何の日 5月10日 2017

#何の日 コットンの日
「なに？」
長い腕が背後からじゃれつく
「これすごく気持ちいいです」
「お前も同じの着てるだろーが」
布越しに伝わる温かさが心地良い
「つか、さっさと寝ろ」
「眠れなくなりました」
「アホか…」
色違いのパジャマがするりと床に落ちていった
#1日1のわヒロ

何の日 5月9日 2017

#何の日 アイスクリームの日
「ヒロさん、またそんな格好で」
バスルームからタオル一枚で歩く姿を追いかける
「風邪引きます」
「ガキじゃねぇし」
風呂上がりのアイスを咥えたまま睨みつけられて手を伸ばす
「お前も食うか？」
「はい」
冷えた唇は甘いミルクの味がした
#1日1のわヒロ

何の日 5月8日 2017

#何の日 声の日
真面目な話し方も
ちょっと乱暴な喋り方も
照れて暴れながら叫ぶ声も
どんな声も大好きだけど
二人きりで隙間なく重なりあう時の
甘く掠れた声は俺だけのものだ
「野分、」
俺の名前を呼ぶ声を抱きしめて
「ヒロさん」
俺の声をしみこませるように囁いた
#1日1のわヒロ

何の日 5月6日 ２０１７

#何の日 ゴムの日
荒くなる息を飲みこんで封を切ると、ヒロさんと目が合った
「お前ってさ」
「なんですか」
「…なんでもねぇ」
焦っていることに気づかれてしまっただろうか
こっそり練習したはずなのに震える手を励まし息を整えていく
薄い膜越しの熱をゆっくりと繋げた
#1日1のわヒロ

何の日 5月5日 2017

#何の日 こどもの日
「野分ー、あと何個だ？」
「もう全員かぶってます」
「じゃあ、これはお前の分」
野分の頭にも新聞紙で作った兜をのせる
「ありがとうございます」
お揃いの兜をかぶった子どもたちに囲まれて笑う姿を眺める
仲良く泳ぐ鯉のぼりも五月晴れの空で笑った
#1日1のわヒロ

何の日 5月4日 2017

#何の日 ラムネの日
木漏れ日の下で瓶をのぞきこむ
「このビー玉が邪魔だよな」
「そうかな」
「俺は一気に飲みたい」
「もったいないよ」
「そーか？」
「弘樹もゆっくり飲んでみなよ」
二人きりで過ごす時間のように
しゅわしゅわと喉をくすぐる甘さが通り抜けていった
#1日1のわヒロ

何の日 5月3日 2017

#何の日 ゴミの日
コレだって、ある意味ヒロさんの分身なのに
「野分ー、今日ゴミの日だよな？」
「あ、俺が捨てに行きます」
寝室のゴミ箱を空にする
「もったいないなぁ」
ポツリと呟いた言葉も一緒に袋に詰めて縛る
「お前、何してんだ？」
「お別れを」
「ゴミと？」
#1日1のわヒロ

何の日 5月2日 ２０１７

#何の日 緑茶の日
ページをめくる音の合間に話しかける
「すごく体にいいんですよ」
「へぇ」
「美容にも効果があるそうです」
「ふうん」
「ヒロさん」
「ん？」
「あのお茶」
「ああ。お前が淹れたお茶はいつも美味いな」
「え？」
「ん？」
茶柱がひょこんと立った
#1日1のわヒロ

何の日 5月1日 2017

#何の日 メーデー
「大丈夫か？」
「連休中はどうしても忙しくて」
こいつのカレンダーだけ休日がないかのようだ
「早く寝ろよ」
「すみません」
「謝る必要はねぇだろ」
「でも…」
「おら、一緒に寝てやるから休め」
「頑張ります」
「時間外労働は禁止だ」
「えー」
#1日1のわヒロ

何の日 4月30日 2017

#何の日 図書館記念日
突然の雨に走り出した
「ただいまです」
「びしょ濡れじゃねぇかよ」
タオルを渡してくれた手を握りしめてキスをする
「な、」
「好きです」
「アホか！」
真っ赤な顔を見つめてもう1度唇を重ねる
叫ぶように好きと言ってくれた日を思い出しながら
#1日1のわヒロ