frown
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寝ても醒めても 3
秋彦の前ではやけに無防備なヒロさんを、無事に連れて帰った野分と酔っ払いヒロさん。
2017.4.10 投稿
なんだかすごく気分がよかった。
「着きましたよ」
頭も足元もふわふわとしたままで、気がついたら俺は家の玄関に立っていた。
「ヒロさん、大丈夫ですか?」
「ん」
上がり框にぺたりと腰をおろすと、靴を脱ぎ捨てる。
一度座ってしまったらなんだか立ち上がるのも面倒になってしまって、そのまま後ろにごろんと寝そべった。背中に伝わる廊下の冷たさに目を閉じる。
「起きて下さい」
子ども扱いするような声が降ってくる。いっそのことそのまま甘やかされてやろうと俺はだらんと両手を前に伸ばした。
「のわきぃ」
出した両手を握りしめて力強く引いてくれたその手の温かさに嬉しくなって、引っ張られた勢いのままに抱きついてみた。
ぺたり、と広い背中に手をまわす。
包みこむような温かさに安心しながら、久しぶりの野分の匂いを思う存分味わっていると、突然抱き上げられて慌ててしがみついた。
「なにして」
返事もないままに野分の寝室の中へと連れこまれる。ベッドの上におろされた身体がマットレスに沈み、スプリングの揺れのせいで身体の中からふわりと浮かび上がった酔いがまわる。
アルコールのせいで頭の中は霞がかかったようにぼんやりとしている。逆に指先や皮膚の神経はまるで研ぎ澄まされたように敏感になってしまっていて、マットレスと背中の間に差しこまれた野分の手の感触に背筋がぞくりと痺れた。
「んん、」
甘ったるい声が勝手に漏れ出す。
脱がせたジャケットを手にした野分の表情が、不意に曇った。
「…クリーニングに出しますね」
汚したつもりはなかったけれど、ワインでも零してしまっていたんだろうか。
野分にしては乱暴に床に落とした服を見ているうちにベルトも外されて、ズボンもジャケットの横に放り出された。
ひんやりとしたシーツが触れた太腿が粟立つ。スルリと撫で上げられて、そのままシャツが捲り上げられた。
「ふぁっ」
べろり、と無遠慮にへそに舌が入りこみ、ぞくりと腰が揺れる。裾のほうからぷちぷちとワイシャツのボタンが外されていき、少しずつ黒くて硬い髪の毛が上ってくる。
「のわ」
顎先を掠めた髪の毛がくすぐったくて顔を反らすと、首すじに熱が落とされた。ジリッと焼けつくような熱い刺激。それは酷く甘く俺を痺れさせた。
もっと触れて欲しい。
鼻先が触れそうな距離で真っ直ぐにみつめる野分の瞳に誘われるように、俺はそっと舌を差し出した。
「ヒロさんはどうしてそんな風に」
欲しかったキスの代わりに硬い声を浴びせられて胸の奥がざわりと震える。
「なに、?」
剥がされたシャツに絡め取られた手首を掴まれて頭の上で縛られた。
「野…分?」
驚いて見上げた瞳は、いつもと違う冷えた色を放ち、大きな手がぐい、と俺の腕を乱暴に引き上げた。
「いてぇって、」
捻った身体を抑えるように野分の手がゆっくりと撫でまわす。思うように動けないままに、野分の手が与える熱とそこから広がる快楽にビクビクと背中が跳ねた。
「イヤじゃないんでしょう」
耳元で囁く声と、耳に入りこんで舐めまわす舌。頭の中が掻き混ぜられたように痺れてくる。逃れようと振った頭を抱きこまれて、耳朶をやわやわと噛まれて、声を上げた。
「やッ、・・・それやだって、」
「ヒロさん」
野分は、体温もだけど、声も熱い。耳元で名前を呼ばれると、耳から入りこんだ熱に身体がとろりと溶けてしまいそうになる。
「どうして泊まるだなんて」
「一人って、言った・・・から」
「どういう意味ですか?」
「一人ぼっちは、嫌だろ」
「宇佐見さんがですか」
「俺だって」
「寂しかったんですか」
「ったり、前だ」
唇が重ねられて言葉が途切れる。絡めあい重なりあう舌のほうが言葉よりも雄弁だ。ぐだぐだ言ってねぇで、もっとくれたらいいのにと、ようやく与えられたキスに夢中になった。