何の日 5月16日② 2016

旅の日
「なんで俺まで」
「旅は道連れだなー」
「急に出張を入れられると予定が」
「土産買ってやるからさ」
「資料はできてるんですか？」
「あ…」
「土産の心配より早く準備をして下さいよ」
「部屋はダブルでよかったか？」
「いいわけないでしょうがッ！」
#1日1のわヒロ

何の日 5月16日 ① 2016

旅の日
「ヒロさん、昨日どこかに出かけてたんですか？」
「あぁ、教授に頼まれたんだよ」
「そうなんですか…」
「嫌だって言ったのに無理矢理入れられてさー」
「えっ」
「でも行ってみたらすげぇ良かった」
「そんな…」
「ん？今度はお前と行ってもいいぞ」
#1日1のわヒロ

何の日 5月15日 2016

ストッキングの日
「いいよなぁ」
「はぁ…」
「ビリっと破くのもたまんねーし」
「そういうもの、ですか？」
「お前、考えたことねーの？」
「ないです」
「じゃあ上條さんで想像してみろよ」
「えっ？」
「あの人が履いて」
「やめて下さい！それは俺だけが」
#1日1のわヒロ

何の日 5月14日 2016

温度計の日
「…なに」
「具合悪いんじゃないですか」
「わかんねぇ」
「少し熱いですね」
「そんなんで分かるのかよ」
「ヒロさん？」
「もっと…ちゃんと測れ」
「はい」
熱のせいだと言い訳をして
抱きしめてくる長い腕に絡め取られて、熱い息を吐き出した
#1日1のわヒロ

何の日 5月13日 2016

愛犬の日
「弘樹」
「秋彦！？」
「こんにちは宇佐見さん」
「どうも。デートか」
「そんなんじゃねえって」
「違うのか？」
「これはあれだ、その」
「なるほど…散歩か」
「そうだよ！行くぞ野分」
尻尾を振っている様な恋人と立ち去る幼馴染みに手を上げた
#1日1のわヒロ

何の日 5月12日 2016

看護の日
ずっと待っていたのは
「どうしたんですか？熱は測りましたか？」
草間先生なんていう
「薬は」
「野分…」
医者なんかじゃなくて
「なんですか？」
真っ黒な瞳と髪の毛と
「ここにいろ」
「…はい」
あたたかな手をした
世界で一つだけの特効薬
#1日1のわヒロ

何の日 5月11日2016

鵜飼開き
「すげぇ」
「俺だってヒロさんのためならあれくらい」
「無理だろ」
「どうしてですか？」
「てめぇはすぐに飲みこむからな」
ニヤリと笑った顔が赤いのはアルコールのせいなのか
揺れる篝火のせいなのか
「…後で試してみて下さい」
「望むところだ」
#1日1のわヒロ

何の日 5月10日 2016

コットンの日
ふわふわになったバスタオルを畳む
お風呂が先かな…
ぱりっと乾いたシーツを敷いて
夕飯が先かな…
お揃いのパジャマも…一応用意して
着る暇なんてないだろうけど
「ただいま」
「おかえりなさい」
抱きしめたシャツ越しの体温から味わった
#1日1のわヒロ

何の日 5月9日 2016

ゴクゴクの日
ごくりと白い喉がうごめいた
「おかえり」
ほんのりと上気した頬
キュッとキャップを捻る手首
「どうした？」
口元を伝う雫をみつめる
「からからなんです」
「は？」
タオルを巻いただけの身体を抱き寄せる
「えっ？」
なにもかも飲み干したい
#1日1のわヒロ

何の日 5月9日 2016

告白の日
「…どうした？」
「いや、なんでもねぇ」
吐き出せなかった言葉は今日もまた胸の中に降り続ける
消えることもなく
とけることもない
積もりすぎた行き場のない言葉に溺れかけては
ただ一人で息をするためだけに
今夜も
名前も知らない誰かの手を掴む
#1日1のわヒロ