何の日 8月7日 2016

鼻の日
「ヒロさん」
「ん？」
振り向いた鼻先をぺろりと舐められる
「なっ、何して」
「何って、キスですけど」
「アホか！」
額をピシリと指で打つ
「てめぇはアレキサンダーかよ」
「ヒロさん」
「ん？」
「それは誰なんですか？」
大型犬が唸り声を出した
＃1日1のわヒロ

何の日 8月5日 2016

ハンコの日
「ヒロさんの、すごい立派ですね」
「そうか？普通だと思うけど」
俺の持ってるのとは全然違う
赤く輝くその名前は、ヒロさんとヒロさんの家のようだ
「バカなこと考えてんじゃねーだろーな？」
覗きこんだ顔を抱えてまた誓う
早くあなたの隣に並びたい
＃1日1のわヒロ

何の日 8月4日 2016

ビヤホールの日
「こーゆー日はビールに限るな」
「先輩、明日早番ですよね？」
「俺はまだ帰らねーぞ」
「でも」
「せっかく楽しく飲んでるんだし」
「わかりました。俺はもう帰ります」
「おう、帰れ帰れ研修医！ねえ、上條さん」
「ヒロさんも帰りますから！」
＃1日1のわヒロ

何の日 8月3日 2016

ハチミツの日
「大丈夫ですか？」
腫れぼったくなった唇をなぞられる
「誰のせいだよ…」
掠れた声でそう言うと、とろりと甘い味が伝ってきた
「唇の荒れに効くそうです」
「へぇ」
ペロリと舐めた舌先を絡めとられて吸い上げられる
やけに甘ったるい朝が始まった
＃1日1のわヒロ

何の日 8月2日 2016

パンツの日
「野分」
「なんですか？」
「コレはなんだ？」
「わぁ」
「わぁ、じゃねぇ。なんだよこの色」
「似合います」
「どう見ても布が小さすぎるし」
「ピッタリですね」
「てめぇは何をさせるつもりだよ」
「大丈夫です。ヒロさんは履いてくれるだけで」
#1日1のわヒロ

何の日 8月1日 2016

＃何の日 花火の日
「競争しようぜ」
「競争ですか？」
「おう。長く点いてたほうが勝ちだ」
小さな花を咲かせる線香花火を息を詰めてみつめる
「ヒロさん」
「ん？」
鼻先が触れる近さで目が合う
「あっ…」
「俺の勝ちです」
ぽとりと落ちた紅い玉のような唇を吸った
#1日1のわヒロ

何の日 7月31日 2016

蓄音機の日
ベッドに寝転んで目を閉じる
『アホか』
『クソガキ』
怒ったような声も
『野分』
『やめろ』
少し甘い声も
どんな声だって耳の奥から蘇ってくる
「ヒロさん」
聞こえてくる英語の洪水から逃れるように
今夜も擦り切れるほどにその声をかみしめる
#1日1のわヒロ

何の日 7月29日 2016

福神漬けの日
「なんで福神漬けって言うんですかね？」
「知らねえのか？」
「教えて下さい」
丁寧に説明を始める姿に出会った頃を思い出す
「やっぱりヒロさんはすごい人です」
「なんだそれ…」
赤くなった顔を眺めながら食べるカレーはいつもより少し甘くなる
#1日1のわヒロ

何の日 7月28日 2016

菜っ葉の日
『ヒロさんへ』
冷蔵庫の中に並ぶ器
『暑くてもちゃんと食べて下さいね』
貼られたメモも冷えている
「はいはい」
買ってきたビールを並べて手を合わせる
「いただきます」
返事のない部屋で過ごす夜はやけに冷えて
「…寒い」
昼の暑さが恋しくなる
#1日1のわヒロ

何の日 7月27日 2016

スイカの日
「あ」
冷蔵庫を開けたヒロさんの顔が輝いた
「まだ冷えてないですよ」
「そっか」
名残惜しそうにドアを閉める
「風呂上がりに食おうぜ」
「いいですね」
「楽しみだな」
子どものような笑顔に胸が鳴る
風呂上がりに食べたいのはもうスイカじゃない
#1日1のわヒロ