何の日 12月2日 2016

カレンダーの日
「今度は何がいいですか？」
「たまにはお前の好きなのでいいぞ」
「じゃあヒロさんのカレンダーが欲しいです」
「アホか！」
「一緒に買いに行きますか」
「そうだな」
冬晴れの光に満ちたリビング
最後の1枚になったカレンダーがひらりと揺れた
#1日1のわヒロ

何の日 12月1日 2016

映画の日
「楽しみだな」
「そうですね」
暗闇に包まれた館内でスクリーンを見る横顔をみつめる
「野分…」
「はい」
「こっち見んな」
「すみません」
隣に置かれた手にそうっと自分の手を重ね合わせる
流れ出す音楽に合わせるかのように俺の鼓動も踊り出した
#1日1のわヒロ

何の日 11月30日 2016

オートフォーカスカメラの日
「ヒロさん！」
いつでもどこでも
「おう」
すぐ見つけられる
「お待たせしました」
一瞬赤くなった頬も
「俺も今来たとこ」
そっと隠した文庫本までも
俺の目に写るのはいつだって
「行きましょうか」
誰よりも可愛いこの人だけだ
#1日1のわヒロ

何の日 11月29日 2016

いい肉の日
「焼けてますよ」
「あ、はい」
「俺に見惚れてないで食って下さいね」
「だ、誰が見惚れて」
「こっちも美味いですよ」
「先輩！」
「なんだもう来たのかよ」
「ヒロさん、先輩に何かされませんでしたか？」
「別に」
「お前、来てすぐ焼くなって」
#1日1のわヒロ

何の日 11月28日 2016

太平洋記念日
「野分、やっぱり海は夏だって…」
「すみません。でも冬の海も綺麗ですよ」
「寒くてそれどころじゃねぇ」
「大丈夫ですか？」
「…なにしてんだよ」
「誰も見てませんよ」
繋いだ手をコートのポケットに押しこむ
冬の海も好きになりそうな気がした
#1日1のわヒロ

何の日 11月27日 2016

更生保護記念日
「飲み過ぎですよ」
「うるせぇ、この鍵ドロボー」
「あれはヒロさんが可愛すぎたから」
「俺のせいかよ？」
「すみません」
「ったく、すっかり立派になりやがって」
「ヒロさんのおかげですね」
「アホか」
罪作りな笑顔を隠すように抱きしめた
#1日1のわヒロ

何の日 11月26日 2016

いい風呂の日
「リラックスしてよく眠れるそうですよ」
そう言ってお前が選んだくせに
「この香り…興奮しますね」
「すんなボケ」
「でもヒロさんも」
パシャリと湯が波打つ
上がる湯気の中に吐息が混ざる
乳白色の湯と熱い手に心も身体もゆるりと解けていった
#1日1のわヒロ

何の日 11月25日 2016

OLの日
「先生、またね」
華やかな声が遠ざかっていく
「生徒さんですか？」
「卒業生。すっかり社会人だな」
嬉しそうな顔から目を逸らす
「ヒロさん、人気あるんですね」
「あるわけねーだろ。鬼だぞ鬼」
気づいてないのはその鬼だけですとため息を落とした
#1日1のわヒロ

何の日 11月24日 2016

和食の日
「ヒロさん、ご飯できました」
「…食う」
モソモソと起き上がって手を合わせる姿をみつめる
「野分」
「はい」
「好き」
「えっ」
「このみそ汁好きだ」
「…俺も好きです」
好きなものを全部覚えたら
いつか
俺のことも好きになってくれるだろうか
#1日1のわヒロ

何の日 11月23日 2016

手袋の日
「あれ？新しい手袋ですか？」
「これは」
「似合います」
触れたその手から伝わる硬さに頬が緩んだ
「離せって」
「ありがとうございます」
「なにがだよ」
隠された指輪ごとぎゅっと手を握りしめる
「早く帰りますね」
「ちゃんと仕事しろ…ボケ」
#1日1のわヒロ