frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
猫のヒロさん
- 2018/04/19 (Thu)
- 捧げ物 |
- Edit |
- ▲Top
2015.3
今日はなんだか暖かい。
久しぶりに帰宅できて、久しぶりに弘樹に会えて、幸せな気持ちで眠りについていた野分は、カーテン越しの日差しを感じてゆっくりと意識を浮上させた。
布団の中で目を閉じたまま、腕の中で、もぞっと動いた茶色の髪の毛に顔を埋める。
あれ?
いつものさらさらとした髪の毛。
いつもの匂い。
だけど、その中にある柔らかなこの感触は……。
目を開けた野分が見たものは、ピンと立った耳だった。
「いったいこれはどういうことなんだよ……」
野分に慌てて起こされた弘樹は、自分の頭に生えた耳を手で乱暴に引っ張っていた。
それはまるでネコの耳のような形をしていて、茶色の髪の毛と同じ色の毛に覆われている。
「かわいいですね」
にこにこと笑った野分の顔にピシッと猫のようなパンチが決まった。
「笑ってる場合かよ」
「あ、そうか。困りましたね」
「そうだよ。こんな体になっちまって」
「ネコさんなら、朝ごはんはコーヒーじゃなくミルクの方がいいですかね?」
「お前の困ったって、そこかよ」
「だってお腹空いてませんか?」
昨夜はあんなに……と言いかけた野分を、弘樹が思い切りベッドから蹴り飛ばす。
「お前は、そういう言い方するなって何遍言ったら」
「……ヒロさん」
床にしりもちをついた野分がポカンと口を開けてベッドに仁王立ちしている弘樹を見ている。
「ンだよ」
「それって、」
野分が指差す自分の腰へと視線を遣ると、そこには茶色の耳と同じ色の長いしっぽが揺れている。
「なっ、なんだこれは……」
呆然と立ち尽くす弘樹の前に立ち上がった野分が囁く。
「かわいいです」
そうして優しく腕をまわすとピクピクと震える耳にそっと口づけた。
「やめ、っ」
弘樹の言葉を裏切るように、ゆらりと揺れた尻尾がそっと野分の太腿へと巻きついた。
「ヒロさんはネコになってもかわいいです」
うるせぇ、とボソッと呟いた唇を塞がれて目を閉じる。
覚えておけよ
弘樹は野分の広い背中にまわした手に力を入れると、爪を立てた。
その痛みに野分は嬉しそうに笑った。
- << 【当て馬】
- | HOME |
- 【髪型チェンジ】 >>