frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
大は小を兼ねる
- 2018/04/15 (Sun)
- エゴss |
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ツイッターでの企画 ♯エゴわんにゃん祭り に参加しました。
2018.4.15
2018.4.15
「うちの子、ほんとに草間くんが好きなのよね」
聞き覚えのある女性の声に目をやる。俺たちの住んでいるマンションの前で立ち話をしているのは大家さんだ。親切な人だが話好きなのでたまに捕まると大変なことになる。
今日相手をしているのはやたらデカイ男で、俺がよく知っている広い背中にリュックを背負ったままなのは仕事帰りに捕まってしまったんだろう。
「あら、おかえりなさい」
気づいた大家さんに声をかけられて、俺はべこりと頭を下げた。
「ヒロさん」
振り返って嬉しそうに笑った野分の胸元には小さな白い猫がゴロゴロと喉を鳴らしておさまっていた。
「どうしたんだ、ソレ」
「ウチの子、可愛いでしょ」
大家さんの飼い猫だというのにまるで野分の猫のように懐いている。まだ小さく、ふわふわとした白い毛に包まれて丸まっている様は白い毛玉のようだ。
「モモちゃんはメンクイなのよ」
野分の横に並んだ俺を見上げてきた猫が前足をひょこんと差し出した。
そうっと握った柔らかさに思わず顔が緩む。小さな体から伝わる温かさや柔らかさは久しく感じたことのないもので心地よい。喉元を撫でてやると目を細くしてゴロゴロと甘えた声を出した。猫と遊ぶなんて何年ぶりだろう。
「こっちくるか?」
野分の腕の中からもそもぞと身を乗り出し始めた子猫に顔を寄せると、頬をペロリと舐められた。ザラザラとした舌先の感触がくすぐったい。
「ダメです」
せっかく仲良くなれそうだったのに、野分が自分の腕の中に隠すように子猫を抱えこんでしまった。
「ンだよ」
「だって」
「わかったよ」
猫を抱えている野分を置き去りにしてさっさと一人でマンションの中に入ると、エレベーターに乗りこんだ。
「ヒロさん!」
慌てて大家さんに猫を渡している姿がエレベーターの中からちらりと見えた気がした。
部屋へと入り、手洗いとうがいをすまして、ソファーに腰をおろす。
小さくて柔らかな猫を大事そうに抱えていた野分の姿を思い出してまたムカムカする。
ああいうちっちゃくて可愛くて甘えるタイプが好きだとは知らなかった。
ばたばたと慌ただしく帰ってきた音にも振り向かずテレビをつけた。
よりによって画面に映ったのもまた猫だ。生まれたばかりの子猫がフニャフニャと戯れている。
「ただいまです」
「…おかえり」
野分が下げているビニール袋からは爽やかな柑橘の香りがしてくる。
「大家さんからおすそ分けです」
「お前、ずいぶんと気に入られてんな」
このモヤモヤとした気持ちは大家さんに対してなのか、猫に対してなのか。
どっちもか
野分は誰にでも好かれる。そんなことは今に始まったことじゃない。
「俺が好きなのはヒロさんだけです」
ソファー越しに後ろから抱きしめられる。
「白くてちっちゃくて可愛いのが好きなんだろ」
「猫は嫌いじゃないですけど、ヒロさんにキスするような猫は嫌いです」
「なんの話だ?」
振り向いた頬をペロリと舐められる。
「俺以外の人に触らせないで下さい」
目蓋に額に鼻先に、キスをしてくる。
「わかった、わかったって」
顔中を舐めまわすような勢いで唇を押しつけてくる野分の髪の毛をぐしゃぐしゃとかきまわしてやると、ようやく離れていった。
「わかったから、とりあえず飯にしよう」
「はい」
パタパタと自室へと向かう野分の後ろ姿に大きな尻尾が見えた気がして一人で笑った。
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プロフィール
HN:
さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中