frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
キス
「セカロマ深夜の真剣文字書き60分1本勝負」に参加してみました。
無理だった・・・。見直せなかったし、しょんぼり
お題は「キス」でした
「ヒロさんは隙がありすぎます」
野分は眉を顰めた。
真っ黒な瞳がひたりと弘樹の顔を見据えている。
「隙があるってなんだよ・・・」
反論しようとした言葉が小さくなっていくのは、弘樹にも少なからず思い当たる節があるからで。
弘樹は野分の視線から逃れるように目を逸らした。
ついさっきまでは二人で久しぶりに外で飲んで、いい気持ちになって、本当に楽しい週末を過ごしていた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だって」
そう言って笑った弘樹は野分に会計を任せて先に店を出ていた。
アルコールのせいでいつもより熱を持った頬にひんやりとした風が心地良い。
「涼し…」
ぼうっと夜空を見上げていると、突然見ず知らずの男が抱きついてきた。
驚きすぎて固まっているうちに、男の顔が至近距離まで迫っていた。
「つぅかまえたぁぁ」
訳のわからない奇声を発しながら寄せられる真っ赤な顔は、相当飲んだ後らしく、酒くさい息が鼻をついた。
顔を顰めた弘樹が身を捩った瞬間、その男は道路にしりもちをついていた。
「何してるんですか?」
冷えた野分の声が聞こえる。
野分に乱暴に引っ張られて転んだ男は、慌てて立ち上がると走り去っていったが、弘樹はさっきの氷のような声が自分にも向けられていることを感じていた。
「行きますよ」
野分に腕をとられたまま歩き出す。
マンションに着いて部屋に入るまで、二人は終始無言のままだった。
玄関のドアを開けて入った途端、野分は正面から弘樹を抱きすくめた。
そしてため息混じりに訴えてきた。
「ヒロさんは隙がありすぎます」
目を逸らしながらも、黙っているような弘樹ではなかった
「なんだよそれ」
「俺がいなかったらあの男にキスされてましたよ」
「ンなわけねーし」
「まさか、今までもあんな目に遭ったことあるんですか?」
「うるせぇんだよ!たかがキスされそうになっただけで、いちいち、」
それは売り言葉に買い言葉のような、ほんのはずみで口をついた言葉だった。
「・・・そうですか。すみませんでした」
野分はそう言うと抱きしめていた手を離した。
野分を酷く傷つけた
自分自身の舌を噛み切りたいような思いが、弘樹の舌を強張らせる。
言い訳も、謝罪の言葉も出せずに音もなく唇が上下する。
野分は寂しそうな顔をすると弘樹から離れていった
「野分っ!」
ようやく出た声と同時に弘樹は野分の腕を掴んだ。
そうして、力一杯その腕を自分の方へと引っ張ると、ぎゅっと目を瞑りながら野分の唇に自分の唇をぶつけるように重ねた。
「ヒロ・・さん?」
肩で息をする弘樹を驚いた顔の野分が見下ろす。
「俺が自分からこんなことすんのはお前だけだからなっ!」
そう言うとみるみるうちに首すじから顔に向かって、朱に染まっていく。
「はい」
嬉しそうに弘樹を抱きしめた野分の温かさに、弘樹はホッとして身体の力が抜けていくような気がしていた。
「自分からってことは、俺以外の誰かからされたことはあるんですね・・・」
耳元にそう囁かれて、また固まった弘樹の身体がふわりと浮いた。
「え?な、何?」
「とりあえず、その辺の話をゆっくりと教えてください」
そう言って笑う野分からはなにやら黒いオーラが漂っているのが見えた気がする弘樹だった。
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