何の日 12月21日 2016

冬至
「ただいまです！」
「うぉっ、びっくりした」
「柚子買ってきましたよ」
「マジか」
「お風呂に入れてもらってもいいですか？」
「おう」
伸ばした手の先でドアが閉まる
「野分ー、柚子は？」
「お待たせしました！」
「ッ、入っていいのは柚子だけだ！」
#1日1のわヒロ

何の日 12月20日 2016

鰤の日
「うまそう」
「照り焼きにしますか？」
脂の乗った身がてらりと光る
「んー」
「お刺身もいいですね」
「そーだなー」
真剣な横顔をじっと見つめる俺の頭の中はヒロさんのことで一杯で
「お前は何が食いたいんだ？」
だからそれは季節を問わずたった１つ
#1日1のわヒロ

何の日 12月19日 2016

シュークリームの日
「お前、何つけてんだよ」
「差し入れを食べてたんです」
クリームをぺろりと舐めとる舌に目が止まる
「ヒロさん？」
「あ、これ着替え」
「ヒロさんも食べますか？」
甘い唇が掠めていく
「クソガキ」
足りねぇとは言えずに蹴りを食らわした
#1日1のわヒロ

何の日 12月18日 2016

東京駅完成記念日
忙しなく流れる人混みを抜ける
「ヒロさん！」
駆け寄るコート姿に目を細めた
「おかえりなさい」
「お前もな」
２つの旅行鞄が触れ合う
「食べて帰りますか？」
「そーだな」
「まるでデート」
「じゃねぇ」
笑いながら輝く街へ歩き出した
#1日1のわヒロ

何の日 12月17日その2 2016

飛行機の日からの、新婚旅行編

「なんだか緊張してきました」
「初めてじゃねぇだろ」
「ヒロさんと一緒に乗るのは初めてですから」
「言ってろバカ」
するりと握りしめられた手から伝わる温かさに二人きりの旅の甘さを噛みしめる
火照り出した頬をそっと窓に押しつけた

何の日 12月17日 2016

飛行機の日
好きですと言ってくれた男は
理由も言わずに姿を消した
「なんでだよ」
ふらりと来ていた通い猫は
もっといい場所を見つけたのかもしれない
舞い上がる枯葉を目で追う
晴れた冬空はペットボトルが降ってくることもなく
白い飛行機雲だけが伸びていた
#1日1のわヒロ

何の日 12月16日 2016

紙の記念日
「おじゃまします」
冬の陽射しに茶色の髪の毛がとけている
本と資料の山に囲まれて眠る姿に近づいて
「ヒロさん」
そっと唇を重ねると睫毛がふるりと揺れた
「風邪ひきますよ」
「のわ…き？」
紙のお城で眠る姫に目覚めのキスをもう一度落とした
#1日1のわヒロ

何の日 12月15日 2016

観光バスの日
「お茶飲みますか？」
「用意がいいな」
「おやつもたくさんありますよ」
「遠足じゃねぇんだぞ」
「こういうの初めてなんです」
膝の上に置かれた手を握りしめる
「おい…」
「綺麗ですね」
窓の外を流れるイルミネーションを眺めながら指を絡めた
#1日1のわヒロ

何の日 12月14日2016

ハグデー
「遅刻するって」
「少しだけ」
背中にまわされた手の熱がスーツ越しに伝わってくる
「てめぇも仕事だろ」
「すみません」
首すじにかかる声を引き剥がしながら靴べらを渡す
「いってらっしゃい」
「ん」
僅かな逢瀬に満たされて
師走の朝がまた始まる
#1日1のわヒロ

何の日 12月13日 2016

ビタミンの日
「ただいまです」
冷えきっていた身体に
「くっつくなって」
温もりが染みこんでくる
「ビタミンH補給です」
「くだらねぇこと言ってんじゃねー」
だったらてめぇはさしずめビタミンワンだと
そこらじゅうにキスを降らせ始めた黒い頭を搔きまわした
#1日1のわヒロ