【食】

「いただきます」
「俺は食いもんじゃねぇッ」
どうして俺はこんなにもヒロさんが欲しいんだろう
「すみません」
いつだって
出会った時からずっと
「好きです」
何もかも全て
食べ尽くしてしまいたい
赤く染まる顔を見下ろして喉を鳴らした
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【食】

いつも不思議に思っていた
「いただきます」
野分には俺が食べたいと思っているものがわかるんだろうか
「どうですか？」
いつだって
出会った時からずっと
俺は野分の作る飯が
「好きだ」
「よかったです」
そして嬉しそうに見つめるその顔も
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【秋】

「皮を剥くのが面倒だよな」
指先から甘い汁を滴らせてヒロさんがぼやく
「剥きましょうか」
「お前上手いな」
「どうぞ」
口元へ差し出した果実を嬉しそうに喰むその唇を
「俺にもください」
「ん？」
味わいながら抱き寄せて
長い夜が始まる
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

9/18

「わかったから、離せって」
熱を持ちかけた指先を取り返して立ち上がる
「行くぞ」
「え？」
「一緒に行くんだろ」
「はい！」
勢いよく起き上がった野分の髪がぴょこんとはねている
「ちゃんと直せよ」
ポンと頭とはたきながら笑って洗面所へと送りこんだ
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/16

「だって」
一緒に暮らしているけれど一緒に過ごす時間は少ないから
「せっかくヒロさんと休みが重なったんですよ」
1人で眠ってなんかいられない
「睡眠不足は身体に悪ぃ」
「ヒロさん不足のほうが深刻なんです」
目を覆っていた手を掴んでその指先を咥えた
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/16

「だまされねーからな」
睨みつけてくる顔が可愛いなぁと見惚れていたら
「そんな顔してもムダだ」
手で目を覆われた
「おとなしく寝てろ」
「わかりました」
「よし」
「ヒロさんがもう一度キスしてくれたら」
「年に一度だと思って調子に乗るんじゃねぇ」
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/14

「ケーキもロウソクも俺が用意することに意味が」
「その気持ちだけで充分です」
甘いケーキよりヒロさんが欲しい
ロウソクとヒロさん…悪くない
「やっぱり俺が買ってきます」
「てめぇ、今ろくでもねーこと考えてるだろ」
「そんなことないです」
「嘘つけ」
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/13

シャツのボタンを外して首すじに顔を埋める
「昼から何を」
「せっかくの休みですし」
「ケーキとか買いに行く予定が」
「ありがとうございます」
「だから」
「大丈夫です」
露わになった肌にキスを落とす
「俺が買いに行きます」
「そういうことじゃねぇ」
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/11

確かめるように抱きしめれば、小さな声が聞こえた
「今日は特別だからな」
そう言って俺を甘やかせてくれるこの人に、俺はきっと何歳になってもかなわない
特別扱いされるのはあまり好きではなかったけれどヒロさんの特別な存在でいられるのは嬉しいと素直に思った
#9月は毎日がのわヒロ記念日

【色気】

まくりあげた白いシャツからのびた手首が額の汗を拭うその姿に心臓がバクバクと音を立てる
ガキだと思っていたのに、いつの間にあんな表情をするようになったんだろう
野分のくせにナマイキだ
黒いエプロンをつけて花を抱える姿に熱くなる頬を隠した
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負