何の日 7月16日 2016

虹の日
眩しい陽射しに目を開ける
見慣れない天井を見上げる
昨日の土砂降りがウソみたいだ
隣で眠る人の腫れた目元に口づけてみる
夢じゃない
叫ぶように好きだと言われたことも
窓から見える虹も
「野分？」
掠れた声ごと抱きしめる
消えてしまわないように
#1日1のわヒロ

何の日 7月15日 2016

ホッピーの日
「にいちゃんも一緒に飲んでかねーか？」
「すみません。俺まだ未成年なんで」
「こいつは勉強もしてんだから、邪魔すんなよ」
「そうか、頑張れよ少年！」
「はい」
頭を下げて走り出す
どんなに疲れていても大丈夫
会えばきっと元気になれるから
#1日1のわヒロ

何の日 7月14日2016

内視鏡の日
「はぁ」
「なんでお前がため息ついてんだよ」
「だってヒロさんの中に俺以外の人が入れるのかと思うと」
「検査だっつーの。医者のくせにおかしな言い方すんじゃねぇ」
「とりあえず今日は俺が診ます」
「は？」
「パジャマを脱いで横になって下さい」
#1日1のわヒロ

何の日 7月13日 2016

オカルト記念日
死んだように眠っている顔
「お疲れ」
そっと唇を重ねた瞬間、ぱちりと真っ黒な瞳が俺を映した
「ヒロさん！」
「えっ、なんで」
「だってヒロさんにそんなことされたら俺」
「ウソだろ、おい、待てって、野分」
不死身な恋人との真夏の夜が始まる
#1日1のわヒロ

何の日 7月12日 2016

人間ドックの日
瞳の色を覗きこみ
頬を撫でる
胸の鼓動を聞きながら
肌の張りを確かめる
「いいかげんにしろっ」
「ちゃんと見せてください」
「てめぇ、なんなんだよ」
「医者です」
「どんな医者だよ」
「ヒロさん専用です。なんなら白衣も」
「やめろバカ」
#1日1のわヒロ

何の日 7月11日 2016

アルカリイオン水の日
「気合いで治せ！」
高そうな水のボトルと薬の山を積まれて途方にくれる
本当はもっと効くものがあるんです、とは言えずに眠ったのに
気がつけば横にいる
この人の優しさもかわいらしさも独り占めにしたいと抱きしめる
この病は治りはしない
#1日1のわヒロ

何の日 7月10日 2016

潤滑油の日
暑かったから
久しぶりに会えたから
ヒロさんがエプロンをしてたから
理由なんてわからない
シンクに身体を押しつける
シャツのボタンに手をかける
今の俺に必要なのはたった１つ
オリーブオイルの瓶を掴む
洗ったトマトがころりと転がっていった
#1日1のわヒロ

何の日 7月9日 2016

ジェットコースターの日
「ヒロさん大丈夫ですか？」
「こ、こんなの平気に決まってる」
「そうですか」
「お前はどうなんだよ」
「俺、初めてなんです。だから」
震えている手を握りしめる
「いいですか？」
「しかたねぇな」
夏の思い出がゆっくりと走り出した
#1日1のわヒロ

何の日 7月8日2016

ナンパの日
「そこのカワイコちゃ〜ん」
「…」
「無視しないで下さいよ上條さん」
「…ヒマなんですか？」
「全然。むしろ忙しくて死にそうです」
「そうは見えませんけど」
「あ、死にそうなのはあっちの研修医なんで」
「えっ？」
「お持ち帰りよろしくです」
#1日1のわヒロ

何の日 7月7日2016

七夕
「見えるか？」
「わからないですね」
ベランダに並んで夜空を見上げる
「珍しく晴れたのにな」
「しかたないですよ」
きっと今の俺の目にはどんな光る星も見えはしない
「天の川見たかったな」
「願いはちゃんと叶いました」
何よりも眩しい顔を抱き寄せた
#1日1のわヒロ