何の日 11月12日 2016

皮膚の日
「温度とか」
熱い手のひらが泡をまとって
「洗い方とか」
ゆっくりと撫であげていく
「教えてあげますよ」
湿り気を帯びた声が耳に落とされる
「余計な…お世話…だ」
言葉と裏腹に
与えられる喜びに応えていく
本当は知っていた
肌は
嘘をつけない
#1日1のわヒロ

何の日 11月11日 2016

ポッキープリッツの日
なんでポッキーを選んでしまったんだろう
黒い瞳の放つ熱に溶けてしまいそうだ
必死に目の前のチョコを見つめる
鼻先が触れそうになって思わず目を閉じる
カリッと砕ける音とともに甘ったるい舌が絡む
「俺の勝ちです」
勝てるわけがねぇ…
#1日1のわヒロ

何の日 11月10日 2016

エレベーターの日
「おい…」
「二人っきりですね」
「アホか」
「ダメですか？」
「ダメに決まってんだろ」
開いたドアの向こうへ蹴りとばす
「ったく。そういうのは部屋に入ってからにしろって」
「はい！」
うっかり口にした本音ごと玄関に引きずりこまれた
#1日1のわヒロ

何の日 11月9日 2016

換気の日
「やけに煙たいな…」
「俺のせいじゃねぇ」
「開けるぞ」
窓から冷たい風が入りこむ
「寒ぃって」
「落ち着かないだろ」
漂う煙を追い出して煙草に火をつける
「おい、てめぇが吸ったら同じことだろ」
「弘樹、コーヒーでいいぞ」
「人の話を聞けよ」
#1日1のわヒロ

何の日 11月8日 2016

いい歯の日
「あの人すごいな」
「えっ？」
「コレはかなり痛いだろ」
「あぁ、コレは俺のせいなんで」
肩にくっきりと残る跡
「なんでそんなとこ噛まれるんだ」
「先輩には教えません」
「ったく。充電した分働けよ」
背中を叩かれてロッカールームを飛び出した
#1日1のわヒロ

何の日 11月7日 2016

鍋の日
「美味そう」
ふんわりと上がる湯気を囲む
「熱ッ」
「猫舌なんだからゆっくり食えよ」
たわいもないことで笑って
「しめはどうしますか？」
「そうだなぁ」
そんなことを真剣に悩んで
「やっぱ鍋はいいなー」
「あったまりますね」
2人だからなおさら
#1日1のわヒロ

何の日 11月6日 2016

お見合い記念日
「俺もお見合いしたいです」
「へぇ…」
「あの釣書っていいですよね」
「…」
「ヒロさんの色々なことが教えてもらえる上に、写真までついてくるんですよ」
「ちょっと待て野分、てめぇは誰と見合いするつもりなんだ？」
「もちろんヒロさんです」
#1日1のわヒロ

何の日 11月5日 2016

縁結びの日
神様は見たことないけれど
「いい天気だな」
「そうですね」
秋晴れの空を見上げる横顔をみつめる
「飯、どうする？」
「何が食べたいですか？」
「寒くなってきたから、鍋かな」
「いいですね」
見えない赤い糸を絡めるように冷えた指先を握りしめた
#1日1のわヒロ

何の日 11月4日 2016

ユネスコ憲章記念日
「だからな、上條」
「なんですか、教授…」
「こういう貴重な日本の文化を後世に伝えるのも俺たちの大事な仕事の１つなんだって」
「無理です」
「上條ならできると俺は信じている」
「崩れた巻物の山はお一人で片づけて下さい」
「冷たい〜」
#1日1のわヒロ

何の日 11月3日 2016

アロマの日
「ただいまです」
「おかえ…どうした？」
髪の毛に顔を埋めてきた野分の背中をぽんと叩く
「疲れました」
「だったらとっとと休めよ」
「ヒロさんには元気になる効果があります」
くんくんと鼻を押しつけられながら、俺もそっと野分の匂いを吸いこんだ
#1日1のわヒロ