9/9

「じゃあ、どこが好きか教えて下さい」
「は？」
可愛い、なんて思った俺がバカだった
「お願いします」
「勝手に考えろよ」
「ヒロさんが好きなところが知りたいんです！」
「なんでだよ」
「決まってるじゃないですか。俺の世界の中心はヒロさんだからです」
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/8

「あの、ヒロさん、さっきの…本当ですか」
「なんのことだ…」
「俺の顔が好きだって」
「ンなこと言ってねぇ」
「そうですか」
あからさまにショボンとしやがった野分の額をビシリと指で弾く
「顔だけじゃねぇっての」
珍しく赤くなった顔も悪くないと思った
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/7

突然長い腕に捕らえられる
「お前、いつから起きて」
強く抱きしめられて息がつまる
「嬉しくて…死にそうです」
「なっ、」
恥ずかしさと苦しさに俺の方が息が止まると思ったけれど
「ありがとうございます」
あんまりにも嬉しそうな笑顔にうっかりと見惚れた
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/6

重ねた唇を離して、穏やかな寝顔を眺める
真っ直ぐに伸びた鼻梁、微かに揺れる睫毛
いつも見られてばかりだけど本当は俺だってちゃんと野分の顔を見たい
「顔も好き…なんだよな」
ポツリと呟くと目の前の頬が赤くなる
「えっ？」
俺は真っ黒な瞳にのみこまれた
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/5

そうっと覗きこんだ部屋で耳をすます
規則正しい寝息にゆっくりと忍び寄り、少し伸びすぎた前髪を指で梳く
「ヒロさん」
不意に名前を呼ばれて息が止まった
「好きです」
ふにゃりと笑う顔はどこか幼く見えて
「夢の中でもそれかよ…」
眠るその顔にキスをした
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/4

「よし」
干し終えた洗濯物が陽の光を浴びて揺れる
野分の服の間に挟まると自分の服はやけに小さく見えてむうと口を尖らせた
悪戯な風にはためいた野分のシャツが俺のワイシャツを抱きしめる
「服までナマイキだ」
自分のより長いその袖を解いてビシリと弾いた
#9月は毎日がのわヒロ記念日

９／3

「洗濯日和ですね」
窓を見る目の下にクマが浮かぶ
「俺がやっとくから寝ろ」
「でも」
「ちゃんと休まねぇヤツとは遊ばねぇ」
「わかりました」
笑いながらおやすみのキスを落とされて
「とっとと寝ろ！クソガキ」
火照った顔を見られないように蹴り飛ばした
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/2

「冷蔵庫空っぽでした」
「ンなことねぇし」
「水は入ってましたけど」
「だろ」
「栄養が足りませんよ」
頬をなぞられて身体が震える
「ちゃんと食べて下さいね」
出された美味い飯より何よりも
お前がいたら満たされる
言えはしない言葉と卵焼きを頬張った
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/1

蝉の声が聞こえなくなり
「おはようございます」
「…おはよ」
さらりとした空気が流れこむ
「ヒロさん？」
「なんか…寒ぃ」
「はい」
あたたかな手と唇の心地よさにもう一度目を閉じる
寝苦しかった一人の夜はようやく終わり
待っていた季節がやって来た
#9月は毎日がのわヒロ記念日

診断メーカー様の #同棲してる2人の日常

「風鈴を買ってきたんです」
窓辺に吊るされたガラスの西瓜を2人で見つめる
「涼しくなるかと思って」
「ふーん」
開け放った窓から陽射しだけが入りこむ
「鳴らねぇな」
「鳴るまで待ちますか」
長い腕が巻きつき押し倒される
「…暑いっての」
フローリングの冷たさを奪いながら抱きあった