何の日 4月28日 2016

ドイツワインの日
「飲み過ぎですよ」
「大丈夫だって」
甘い香りの吐息がかかる
「うまいなー」
ワイングラスを傾けてふにゃりと笑う顔は聖母のようで
「のーわーきー」
くたりと凭れかかってくる姿はネコみたいで
「1杯だけですよ」
甘すぎる夜も悪くない
#1日1のわヒロ

何の日 4月27日 2016

ロープデー
甘い言葉や優しい笑顔に油断していた
「ダメですか」
しょぼくれた犬っころみたいな顔をしてるけど
「イヤなら無理にとは言いません」
いつのまにかすっかりコイツに堕とされて
「好きにしろ…」
がんじがらめに捕らえられている
逃れられないほどに
#1日1のわヒロ

何の日 4月26日 2016

よい風呂の日
「どれにしますか？」
「じゃあ、これ」
持っていた入浴剤へ伸びて来た手を握りしめる
「クサマの湯ですね」
「はっ？！」
「本日はお客様の貸し切りです」
「離せって」
「背中を流すサービスもついてます」
「頼んでねぇ」
「楽しんで下さいね」
#1日1のわヒロ

何の日 4月25日 2016

DNAの日
何度交わったとしても
残ることはない
「もったいねぇな…」
デカイ身体も整った顔も、少しばかりアホだけど賢い頭も
指でなぞってため息を吐く
それでも
他の誰かに渡すことなんてできはしなくて
伏せた睫毛を見つめながら、螺旋の様に足を絡めた
#1日1のわヒロ

何の日 4月24日 2016

植物学の日
「うるせぇ」
どんなものさえ拒むような硬い殻にゆっくりと手をかける
「ヤダって」
とろりと熟した甘い香りを嗅ぐ
「見んな…」
細かな変化に目を凝らす
「しつこいって」
荒い息とともに赤く染まっていく様を眺めながら、新たな発見に胸を躍らせた
#1日1のわヒロ

何の日 4月23日 2016

子ども読書の日
草むらに寝そべってめくるたびに広がっていく美しい世界
きっとみんなに見つかってしまう
最後のページを読み終えて閉じたノートを思わず抱きしめた
「続きは？」
二人だけの物語を欲しがっていることに気づいてくれと願いながら幼馴染に手を出した
#1日1のわヒロ

何の日 4月22日 2016

よい夫婦の日
「よくもつよなー」
「そう…ですね」
「アノ人相当我慢してんじゃねーの？」
「でも、会えた時はちゃんと」
「ちゃんと？」
「全力で好きだって伝えます」
「全力？」
「はい！時間の許す限り」
「よくもつなアノ人…」
「ヒロさんは凄い人です」
#1日1のわヒロ

何の日 4月21日 2016

民放の日
「大丈夫か？」
「あ、はい…」
ぼんやりと見ていたテレビは終わりかけている
「寝たほうがいいぞ」
「ありがとうございます」
その膝に頭をのせて目を閉じる
「おい…どこで」
「少しだけ」
「CMの間だけだぞ…」
髪を撫でる感触に疲れが溶け出した
#1日1のわヒロ

何の日 4月20日 2016

女子大の日
「頼むよ草間」
「行かないよ」
「今日の相手はあの女子大だ」
「バイトがあるし」
「かわいい子がお前を待っているぞ」
俺のかわいい人はどんどん先へと進んでしまうから
「悪いけど、そんな暇ないんだ」
今日もまた、縮まらない4年の差を追いかける
#1日1のわヒロ

何の日 4月19日 2016

飼育の日
綺麗な家を建てて
美味しい食事を用意して
好きな本を積み上げて
いつもあたためてあげたなら
どこにも行かずにいてくれるんだろうか
湧き出る仄暗い欲望は水槽の中へとじこめる
「いってらっしゃい」
挨拶とともに口づけて小さな鎖だけをそっとつけた
#1日1のわヒロ