何の日 6月15日 2016

生姜の日
「帰るのか？」
「はい」
「メール来てたもんな」
「なっ」
「夕飯なんだって？」
「…生姜焼きです」
「それならしょうがない」
「教授」
「ん？」
「オヤジギャグは嫌われますよ」
「おっ、若い彼氏がいるやつは言うことが違うな」
「あんたもな」
#1日1のわヒロ

何の日 6月14日 2016

手羽先記念日
「美味そうだなー」
いつも美味しそうです
「何本でもいけそうだぞ」
ぺろっと舐めたその指を
「ビールに合うよな」
少し赤くなった頬を
「お前も食えよ」
てらりと光る唇を
「はい」
見つめながら手を伸ばす
今すぐに
骨まで全部しゃぶりたい
#1日1のわヒロ

何の日 6月13日 2016

鉄人の日
「頑張ればいいってもんじゃねぇ」
「そうですか？」
「ちゃんと休むことも大切だ」
「わかりました」
「よし」
「会えなかった日の分をちゃんと補給しますね」
「俺の話聞いてたか？」
「大丈夫です。俺、2週間分頑張りますから！」
「やめろって」
#1日1のわヒロ

何の日 6月12日 2016

恋人の日
油断すると盗られてしまう気がして
「好きです」
ひたすらに想いを伝えれば
「アホか！」
手や足や本が飛んでくる
「すみません」
謝ると困ったような顔をして見つめてくる
誰より大切なこの人は
「かわいいです」
いつも俺の予想を飛び超えてくる
#1日1のわヒロ

何の日 6月11日 2016

傘の日
「野分」
「はい」
「わかってるとは思うが、これは緊急措置だ」
「はい」
「俺は何も好きでこんなことをしているわけじゃないからな」
「はい」
雨垂れの音が二人でさしている一つだけの傘を鳴らす
肩が触れるほど寄り添って歩く道はきらきらと輝いていた
#1日1のわヒロ

何の日 6月10日 2016

時の記念日
いつもと同じ
飯食って風呂に入って寝る
それだけなのに
どうして
こんなにも早く流れていってしまうんだろう
重なり合う心臓の音に追われるように、荒い息で手を伸ばす
あと少し、もう少し
残り僅かな夜にしがみつく
日が昇るまでの二人きりの時間
#1日1のわヒロ

何の日 6月9日 2016

ポルノの日
ヒロさん俺ね
本当は
サプライズもムードも
強いアルコールも怪しい薬も
変な道具も裸エプロンも
なんにもなくていいんです
その柔らかな髪の毛が潤む瞳が
甘い吐息が白い手足が
そこにあるだけで
「野分…」
名前を呼ばれただけで、ほらこんなにも
#1日1のわヒロ

何の日 6月8日 2016

世界海洋デー
「豪華客船で行く世界一周の旅…？」
「ああ、それ秋彦が」
「ヒロさん、行きたいんですか？」
「世界一周に？」
「はい」
「俺たちにはそんな暇ねーだろ」
俺たち、と当たり前のように言う背中に抱きついた
「苦しいって…」
「俺も溺れそうです」
#1日1のわヒロ

何の日 6月7日2016

母親大会記念日
この子が連れてくる子はいつも
「はじめまして」
とてもいい子で
「いらっしゃい。弘樹がお世話になってます」
「いえ、こちらこそ」
ああ、この子の背中にも羽があるのね
「ヒロちゃん、後で写真撮ってもいい？」
「ババア、ちゃん付けんな…」
#1日1のわヒロ

何の日 6月6日 2016

楽器の日
「随分弾いてねぇから」
ゆっくりと弾き始めた曲は美しく、そしてどこか悲しかった
流れるような指の動き
何かを思い出すような表情
時を超えて溢れ出す音色
思い出は手に入らない
「指が回らねぇ」
立ち上がる背中を抱きしめて、この曲に今の刻を重ねた
#1日1のわヒロ