。どうしてケーキなんて」
「ヒロさんの誕生日からちょうど1ヶ月記念です」
「めでたいやつ…」
「今日はおめでたい日です」
#1日1のわヒロ