【衣替え】

「あ」
ネクタイを締めるヒロさんの姿に
「何？」
長かった夏が終わったことに気づく
「いえ」
ジャケットに手をまわし
「似合います」
いってらっしゃいのキスをする
「…いってきます」
薄着の季節も心配だけど
「気をつけて」
スーツ姿でも心配はつきない
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【指輪】

それにしても
「ピッタリだな」
まるで誂えたように俺の指で輝く指輪を改めて眺める
俺自身でさえ指のサイズなんて知らないのに
「不思議だ」
「ヒロさんのことなら何でもわかります」
「なんでだよ」
「好きだから」
「だったら俺も」
「え！？」
「あ…」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【体の入れ替わり】

「これは」
俺は世界で1番好きな人の身体に変わっていた
「あ、声までヒロさんだ」
こんなチャンス2度とない
「野分好き。大好き」
「やめろー！」
真っ赤な顔の俺が飛びこんできてデカイ手で俺を殴った
「ヒロさん。ヒロさんを殴らないで」
「うるせぇ！」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【台風】

「しかしすげぇな、こんな台風初めてだ」
「ヒロさん」
「ッ、なに」
「俺、負けませんから」
窓を打つ雨風の音が遠くなる
「だか…ら、何を言って」
荒々しい風よりも強く揺すられる
閉め切った部屋の中で膨れ上がった熱量が渦を巻き、長くて熱い夜が始まる
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【食欲の秋】

細い指がページをめくる
「…なに？」
「読書の秋ですね」
「俺は年中だけどな」
本を閉じてくれたヒロさんを抱きしめる
「なに？」
「食欲の秋ですから」
「てめぇは年中だろーが」
「すみません」
ひんやりとした夜の空気を楽しみながら熱いキスをかわした
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【デート】

「ヒロさん三日月ですよ」
「ほんとだ」
昼間の暑さがウソのように冷たい風が流れていく
「やっと秋が来ましたね」
「そうだな」
「遠回りして帰りませんか？」
「いいけど」
人通りの少ない道を手を繋いで歩く
「懐かしいですね」
「帰る家は一緒だけどな」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【パンツ】

「新しいの買ったんですね」
「ん？」
「よく似合います」
「似合うって、コレ？」
「履き心地良さそうですね」
「野分…ひょっとして俺の持ってる服、全部覚えてんのか？」
「まさか」
「だよな」
「パンツだけですよ」
「え？」
「触り心地も良いですね」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

続き

「何でパンツだけ覚えてんだよ」
「なんとなく」
「なんとなく？」
スルリと長い指が入りこむ
「好きだからかな」
「パンツが？」
「ヒロさんの限定で」
「なんだそれは」
「脱がすのも履かせるのも好きなんです」
「変態」
「ヒロさん限定です」
脱がされた新しいパンツがベッドの横にひらりと落ちた

【学パロ】

「弘樹、やっぱり練習するのか」
「当たり前だ秋彦。二人三脚なめんじゃねぇぞ」
「別に俺は勝たなくてもいいんだがな。なんならそこの1年生に代わってもらっても」
「やります！俺、やるからにはしっかりと」
「アホかクラス対抗だっての」
2年の差は大きい
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【スキヤキ】

「おっじゃましまーす」
「津森？」
「すみません。どうしても一緒に鍋がしたいってきかなくて」
「鍋？」
「上條さん、スキヤキ嫌いですか？」
「好きだけど」
「あっ、ヒロさん！先輩に好きとか言わないで下さい」
「は？」
「いーから仲良く肉食おうぜ」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【プロポーズ】

野分からの求婚に言葉を失う
「ヒロさん？」
「何を今さら」
「遅かったですか？」
「そうじゃねぇ」
初めて告白された時からずっと
「ダメ、ですか？」
「ダメなわけねぇだろ」
俺が欲しかったものをくれたのはお前だけだ、と
そう言う代わりに抱きしめた
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負