猫

「ただいまで」
「ニャア」
「えっ？！」
「ニャニャア」
「あぁでも猫になってもヒロさんは可愛いです」
「ニャ？！」
「お前何してんの」
「ヒロさん？じゃあこの猫は」
「預かり物。お前猫好きなんだな」
「俺が好きなのはヒロさんだけです」
「ニャア」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

初夢

「なあ野分、俺たちにとっての初夢っていつの夢だろうな」
「難しいですね」
「たまにはちゃんと家で寝て富士山の夢とか見たい」
「俺は富士山よりヒロさんの夢が見たいです」
「俺は初夢の話をしてるんだけど」
「いつでもヒロさんの夢が1番良い夢です」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

無題

「もう一回だ！」
「もういいよ」
「勝ち逃げはさせねーぞ」
「やってもいいけど、負けた方に墨つけるのやめようよ」
「ダメだ！羽付きに墨はつきものだろ」
「弘樹の顔、真っ黒になるんじゃ」
「次は勝つし！あ、絶対手加減するなよ秋彦」
「わかったよ」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

師走

２つの白い息がリズムを刻む
「やっぱお前体力あるな」
「そうですか？」
「俺の方がよく走ってるのに平気でついてくるじゃねぇか」
「ヒロさんと走るのは楽しいです」
「言ってろ」
「あ、まさに師走ですね」
「お前な」
笑いながら走る道に朝日が差した
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

クリスマス

「これやるから元気出せ」「何ですかコレ」
「ミニスカサンタ」
先輩から渡された服を持って久しぶりに帰った部屋にはツリーが飾られていた
『ヒロサンタさんが来ますように』
ぶら下げた短冊の下にそっと貰った服を置いてみる
クリスマスの奇跡を願って
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

お酒

「お前って、酒強いよな」
「多分」
「野分のくせに生意気だ。今日は酔わせてやる」
溢れそうなくらいに注がれたグラスに慌てて口を寄せる
「どうだ、酔ってきたか？」
ケラケラと笑う顔に頬が熱くなる
「ずっと酔ってますよ」
ヒロさんに、と口移しで伝えた
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

名前

上條弘樹
好きな人の名前を書いてみた
ヒロさんは名前の漢字まで可愛い人だ
草間野分
隣に自分の名前を書いたらそれだけで嬉しくてペンを持ったまま笑ってしまった
「野分、どれ買うか決まったか？」
試し書きの紙を覗きこんだヒロさんの顔が真っ赤になった
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

通勤通学

一緒の玄関から歩き出す
同じ道なのに
ヒロさんにとっては通勤で
俺はとっては通学
同じ道だけど、違う道
待ってもらえるんだろうか
2人の道が重なるその日まで
「野分？早くしろよ」
「はい！」
前を歩くヒロさんにかけよっていく
置いていかれないように
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

着物

「どうですか？」
振り向いた野分の着物姿に声も出ない
「似合うわねぇ」
ババァが浮かれた声を出す
「いいんじゃねぇの」
似合いすぎだ、とは言えず目を逸らす
「お正月は2人とも着物で来てね」
「そのためにわざわざ作ったのかよ」
「今から楽しみだわー」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

コート

「いいコートじゃん」
「はい」
嬉しそうにコートを撫でる野分の笑顔が夜勤明けの目にしみる
「あの人、服のセンスはいいな」
「ヒロさんは全部いいです」
「俺にも選んでくれないかな」
「無理です」
「ちょっとは分けろよ」
幸せが溢れている背中を叩いた
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負