frown
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寝ても醒めても 5
秋彦と飲んですっかり酔っぱらってしまった次の日のヒロさんと、野分。
2017.4.22 投稿
すげぇいい夢を見た。頭を撫でる手のあたたかさに身体も心もとろりとほどけていく。
「おはようございます」
「なんで・・・お前・・・仕事は」
「今日は休みです」
夢の続きなのかと瞬きをすると巻きついている長い腕にぎゅっと力がこめられた。いつもなら心地よく感じるはずのぬくもりだったが、抱きしめられて微かに揺れたベッドのスプリングの波が頭の芯にずきりと響いた。
「痛っ」
「大丈夫ですか?」
腕の力を緩み、野分が顔を覗きこんできた。
「頭・・・痛い・・・」
「飲み過ぎですよ」
「そんなに・・・飲んでねぇし」
そもそも野分とじゃなくて、秋彦と飲んでいたはずだし、と一人でぼやけた記憶を探っていると、腕の力を抜いた分だとでもいうかのように、長い足を絡められた。
「野分・・・」
「はい」
「当たってる」
朝だから、なんて理由じゃすまないレベルの猛々しい熱が押し当てられている。
働きすぎってやつなのか?いや、それにしてもこれはどうなんだよ。こっちまでおかしくなりそうだ。
「ヒロさんのせいですよ」
さらに身体を密着させながら吹きかけられる熱い息に焦って逃れようとした途端、また頭にずきりと痛みが響き、思わず枕に突っ伏した。
「痛ぇ」
「お薬ありますよ」
用意周到にベッドサイドにはペットボトルやら薬の瓶やらが並んでいた。
「なぁ、昨日って、俺そんなに」
「覚えてないんですか?」
「悪ぃ・・・」
ズキズキと痛む頭をだましながら、ゆっくりと起き上がり、薬を受け取った。
自己嫌悪の海にどっぷりと浸りながら苦い薬を飲み干す。空の瓶を受け取った野分に手をとられて、そのままベッドに押し倒された。
「ちょっ、なに、具合が悪いって」
薬の味がする口の中に舌が入りこみ、ざらりと舌先を重ねられた。
「野分っ」
押し返そうとした手が握りしめられる。真っ直ぐにみつめる瞳は黒々と光っていた。
「昨日はあんなに俺を誘ったくせに」
「誘っ、た?俺が?」
「そうですよ。それなのにヒロさん一人だけイッて寝ちゃって。俺、すごく辛かったです」
覆いかぶさりながら訴えられる。身に覚えがないと焦りつつ、そっと視線を下へとずらすとそこには下着の上からも明らかに分かるほどに昂ぶっている野分自身が見えた。
「それは・・・悪かったな・・・でも、お前も医者なら分かるだろ。無理だ」
「大丈夫です。ゆっくりしますから」
「ゆっくり?」
「頭の痛いのなんて忘れるくらいに」
「忘れられるわけねーだろ」
「忘れて下さい」
いったいお前は俺に何を忘れさせようとしたいんだ、なんて聞いてはいけないと思わせる声だった。のみこまれて目を閉じると、優しく触れるだけのキスが落とされた。思わずギュッと閉じた目蓋に力がはいる。
自分の心臓の音だけが馬鹿みたいに響いている。まるでこれから野分にされることへの期待をみせてしまっているようで嫌になるけど、いつもならなだれこむように襲ってくる野分を密かに待ち構えた。
それなのに何も触れてくる気配がない。
どうしたんだろう。
不安になってそっと目を開けると、すぐそこにジッと見つめている黒い瞳かあった。
「何、して」
「どっちが本当のヒロさんなのか、わからなくなります」
「どっちって」
意味のわからない問いかけに混乱したまま唇を重ねられる。今度は深くて甘いキスだった。不安な気持ちも、頭の痛みさえもどろどろと溶けて消えていき、頭の中がぼうっとなってしまう。こいつのキスには何か入っているんだろうか、と思うくらいだ。
「んっ、」
舌先がくすぐるようにたどり与えてくる刺激に息が上がる。口の中の感じるところさえすっかり知られているってのに、いったいこいつは俺の何をわからないというんだろうか。
朝の陽射しがカーテンを隙間を通り抜ける。明るいところで抱き合うのはあんまり好きじゃないって言ってるのに、キスだけで、もうそんなことはどうでもよくなってしまう。口腔に入りこむ舌に舌を重ねたり、離れたり、絡めたり、互いに夢中になって貪っているうちにふわふわと気分が上がっていき、野分の唇が首すじに、さらに下へと這っていく頃には頭が痛かったことなんて忘れてしまっていた。
「頭、もう痛くないですか?」
「違うところが痛ぇっての」
「すみません」
気がついたら朝どころか真昼間に一緒に風呂に入っていた。嬉しそうに俺の身体を洗う野分にぐったりと身を任せながら、昼も夜も関係なく仕事をしているせいなのか、こいつにとって、こういうことをするのに時間は関係ないらしいってことをまた思い知らされた。
野分が何を気にしていたのか、結局わからなかったけど、とりあえず飲みすぎたのはよくなかったんだろうと一人で反省しつつ、その日は何もなく、というか、少しばかり甘ったるく・・・いや、少しじゃねぇだいぶ野分に甘すぎたのは、秋彦と飲んでたりした俺の気が咎めていたせいだろう。