frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
お返し
ホワイトデーの短いお話です。
また遅刻してしまいました。
2015.3.15
また遅刻してしまいました。
2015.3.15
「俺が買って来てやろうか?」
その声にメモを書く手が止まった。
振り向くと風呂上がりのヒロさんが濡れた頭をタオルで拭きながら立っている。
「え?」
「どうせ俺も買いに行くから。ついでだし」
そう言って腰にタオルだけを巻いた格好で自分の寝室へと入って行った。
返事もできずに書きかけのホワイトデーのリストを見る。
そうか・・・ヒロさんも買うんだ。
そういえばヒロさんはいつもどんなホワイトデーのお菓子を買っているんだろう。
俺たちはお互いに特になにもしないことにしているから気にしたことがなかった。
大学で貰った分かな。
学生からのチョコは受け取らない、と公言しているヒロさんだけど、それでも渡しに来る学生は毎年いる。
パジャマを着たヒロさんが寝室から出てきた。
「お返しって学生から貰ったチョコの分ですか?」
「はぁ?なんで俺があんな賄賂チョコに返さねぇとなんねーんだよ」
学生からのチョコを全て単位目当てだと決めつけているヒロさんはムッとした顔でそんなことを言う。
風呂上がりの少し上気した顔で睨みつけてくるヒロさんは、怖いというより、むしろ可愛らしくて、俺はまたなにやら胸の奥がザワザワとし始める。
そんな顔でチョコを断ってんだとしたら、逆効果にしか思えないんだけど。
「じゃあ、誰に渡すんですか?」
「大学の事務の人だよ。なんかいつもくれるから、俺が宮城教授の分も買いに行くことになってんだよ」
そうか。大学にいるのはなにも宮城教授だけじゃない。他の先生や職員もいる。それはきっと、職場の中の儀礼的なものだとは思うけれど、そこには俺の知らないヒロさんがいる。
大学の人にヒロさんはどんな風に見られているんだろうか。
そして、どんな風に思われているんだろうか。
俺の知らない・・。
「野分」
ヒロさんの声に我にかえる。
「言っておくけど、その人、結婚してるからな」
「え?」
驚いて見上げると眉間に皺を寄せた顔が俺を見下ろしていた。
「お前、またなんかグルグル考えてただろ?」
「あ、いえ、その」
「その人はな、俺よりも教授よりも年上の人で、本当の義理チョコってやつだから」
全くお前はすぐにおかしな勘違いをするとブツブツ呟きながら、ヒロさんが横に座ってきた。
「すみません」
「俺が大学で貰うもんなんて、そんなのばっかりだよ」
「でも、学生からも」
「学生はいいんだって。あんなのは返してたらきりがねぇし」
え?
「お前、忙しいだろ?明日買い物に行くから一緒に買ってきてやるよ」
そう言ってテーブルの上のメモを取ろうとしたヒロさんの手を掴んだ。
「ヒロさん、今年はいったいいくつ学生から貰ったんですか?」
「な、なんだよ、いまさら」
「教えて下さい」
「覚えてねぇ」
「ヒロさん」
「だからっ!数えてねぇんだよ!」
口を曲げたヒロさんが横を向いた。
「どういうことです?」
「めんどうだったから、そのままにしてる」
「そのまま?」
ヒロさんがバレンタインの日に持ち帰ってきた紙袋を思い出した。
「紙袋に入れたままなんですか?」
「悪ぃかよ」
「だって賞味期限とか」
「いいんだよ」
「よくないです」
「どうせ食わねぇんだから」
俺は甘い物はそんなに好きじゃねぇんだと続けるその顔は赤くなっている。
「でも、ヒロさん、俺があげたチョコは食べてましたよね?」
「それは・・」
「それは?」
続きを促しながらもう片方の手を腰に伸ばす。
「お前のは・・義理じゃねぇだろ」
そう言って逃げようとしたヒロさんを抱きしめて、耳元に唇を寄せて囁く。
「俺のだけ食べてくれたんですか?」
「・・知らねぇ」
横を向いてしまった顔をそっと自分の方に向かせると唇を重ねる。
この人はいつだって俺の一番欲しいものをくれる。
「ありがとうございます」
ホワイトデーのお返しはお互いになしにしようと言っていたのに、結局、クッキーよりもキャンディーよりも嬉しいものをくれる。
「うるせぇ」
そう言う唇は本当はこんなにも甘いことを知っているのは自分だけだ。
その声にメモを書く手が止まった。
振り向くと風呂上がりのヒロさんが濡れた頭をタオルで拭きながら立っている。
「え?」
「どうせ俺も買いに行くから。ついでだし」
そう言って腰にタオルだけを巻いた格好で自分の寝室へと入って行った。
返事もできずに書きかけのホワイトデーのリストを見る。
そうか・・・ヒロさんも買うんだ。
そういえばヒロさんはいつもどんなホワイトデーのお菓子を買っているんだろう。
俺たちはお互いに特になにもしないことにしているから気にしたことがなかった。
大学で貰った分かな。
学生からのチョコは受け取らない、と公言しているヒロさんだけど、それでも渡しに来る学生は毎年いる。
パジャマを着たヒロさんが寝室から出てきた。
「お返しって学生から貰ったチョコの分ですか?」
「はぁ?なんで俺があんな賄賂チョコに返さねぇとなんねーんだよ」
学生からのチョコを全て単位目当てだと決めつけているヒロさんはムッとした顔でそんなことを言う。
風呂上がりの少し上気した顔で睨みつけてくるヒロさんは、怖いというより、むしろ可愛らしくて、俺はまたなにやら胸の奥がザワザワとし始める。
そんな顔でチョコを断ってんだとしたら、逆効果にしか思えないんだけど。
「じゃあ、誰に渡すんですか?」
「大学の事務の人だよ。なんかいつもくれるから、俺が宮城教授の分も買いに行くことになってんだよ」
そうか。大学にいるのはなにも宮城教授だけじゃない。他の先生や職員もいる。それはきっと、職場の中の儀礼的なものだとは思うけれど、そこには俺の知らないヒロさんがいる。
大学の人にヒロさんはどんな風に見られているんだろうか。
そして、どんな風に思われているんだろうか。
俺の知らない・・。
「野分」
ヒロさんの声に我にかえる。
「言っておくけど、その人、結婚してるからな」
「え?」
驚いて見上げると眉間に皺を寄せた顔が俺を見下ろしていた。
「お前、またなんかグルグル考えてただろ?」
「あ、いえ、その」
「その人はな、俺よりも教授よりも年上の人で、本当の義理チョコってやつだから」
全くお前はすぐにおかしな勘違いをするとブツブツ呟きながら、ヒロさんが横に座ってきた。
「すみません」
「俺が大学で貰うもんなんて、そんなのばっかりだよ」
「でも、学生からも」
「学生はいいんだって。あんなのは返してたらきりがねぇし」
え?
「お前、忙しいだろ?明日買い物に行くから一緒に買ってきてやるよ」
そう言ってテーブルの上のメモを取ろうとしたヒロさんの手を掴んだ。
「ヒロさん、今年はいったいいくつ学生から貰ったんですか?」
「な、なんだよ、いまさら」
「教えて下さい」
「覚えてねぇ」
「ヒロさん」
「だからっ!数えてねぇんだよ!」
口を曲げたヒロさんが横を向いた。
「どういうことです?」
「めんどうだったから、そのままにしてる」
「そのまま?」
ヒロさんがバレンタインの日に持ち帰ってきた紙袋を思い出した。
「紙袋に入れたままなんですか?」
「悪ぃかよ」
「だって賞味期限とか」
「いいんだよ」
「よくないです」
「どうせ食わねぇんだから」
俺は甘い物はそんなに好きじゃねぇんだと続けるその顔は赤くなっている。
「でも、ヒロさん、俺があげたチョコは食べてましたよね?」
「それは・・」
「それは?」
続きを促しながらもう片方の手を腰に伸ばす。
「お前のは・・義理じゃねぇだろ」
そう言って逃げようとしたヒロさんを抱きしめて、耳元に唇を寄せて囁く。
「俺のだけ食べてくれたんですか?」
「・・知らねぇ」
横を向いてしまった顔をそっと自分の方に向かせると唇を重ねる。
この人はいつだって俺の一番欲しいものをくれる。
「ありがとうございます」
ホワイトデーのお返しはお互いになしにしようと言っていたのに、結局、クッキーよりもキャンディーよりも嬉しいものをくれる。
「うるせぇ」
そう言う唇は本当はこんなにも甘いことを知っているのは自分だけだ。
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プロフィール
HN:
さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中
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