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frown

当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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イケナイ太陽

リクエストしてもらった夏ののわヒロ

2018.8.22



青い空、白い雲、輝く太陽。
悪くない。つかむしろ
「気持ちいいですね」
波の音を受けて野分が笑う。ちょっと伸びた髪の毛が潮風になびいて、やたらといい感じに見える。
「ヒロさん?」
「なんでもねぇ」
見惚れかけてたことに気づかれそうで、弘樹は慌てて目を逸らした。
自転車通勤しているせいなのか、仕事ばかりしているわりに野分は程よく日焼けしていて、海辺に立っているだけで様になっている。もともと背が高いうえに色々なバイトで鍛えられた身体は水着になると目立ってしまってしかたがない。
「とりあえずどっか座ろう」
平日とはいえ砂浜にはカラフルなパラソルや小さなテントが並んでいる。空いているところを探して歩き始めた二人の足元にピンク色のビーチボールが勢いよく転がってきた。
「すみませーん」
素早くビーチボールを拾った野分の元へ若い女が駆け寄ってくる。
「どうぞ」
「ありがとうございます。あれ?草間先生だ!」
野分を見上げた女の顔がぱっと輝いた。最初、不思議そうな顔をしていた野分だったが「外科の藤井です」と名乗られてにこりと微笑んだ。
「こんなところで会うなんてびっくりですね」
はしゃぐ女の声に、まったくだ、と心の中で苦々しく呟きながら弘樹は野分から少し離れた。
ようやく二人一緒に出かけて来たのに、野分の知り合いに会ってしまうなんて、俺もよくよくついてない。
じりじりと強い日差しが肌を刺す。
「先生、向こうに小児科のナースの子も来てるんですよ。よかったら一緒にどうですか?」
白いビキニの女の腕が野分にからみついた。
「俺は」
「行ってくれば」
素っ気なく言い放った弘樹に野分が困ったような声を出した。
「ヒロさん」
「お友達も一緒にどうぞー」
「俺は飲み物買いに行ってくるから。お前一人で行ってこい」
「ヒロさん!」
野分の声を振り切るように弘樹は海の家の看板に向かって歩き出した。
野分は優しいし、親切なヤツだ。職場の人間に知らんぷりはできないだろう。
けれど、あんな風にベタベタされているのを見ているのはおもしろくない。
怒りにまかせて海の家まで歩いて来たものの特に飲みたいものもなくぼんやりと立ちつくした。
日焼けした男たちが笑いながら通り過ぎていく。
さっきまであんなに気持ち良く感じていた潮風が、急にべたべたとまとわりつくように思えて肩を落とす。
「お兄さん、一人?」
「えっ?!」
不意にかけられた声に顔を上げると、赤、青、黄色のシロップをかけたカキ氷が目の前にあった。
「これさぁ間違えて買っちゃったんだ。よかったら食べてくんない?」
「いや、でも」
「ほら早く、溶けちゃうよ」
強引にカキ氷のカップを渡されてしたかなく受け取る。
学生ではなさそうだが、どう見ても自分より若い男は紫とピンク色の混ざったカキ氷のカップをコツンとまるでグラスをぶつけるように当てて笑った。
「はい、かんぱーい」
「どうも」
どうしたものかと躊躇っていたが、「ほらほら溶けてきたよ」と急かされて赤い部分から食べ始めてみると、思っていたよりも甘すぎず、日差しに熱くなっていた身体に冷たさが気持ちよく沁みていく。
「美味い」
「よかった」
海を眺めながらしゃくしゃくと氷を食べる弘樹の横から立ち去ることもなく男も並んで自分の氷を食べている。そういえば、まだカキ氷の代金を払ってなかった、と隣を向いた。
「氷、いくらだ」
「いらない」
「だめだろ」
見ず知らずの人間に奢ってもらうわけにはいかないと言うと弘樹の食べかけのカキ氷に男が自分のスプーンをつっこんできた。
「おい」
勝手にカキ氷を食べて男はへらっと笑った。
「俺もそれ食べたから、お金はいらない」
「はぁ?」
変なヤツに捕まったもんだと弘樹は一気に氷をかきこんだ。
「あー、そんな食べ方したらダメだよ」
氷の冷たさにキンッと頭に痛みが走る。思わず呻き声を上げた弘樹の頭を男の手が撫でまわした。
触るな、と言おうとしたが口の中にまだカキ氷が残っていて言葉が出ない。
その時、
「やめてください」
低い声とともに頭にのっていた手が払われた。
「その人は俺のです」
静かな声の中にある怒りの色にぞくりと背中が冷えた。
「連れがいたんだー、残念」
不穏な空気に気づいたのだろう。男は笑いながら食べかけのカキ氷を手に離れて行った。
周りの喧騒から切り取られたかのように二人の周りだけがひんやりとしている。
「ヒロさん」
野分の視線が重く絡みつく。
「何してるんですか」
「見りゃわかるだろ。カキ氷食ってた」
「他の男とですか」
残っていたカキ氷を野分が荒々しく奪い取る。
「別に一緒に食ってたわけじゃねーし」
アイツが勝手に横にいただけで、と言った弘樹に野分が差し出したのは弘樹の財布だった。
「ヒロさん、財布も携帯も持っていかなかったのに、どうやってカキ氷買ったんですか?」
「それは、あれだ。なんか買い間違えたとかで…貰ったんだよ」
はぁっと野分が呆れたように大きなため息を落とした。
「なんでそんな簡単にナンパされてるんですか」
「ナンパ?」
「はい。それは絶対ナンパです」
「ンなわけねーだろ。学生時代ならまだしも、俺みたいなおっさん」
「大学生の頃はナンパされてたんですか?!」
「若い時は誰だってあるだろ」
「俺は男にナンパされたことはないです」
「お前は女にもてるタイプだからな」
さっきの女のことを思い出して声が刺々しくなる。
「あの子にもずいぶんと馴れ馴れしくされてたじゃねーかよ」
「あの子?」
「ナントカっていうナース」
「ああ、藤井さんですか。あの人まだ新人なので俺に恋人がいるのを知らなかったみたいで」
「どういう意味だよ。まさかお前職場中の人間にいちいち俺のことを言いふらしてんじゃねぇだろうな」
「俺、病院で聞かれるたびにちゃんと可愛い恋人がいるって言ってますよ」
当たり前じゃないですか、と笑う野分の足をビーチサンダルで思い切り蹴り飛ばしてやった。
「痛いです」
「てめぇはどうしてそう恥ずかしいことするんだよ!少し海で頭を冷やしてこいっ!」
「じゃあ、一緒に入りましょう」
「俺は一人で泳ぐ」
「ダメです。また変な男に捕まったりしたら困ります」
「お前が言うな」
そもそもあの時、偶然出会った公園で俺を捕まえたのは誰なんだよ。
「行きましょう」
笑いながら手を握られて歩き出す。 
「離せって」
「また迷子になると困るので」
さらに強く握りしめてくる手の熱に顔が熱くなってくる。
「あっちいな」
「大丈夫ですか?」
覗きこんでくるその瞳にさらに熱が上がり出すのがわかって目を逸らす。
「早く…早く海に入ろう」
「わかりました」
この夏一番暑い日は、思い出すのも恥ずかしい日になった。
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HN:
さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中

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