frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
上條助教授の素敵な1日
ある日のヒロさん
目覚まし時計が鳴り響く。
膨らんだ布団から白い腕がにゅっと飛び出すと、乱暴にベッドサイドからその時計を叩き落とした。
ガンッという鈍い音とともにベルの音が止まり、寝室は再び静まり返る。
朝の日差しがカーテンの隙間を通して入りこみ、ほのかに照らし出したその部屋の中には、本の山がいくつもいくつも並んでいる。
呻き声とともにゆっくりと布団が動き、ズルズルという音が聞こえてくるかのような緩慢な動きで人らしきものが少しずつ表れてきた。
薄い肩からずるりと掛け布団が落ちると、パジャマを着たほっそりとした上半身が見えた。
ぺたりと床に足が降りる。
先ほど落とした目覚まし時計を拾って元の場所に戻してから、立ち上がると、寝乱れた茶色い髪の毛を揺らしながらドアへと歩き出した。
この部屋の主である上條弘樹は、寝起きが悪い。
それでもなんとか洗面所に辿り着いて、顔を洗うとようやく意識がはっきりとし始めてきた。弘樹は、鏡の中の自分の顔を眺めもせずにキッチンへと向かう。
ぼーっとしながらの機械的な動きでコーヒーメーカーをセットすると、カレンダーを見た。男にしては長めの睫毛を伏せると小さなため息をついた。
そうしてまた寝室へと戻っていった。
コポコポという音ともに、リビングにコーヒーの香りが流れ出す。
香りにつられたように、パジャマを手に、ワイシャツにネクタイを締めた弘樹が寝室から出てきた。
洗濯カゴにパジャマを放り投げると、可愛らしいデザインのマグカップにコーヒーを注いでテーブルへと歩き出す。
テーブルについて携帯電話を確認すると、きれいな形をした眉がぎゅうっと顰められる。そのまま一気にコーヒーを飲み切って壁の時計を見ると慌てたように洗面所へとかけこんでいった。
◇◇◇
いつもと同じ時間に駅に着いたことにホッと安堵した弘樹は、いつもと同じ場所で電車を待った。
毎朝のことに混んでいるという感覚もあまり感じなくなってきているが、今朝も所謂出勤ラッシュの電車に乗り込む。あっちからもこっちからも押され、かといって押し返すわけにもいかず、流されるように人の波にもまれている。周りの乗客の色々な物が身体に当たるのを感じながらも、それが一体誰の何なのかも分からずに、ひたすら耐えて駅に着くまでの時間をじっとやり過ごしていた。
色白でぱっと見た感じの線の細さとは裏腹に、男前な性格の持ち主のため、電車が揺れる度に自分の首すじに隣のサラリーマン風の男の鼻息が当たろうとも、表情を変えることなく立っている。
男がこんなことでいちいち騒いでいられるかってんだ
なんだか、首すじに当たる鼻息がどんどん荒くなっていくような気がして、ちらりと隣に視線を投げはしたが、結局ひたすらじっと耐えた。
大きく揺れて電車が止まる。
自分の降りる駅について、電車から吐き出されるように降りた弘樹は、ようやく吸えた新鮮な空気にホッとしながら自分の職場であるM大学へと早足で歩き出した。
いつも学生より早目に着くようにしているため、大学最寄りの駅にしては、まだ学生の姿はほとんど見えない。
「おはようございます」
声をかけられて、振り返るとそこには弘樹のゼミの学生が立っていた。
「おはよう」
挨拶を交わすと同じ方向に行く者同士、並んで歩き始める。
そういえば、よく会うよな
「川本は、いつも早いな」
「あ、はい・・あの、、」
「ん、どうした?」
「俺、先生に話があって今日は来たんです」
「そうなのか?」
いつも熱心に講義を受けている真面目な学生だから、ひょっとしてとは思っていたのだが
これはあれか?
「もしかして、お前、卒論のことで悩んでるのか?」
「え?」
「違うのか?じゃあ、院に行こうと思っているとかか?」
「あの、先生、そうじゃなくて俺は」
いつもより赤くなった顔が弘樹の方を向いた、とその時、肩越しに聞き覚えのある声がした。
「かーみーじょーおー、おーはーよー」
川本と弘樹の間に挟まるようにして、宮城教授がひょっこり顔を出している。
「おはようございます」
川本は驚きながらも挨拶を返す。
弘樹は自分の肩に回されているのに教授の手を乱暴に振り払った。
「おはようございます宮城教授。毎朝毎朝、抱きつくのはやめてもらえませんかね!」
「ええー、上條冷たいー」
そう言って今度は両手で後ろから抱きついてきた。
「俺は今、真面目な話をしているんです。邪魔しないで下さい」
「あ、あの、上條先生、すみません。お話はまた今度でいいです」
「え?おい、川本?」
そう言うと川本は足早に大学の門をくぐり構内へと入って行った。
弘樹は後ろ姿を呆然と見送ると、まだ、後ろにはりついている宮城を睨みつけた。
「教授のせいですよ。何か悩んでいるようだったのに」
「いや、あれは違うんじゃないか、俺は上條のためを思ってだな、、」
「何ワケのわからないことを言ってるんですか」
そう言うと背中の宮城を振り払って歩き出す。
宮城はその横を歩きながら、上條の顔を覗きこんだ。
「上條、お前さ、本当に気づいてないのか?」
「だから、さっきからなんのことを言ってるんですか?」
「・・・いや、いい」
「早くしないと講義の準備が間に合わなくなりますよ」
「はいはい」
脇目も振らずに研究室へと向かう弘樹を見ながら宮城はポツリと呟いた
「草間くんも、大変だ」
その声は弘樹の耳には届かずに、青く晴れた朝の空へと吸いこまれていった。
◇◇◇
「ただいま」
マンションのドアを開けると、リビングからパタパタと足音が聞こえてきた。
「おかえりなさい」
嬉しそうに笑う野分の顔に、弘樹は一瞬見惚れて、それから慌てて俯く。
「なんだ、帰ってたのか」
「はい。夕飯できてますよ」
そう言われて、美味しそうな匂いに気づいた弘樹は、急に空腹を覚えた。
一人だと腹も空かないってのに
朝からろくなものを食べてなかったことを思い出して、現金な自分に苦笑いしつつ靴を脱ぐ。そのままリビングへと向かおうとした弘樹の腕に野分の腕がかけられた。
「ヒロさん」
「なに?」
そっと抱きしめられて、野分の唇が弘樹の唇にゆっくりと触れた。
あったかい
伝わる温度に身体中が柔らかくなってしまうような気がする。
そっと離れていく唇を目で追うと、真っ黒な瞳が見つめていた。
「おかえりなさい」
「・・・ただいま」
あんまり見つめられて、恥ずかしくなった弘樹はグイッと野分を押しのけるようにして廊下を進んだ。
後ろからついてきた野分が問いかける。
「ヒロさん、今日はどうでしたか?」
「どうって、別にいつもと同じだ。何もねーよ」
「そうですか」
「そうですよ」
昨日と違うことといったら、家にお前がいることじゃねーかよ
野分がいて、一緒にいることができる。
それだけで、今日という日は特別な日になる。
「早く飯にしようぜ」
弘樹はそう言うとリビングへと入っていった。
なによりも大切な時間を過ごすために
膨らんだ布団から白い腕がにゅっと飛び出すと、乱暴にベッドサイドからその時計を叩き落とした。
ガンッという鈍い音とともにベルの音が止まり、寝室は再び静まり返る。
朝の日差しがカーテンの隙間を通して入りこみ、ほのかに照らし出したその部屋の中には、本の山がいくつもいくつも並んでいる。
呻き声とともにゆっくりと布団が動き、ズルズルという音が聞こえてくるかのような緩慢な動きで人らしきものが少しずつ表れてきた。
薄い肩からずるりと掛け布団が落ちると、パジャマを着たほっそりとした上半身が見えた。
ぺたりと床に足が降りる。
先ほど落とした目覚まし時計を拾って元の場所に戻してから、立ち上がると、寝乱れた茶色い髪の毛を揺らしながらドアへと歩き出した。
この部屋の主である上條弘樹は、寝起きが悪い。
それでもなんとか洗面所に辿り着いて、顔を洗うとようやく意識がはっきりとし始めてきた。弘樹は、鏡の中の自分の顔を眺めもせずにキッチンへと向かう。
ぼーっとしながらの機械的な動きでコーヒーメーカーをセットすると、カレンダーを見た。男にしては長めの睫毛を伏せると小さなため息をついた。
そうしてまた寝室へと戻っていった。
コポコポという音ともに、リビングにコーヒーの香りが流れ出す。
香りにつられたように、パジャマを手に、ワイシャツにネクタイを締めた弘樹が寝室から出てきた。
洗濯カゴにパジャマを放り投げると、可愛らしいデザインのマグカップにコーヒーを注いでテーブルへと歩き出す。
テーブルについて携帯電話を確認すると、きれいな形をした眉がぎゅうっと顰められる。そのまま一気にコーヒーを飲み切って壁の時計を見ると慌てたように洗面所へとかけこんでいった。
◇◇◇
いつもと同じ時間に駅に着いたことにホッと安堵した弘樹は、いつもと同じ場所で電車を待った。
毎朝のことに混んでいるという感覚もあまり感じなくなってきているが、今朝も所謂出勤ラッシュの電車に乗り込む。あっちからもこっちからも押され、かといって押し返すわけにもいかず、流されるように人の波にもまれている。周りの乗客の色々な物が身体に当たるのを感じながらも、それが一体誰の何なのかも分からずに、ひたすら耐えて駅に着くまでの時間をじっとやり過ごしていた。
色白でぱっと見た感じの線の細さとは裏腹に、男前な性格の持ち主のため、電車が揺れる度に自分の首すじに隣のサラリーマン風の男の鼻息が当たろうとも、表情を変えることなく立っている。
男がこんなことでいちいち騒いでいられるかってんだ
なんだか、首すじに当たる鼻息がどんどん荒くなっていくような気がして、ちらりと隣に視線を投げはしたが、結局ひたすらじっと耐えた。
大きく揺れて電車が止まる。
自分の降りる駅について、電車から吐き出されるように降りた弘樹は、ようやく吸えた新鮮な空気にホッとしながら自分の職場であるM大学へと早足で歩き出した。
いつも学生より早目に着くようにしているため、大学最寄りの駅にしては、まだ学生の姿はほとんど見えない。
「おはようございます」
声をかけられて、振り返るとそこには弘樹のゼミの学生が立っていた。
「おはよう」
挨拶を交わすと同じ方向に行く者同士、並んで歩き始める。
そういえば、よく会うよな
「川本は、いつも早いな」
「あ、はい・・あの、、」
「ん、どうした?」
「俺、先生に話があって今日は来たんです」
「そうなのか?」
いつも熱心に講義を受けている真面目な学生だから、ひょっとしてとは思っていたのだが
これはあれか?
「もしかして、お前、卒論のことで悩んでるのか?」
「え?」
「違うのか?じゃあ、院に行こうと思っているとかか?」
「あの、先生、そうじゃなくて俺は」
いつもより赤くなった顔が弘樹の方を向いた、とその時、肩越しに聞き覚えのある声がした。
「かーみーじょーおー、おーはーよー」
川本と弘樹の間に挟まるようにして、宮城教授がひょっこり顔を出している。
「おはようございます」
川本は驚きながらも挨拶を返す。
弘樹は自分の肩に回されているのに教授の手を乱暴に振り払った。
「おはようございます宮城教授。毎朝毎朝、抱きつくのはやめてもらえませんかね!」
「ええー、上條冷たいー」
そう言って今度は両手で後ろから抱きついてきた。
「俺は今、真面目な話をしているんです。邪魔しないで下さい」
「あ、あの、上條先生、すみません。お話はまた今度でいいです」
「え?おい、川本?」
そう言うと川本は足早に大学の門をくぐり構内へと入って行った。
弘樹は後ろ姿を呆然と見送ると、まだ、後ろにはりついている宮城を睨みつけた。
「教授のせいですよ。何か悩んでいるようだったのに」
「いや、あれは違うんじゃないか、俺は上條のためを思ってだな、、」
「何ワケのわからないことを言ってるんですか」
そう言うと背中の宮城を振り払って歩き出す。
宮城はその横を歩きながら、上條の顔を覗きこんだ。
「上條、お前さ、本当に気づいてないのか?」
「だから、さっきからなんのことを言ってるんですか?」
「・・・いや、いい」
「早くしないと講義の準備が間に合わなくなりますよ」
「はいはい」
脇目も振らずに研究室へと向かう弘樹を見ながら宮城はポツリと呟いた
「草間くんも、大変だ」
その声は弘樹の耳には届かずに、青く晴れた朝の空へと吸いこまれていった。
◇◇◇
「ただいま」
マンションのドアを開けると、リビングからパタパタと足音が聞こえてきた。
「おかえりなさい」
嬉しそうに笑う野分の顔に、弘樹は一瞬見惚れて、それから慌てて俯く。
「なんだ、帰ってたのか」
「はい。夕飯できてますよ」
そう言われて、美味しそうな匂いに気づいた弘樹は、急に空腹を覚えた。
一人だと腹も空かないってのに
朝からろくなものを食べてなかったことを思い出して、現金な自分に苦笑いしつつ靴を脱ぐ。そのままリビングへと向かおうとした弘樹の腕に野分の腕がかけられた。
「ヒロさん」
「なに?」
そっと抱きしめられて、野分の唇が弘樹の唇にゆっくりと触れた。
あったかい
伝わる温度に身体中が柔らかくなってしまうような気がする。
そっと離れていく唇を目で追うと、真っ黒な瞳が見つめていた。
「おかえりなさい」
「・・・ただいま」
あんまり見つめられて、恥ずかしくなった弘樹はグイッと野分を押しのけるようにして廊下を進んだ。
後ろからついてきた野分が問いかける。
「ヒロさん、今日はどうでしたか?」
「どうって、別にいつもと同じだ。何もねーよ」
「そうですか」
「そうですよ」
昨日と違うことといったら、家にお前がいることじゃねーかよ
野分がいて、一緒にいることができる。
それだけで、今日という日は特別な日になる。
「早く飯にしようぜ」
弘樹はそう言うとリビングへと入っていった。
なによりも大切な時間を過ごすために
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プロフィール
HN:
さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中
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