frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
あなたの痛みはどこから
- 2016/07/19 (Tue)
- 捧げ物 |
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「かーみーじょーおー、おーはーよー」
いつものように後ろから肩に手を回した宮城はひょいと覗きこんだ上條の表情にギョッとした。
「お前どうした?」
「その前に教授、手をはなしてください・・・」
「あ、ああ悪い」
あまりにも辛そうな様子に宮城もおとなしく手をはなした。
「どっか具合でも悪いのか?」
「いえ、別に・・・」
「嘘つけ。ひでぇ顔してるぞ。どした?」
やけに優しい声で聞かれて、上條は困ったように肩をさすった。
「実は・・・」
◇◇◇◇◇
宮城に教えてもらった名前のついている小さな白い看板をみつけた上條はそっとドアを押した。
カランカランカラン
ドアに付けられたベルの音に思わずビクリと身を竦ませる。
評判がいい整体だと聞いて想像していたよりも手狭な感じではあるが、清潔な内装と病院特有の匂いにホッとしながら受付をのぞいた。
「すみません」
誰もいない受付は静まり返っている。
診察時間がぎりぎりだったことを思い出した上條は電話も入れずに来たことを後悔していた。
「すみません」
もう一度だけ、と声をかけた時、受付の横のドアが開いた。
出てきたのは黒いパーカーを着た若い男性だった。
「はい」
「あの、もう終わりですか?」
「大丈夫です。どうぞ」
そう言って奥へと戻って行った男性の後ろからついていくとすでに暗くなっていた部屋の灯りをつけスチールデスクの前にあるパソコンを立ち上げ始めた。
「初めまして。俺、草間野分といいます。」
「あ、はい」
「これ、書いてもらっていいですか?」
問診票を渡された上條が書きこんでいる間に白衣を着てきた草間野分は書き終わった問診票をじっとみるとほうっと小さく息を吐いた。
「上條弘樹さんっていうんですね」
「・・はい」
「じゃあ、ヒロさんですね」
なぜだかやたらと嬉しそうな顏に嫌とも言えずにいるとそっと首筋に手が伸びてきた。
「痛むのはここですか?」
「はい。あとは肩が」
簡単な触診のあと、部屋の隅のカーテンを指して着替えをするように言われた上條は備え付けの服に着替えた。
「あの、先生」
「野分でいいですよ」
にこにこと笑いかけてくる顔は冗談とも本気ともとれず上條は苦笑いをした。
「・・・あの、この服なんですが」
「はい」
「ちょっとサイズが」
「あ、すみません。今日はもうそれしかなくて」
「そう・・ですか」
諦めて少しぶかぶかの緑の服を着て出てきた上條を見た野分は感に堪えないといった面持ちをした。
「似合いますね」
この服に似合うとか似合わないとかねぇだろう、と一人心の中でつっこみをいれながら、上條は言われた通りに診察用のベッドに俯せになった。
温かい手のひらが肩にのせられる。
「力抜いて下さいね」
肩から背骨に沿って動く温か手が心地いい。
こわばっていた身体が緩められていく感覚に上條は深く息を吐いた。
◇◇◇◇◇
「はい。終わりました。」
違和感があったのは上半身だけのつもりだったが、頭から足の先まで施されたマッサージと骨盤矯正が終わったあとの爽快感に上條は驚いていた。
「ありがとうございます」
薄っすら汗ばんでいる野分に頭を下げる。
「一度では治りませんから、何回か通って下さいね」
「はい」
「何時でも電話してくれたら開けておきますから」
「ありがとうございます」
診察券を作り、もう一度礼を言って帰る上條の後姿をみつめながら、野分はそっと呼びかけた。
「ヒロさん」
そうして、宝物を見つけた子どものように笑った。