忍者ブログ

frown

当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

寝ても醒めても  終

秋彦の前で無防備なヒロさんに起きたこととは。


2017.4.23  投稿



「ただいま」
「おかえりなさい」
 玄関で野分に出迎えられる。10日ぶりの笑顔と一緒に食べる夕飯に浮かれそうになり、無理やりひきしめた口元にキスが落ちた。
「・・・腹減った」
「もう出来てますよ」
 美味そうな匂いに満ちているリビングに入ると、なにやら随分と大きな段ボール箱が場所をとっていた。
「なんだこれ?」
「ヒロさん宛てです」
 野分が抱えても床につくくらい長い箱。そんなサイズの物を頼んだ覚えがなく首を傾げた。
「俺?」
 本なら通販サイトから届くこともあるけれど、流石にこんな妙なサイズの書籍を買った覚えはない。
「宇佐見さんからですよ」
「秋彦?」
 慌てて野分からひったくると引きずるように箱を寝室に運びこんだ。まさか、あの例のウハウハでショッキングでピンクな本なんじゃ、と焦ったが箱は大きさの割に軽く、本ではなさそうだとわかりホッと息を吐く。
 ビリビリと包装を解くと、中から出てきたのはビニールに包まれた柔らかく細長い物だった。
 見たこともなければ秋彦に頼んだ覚えもない物に首を捻っていると、後ろから長い腕が伸びてきた。
「ヒロさん、これって」
「野分?!」
 いつの間にか背後にいた野分にひょいと取り上げられて、謎の贈り物から器用にビニール包装が解かれていく。
「ヒロさん、これ抱き枕じゃないですか?」
「抱き枕?」
「はい。寝る時に抱きつく用の枕ですよ」
「へぇ」
 そんなものがあるのかと思いながら見ていると、野分の手にした抱き枕とやらから、はらりと床にカードが落ちた。不思議な贈り物の理由でも書いているかと拾い上げ、見慣れた秋彦の文字に目を走らせた。
『モデル代として謹んで贈呈する。宇佐見秋彦』
 モデル?なんのことだ?
「ヒロさん」
「ん?」
「こんなのいつの間に作ったんですか?!」
 珍しく大きな声を出した野分の手が震えている。包装を解かれてふっくらと元の姿に膨らんだ抱き枕とやらには、等身大の人間が描かれていた。
「へ?」
「とぼけてもダメです。これ、ヒロさんですよね!!」
「いや、違っ、俺はそんな格好しねぇ!」
 枕に描かれているのはワイシャツは脱げかけて、履いているズボンは緩く開いてしまっていて、腰回りとか、丸見えにして寝そべっている若い男。
「どう見てもヒロさんですよ!」
 よく見たら髪型や髪の色はたしかに俺によく似ているかもしれねぇ、けどな。
「俺はこんな顔しねぇし!!」
 抱き枕男は潤んだ瞳で目元を赤らめてこっちをみつめている。
「してました!」
「いつだよ?!」
「この前・・・宇佐見さんの家で酔いつぶれてた時です」
「そんなの」
 記憶が曖昧な日の話を出されて言葉を詰まらせる。まさか俺は酔ってこんな格好を秋彦の前でしていたのか?
 二人の間に張りつめた緊張を破るように携帯電話が鳴った。
 助かったと思いながら手にした電話の画面に光る名前は・・・宇佐見秋彦。なんでこんなタイミングなんだ。絶対にあいつはウチに忍者飛ばしてやがるに違いない。俺は半ばキレながら電話に出た。
「もしもし」
「弘樹、届いたか?」
「届いたか、じゃねぇよ!なんだよあれ」
「弘樹が一人で寝る時に寂しくないように作ってやった。ありがたく思え」
「お前バカか?なんで俺がいい歳して枕抱きしめて寝なきゃなんねーんだよ!」
「お前はいつもウチに来ると鈴木さん抱いて寝てるぞ」
「うっ、そ、それは、」
「ああ、そうか、お前が抱きつくのにお前の抱き枕じゃつまらないな。俺としたことが気が利かなくてすまなかった。そうだ、送った抱き枕は草間くんにでもあげたら喜ぶんじゃないか」
「なっ、何を」
「代わりに弘樹には草間くんの抱き枕を作ってやる。写真さえくれたらすぐに相川に頼んで」
「アホか!!野分の抱き枕なんていらねーんだよ!!とにかく、金輪際変なもの送ってくんじゃねぇ!バカ彦!」
 鼻息荒く電話を切ると、野分がぎゅっと抱きしめてきた。
「俺の抱き枕って何ですか?」
「・・・なんのことだ」
「今の宇佐見さんですよね?」
「そうだけど」
「もしかして、さっきのヒロさん抱き枕は俺へのプレゼントなんでしょうか」
何か違う、ような気がしないでもないけれど。
「・・・お前にやるってさ」
 俺は嘘は嫌いだけれど、野分が喜ぶならこれくらいの嘘は・・・悪くない・・・ことにした。
「ありがとうございます」
 仮にも大学助教授、鬼の上條。三十過ぎて、幼なじみの家のクマのぬいぐるみに抱きついているなんてバレるよりはマシだ。
「これ、病院に持っていけたらいいのに」
 嬉しそうに枕を抱えた野分が何やら恐ろしいことを言い出したから、ヤメろと拳骨を落とす。
「とにかく飯にしようぜ」
 秋彦のせいで、仕事の疲れが増したような気がする、とため息混じりにネクタイを解くと、野分は手にしていた抱き枕をそっとベッドの上に置いた。
「今日は本物を抱きしめて寝るので、枕は使いません。安心してください」
「は?」
「本物のヒロさんの方が気持ちいいですし」
 ぎゅっと抱きしめられる温かさに腕をまわす。こうして抱き返してくれるのは本物だけだ、と改めて思いつつ、やっぱり野分の抱き枕があってもいいな、とそっと思った。
PR

プロフィール

HN:
さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中

最新記事

(07/17)
(07/17)
(07/17)
(07/17)
(07/17)

P R

忍者カウンター

Copyright ©  -- frown --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Photo by momo111 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]

javascript:void(0); javascript:void(0);