frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
犬も食わない
ヒロさんと犬の話
2015.4.25
2015.4.25
よく晴れた休日の午後。
春の嵐のような雨が続いていた分、公園の中の木々は洗い上げたような濃い緑の葉を揺らしている。
俺はいつものベンチが空いているのを見つけて座った。
腕時計を見ると、待ち合わせの時間まではまだ30分以上もある。
まただ
俺は約束の時間に厳しいほうではあるが、いくらなんでも早すぎると自分でもわかってはいる。
携帯電話を開いて新しい連絡が来てないことを確認する。
今日は大丈夫そうだな
鞄から読みかけの本を出すと膝の上に広げた。
心地よい風が吹いていく。
「ノワ!」
その声に本から意識を引き上げられた。
顔を上げると、ハッハッハッハッという音とともに、真っ黒な固まりがものすごい勢いで俺の足元に向かって走って来るのが見えた。
「ノワ!待って!ノワ!」
少し後ろからリードを握りしめた女性が走って追いかけていた。
その生き物は一直線に俺の座っているベンチへと向かってくると、足元へ飛び込んで来た。
そのままフンフンと足首に鼻を擦りつけて、ぐるぐると回り始める。
何をそんなに一心不乱に嗅いでいるのかと呆れながら手を伸ばしてひょいと抱き上げると、それはホワホワとした真っ黒な毛をした子犬だった。
手のひらに柔らかい感触と少し高めの体温とトクトクと速いリズムを刻む心臓の鼓動が伝わってくる。
黒々と濡れた鼻の頭をピクピクとうごめかす様子になんだか嬉しくなった俺は顔の前に抱き上げた。
一人と一匹で見つめ合う。
逃げてきたにしてはおとなしくクンクンと鼻を鳴らしながら俺の目を覗きこむ顔は、なかなか賢そうだ。
「お前、ノワって言うのか?」
そう言うとパタパタとシッポを振って、元気よくワンッと吠えた。
赤い舌をベロリと出して、短く呼吸を弾ませている様子は、見れば見るほどあいつのようだ。
「す、すみま、せん」
ようやく走ってきた飼い主と思われる女性はゼイゼイと息を上げて、膝に手を乗せている。俺は気の毒になって、彼女の呼吸が整うのを待った。
胸元に抱え直すと子犬はペロペロと俺の顔や首すじを舐めてきた。
「ちょっ、おい、やめろって」
ザラザラとした舌の感触に驚いた俺の声に、ようやく息を整えた女性が慌てて子犬に手を伸ばして呼んだ。
「ノワ、おいで」
俺は抱きかかえていた子犬を渡した。
女性は首輪にリードを繋いで下に降ろすと、大きく息を吐いた。
「ありがとうございました」
地面に降ろされた子犬がまた俺の足に鼻を擦りつけている。それを見た女性がリードを引くと少し強い声で呼んだ
「ノワール!」
俺はしゃがみこんで子犬の頭を撫でた。
「この犬、ノワールって言うんですか?」
「はい」
名前の通り、確かに真っ黒だな。
「ノワ」
小さな声でそう呼ぶと、真っ黒な目で俺をじーっと見つめてきた。
何かを訴えてくるような黒い瞳。
「その顔には騙されねぇぞ」
そう言いながら俺はもう一度頭を撫でまわした。
[newpage]
「犬がお好きなんですね」
戯れてくるノワールについ話しかけると、そんなことを言われて、そのまま並んで犬の話をしていた。
「ヒロさん!」
聞きなれた声がした。
隣に座って話していた人と同時に声のした方を見る。
「ヒロさん!」
息を切らせて真っ直ぐに走ってくる姿はやっぱり似ている。
「すみません。遅くなりました」
「別に、そんなに待ってねぇよ」
俺は自分の鞄を持つとベンチから立ち上がった。
挨拶をしようとして、隣に座っていた人の目が野分に注がれているのに気がついた。
ああ、まただ
こいつに注がれる視線が多いことは今に始まったことじゃない
その度に落ち着かないような気持ちになる自分が許せないだけで、別に誰が悪いってわけでもない。
まあ、男にも女にもやたらとニコニコ笑ってやがる野分もどうかとは思うけど。
野分を見つめている人を見るのも、見つめられている野分を見るのも嫌だったから、俺はしゃがみこんで今にも千切れそうなくらいに勢いよくシッポを振っているノワールの頭を撫で回した。
俺の膝に前足を乗せてきて頬をペロペロと舐める様子は、まるで俺を慰めてくれているようにも思える。真っ黒な瞳に映る自分の顔を見て、なんだか可笑しくなってきた俺は笑いながら頭を撫でた。
頬を舐めていた舌が口元にきた。
「こら」
そう言ってもやめようとしないノワールを膝から降ろすと、俺は立ち上がった。
それでもまだ俺の足元をクンクンと嗅ぎ回っている。
「またな」
足元に向かってそう言うと飼い主に軽く会釈をして、俺は歩き出した。
野分も同じように頭を下げて、俺の横に並んできた。
「ワンッ!」
元気のいい鳴き声に、俺は振り返るともう一度手を振った。
赤い舌を出してシッポを振っているその顔は笑っているようだった。
「思ったより早かったな」
そう言って見上げた顔はやや俯いていて、伸びた前髪に隠れている。そのせいで、表情がいつもよりわかりにくい。
それでも、不機嫌な気配は濃厚に伝わってきた。
「野分?」
「もっと遅れたほうが良かったですか」
「…何言ってんだ?」
「ヒロさん、ずいぶんと楽しそうでしたね」
「俺が?」
「ああいうの、好きなんですか?」
「ああいうのって」
まさか、あの犬が野分に似てるとか思っていたのがばれたんだろうか
「小さくて可愛かったですね」
「そうだな」
「俺、ヒロさんが好きなの知りませんでした」
「別にわざわざ言うことでもねーだろ」
俺は犬が特別に好きって訳じゃねぇし、もし犬が好きだとしてもそれが怒る理由になるとも思えない
「もしかして飼ってたんですか?」
「俺は飼ったことねぇけど」
子どもの頃可愛がっていたのは秋彦の家の犬だったし
「そうですか」
アレキサンダーは利口な犬だったから嫌いじゃなかったけど、それがなんだっていうんだよ
「野分、てめぇはさっきから何が言いたいんだ」
「あの犬」
「だから犬がどうしたんだよ?」
「ずいぶん仲良さそうだったから」
なんだそれは、お前の日本語はいつもよくわからねぇって言ってんだろーが
「頼むからもう少し分かるように話せ」
ようやく野分が俺の顔を見た。
「犬にあんなことさせたり、笑いかけたりしないで下さい」
やっとお互いの顔をちゃんと見たっていうのに、聞かされたのはあまりにも予想外な言葉だった。
「あ、あんなことって、なんだよ」
「ヒロさん、キスされてました」
晴れた気持ちのいい休日の午後の公園、楽しそうに散歩してる人や子ども連れの人が大勢歩いている中で突然何てことを口にしてんだこいつは。
「アホなこと言ってんじゃねーよ」
とにかくこいつを黙らせないと、そう思って睨みつけたのに野分は眉を顰めて続ける。
「俺だって・・したことないのに」
「はぁ?てめぇはキスよりもっと・・」
危ない。
もうちょっとで俺までとんでもないことを口走りそうになった。
慌てて口を閉じる。
「だって、俺は公園でキスなんて、痛っ!」
言ってダメなら実力行使あるのみ。
俺は野分の頭を力一杯殴りつけた。
それこそ、通りがかりの人が驚いて小さな悲鳴を上げるほどに。
「あれはそんなんじゃねぇだろうが!だいたい、犬だぞ!犬!」
頭をさすりながら野分は涙目で訴えてきやがった。
「犬でもダメです!」
俺は身体中の力が抜ける気がした。いや、実際抜けてしまったに違いない。
「お前本当にアホだな!ノワの方がよっぽど賢いぞ」
「ヒロさん」
「なんだよ」
「ノワって誰ですか?」
うっかり口を滑らせた。
野分は俺の腕を掴まえて、真剣な顔でもう一度聞いた。
「ノワって、ひょっとして」
野分が振り向いてノワールの方を見た。
「あの犬の名前ですか?」
「…そうだよ」
「俺よりあの犬の方がいいんですか?」
「だからお前はアホだって言うんだよ」
俺は野分の腕を振り解くと歩き出した。
二人揃ったの休みの日で、しかもこんなにいい天気なのに
「ヒロさん!」
俺は躾を間違えたんだろうか・・。
「ヒロさん、あの、家に帰りませんか?」
「今来たばっかりだろーが」
「じゃあ、どこか・・」
野分はキョロキョロと辺りを見渡している
「何?」
「ヒロさんが犬にキスされたままなのは嫌なんで、早く俺がキレイにしたいです」
野分は、どこがいいかな、と呟きながら草むらや木が茂っているところを見つめ始めている。
「…野分」
「はい」
「俺はノワの方がよかった…」
「ええ?!どこがですか!」
「あいつはそんな恥ずかしいこと言わねぇからな」
俺は早足で歩き出した。
「ヒロさん」
「うるせぇ」
待ても出来ないようなバカ犬かよ。
必死に追いかけてくるこいつを見ていたら、デートなんだか犬の散歩なんだかわかりゃしねぇ
いや、そもそもデートじゃねぇし!
「早く行くぞ」
それでも、いつだって俺のところへ必死に走って来てくれる野分を見ると嬉しくなってしまうから。
だから俺は、お前を待つのは嫌じゃない。
「待ってください」
シッポが見えそうなお前と一緒に歩くのだって嫌じゃない。
だからってな
「野分、こんなとこで手を繋ぐんじゃねぇ」
「ダメでしたか」
「ったりめぇだろーが」
「残念です」
繋がなくてもちゃんとついてきやがれってんだ。
俺の横はお前の場所なんだから。
春の嵐のような雨が続いていた分、公園の中の木々は洗い上げたような濃い緑の葉を揺らしている。
俺はいつものベンチが空いているのを見つけて座った。
腕時計を見ると、待ち合わせの時間まではまだ30分以上もある。
まただ
俺は約束の時間に厳しいほうではあるが、いくらなんでも早すぎると自分でもわかってはいる。
携帯電話を開いて新しい連絡が来てないことを確認する。
今日は大丈夫そうだな
鞄から読みかけの本を出すと膝の上に広げた。
心地よい風が吹いていく。
「ノワ!」
その声に本から意識を引き上げられた。
顔を上げると、ハッハッハッハッという音とともに、真っ黒な固まりがものすごい勢いで俺の足元に向かって走って来るのが見えた。
「ノワ!待って!ノワ!」
少し後ろからリードを握りしめた女性が走って追いかけていた。
その生き物は一直線に俺の座っているベンチへと向かってくると、足元へ飛び込んで来た。
そのままフンフンと足首に鼻を擦りつけて、ぐるぐると回り始める。
何をそんなに一心不乱に嗅いでいるのかと呆れながら手を伸ばしてひょいと抱き上げると、それはホワホワとした真っ黒な毛をした子犬だった。
手のひらに柔らかい感触と少し高めの体温とトクトクと速いリズムを刻む心臓の鼓動が伝わってくる。
黒々と濡れた鼻の頭をピクピクとうごめかす様子になんだか嬉しくなった俺は顔の前に抱き上げた。
一人と一匹で見つめ合う。
逃げてきたにしてはおとなしくクンクンと鼻を鳴らしながら俺の目を覗きこむ顔は、なかなか賢そうだ。
「お前、ノワって言うのか?」
そう言うとパタパタとシッポを振って、元気よくワンッと吠えた。
赤い舌をベロリと出して、短く呼吸を弾ませている様子は、見れば見るほどあいつのようだ。
「す、すみま、せん」
ようやく走ってきた飼い主と思われる女性はゼイゼイと息を上げて、膝に手を乗せている。俺は気の毒になって、彼女の呼吸が整うのを待った。
胸元に抱え直すと子犬はペロペロと俺の顔や首すじを舐めてきた。
「ちょっ、おい、やめろって」
ザラザラとした舌の感触に驚いた俺の声に、ようやく息を整えた女性が慌てて子犬に手を伸ばして呼んだ。
「ノワ、おいで」
俺は抱きかかえていた子犬を渡した。
女性は首輪にリードを繋いで下に降ろすと、大きく息を吐いた。
「ありがとうございました」
地面に降ろされた子犬がまた俺の足に鼻を擦りつけている。それを見た女性がリードを引くと少し強い声で呼んだ
「ノワール!」
俺はしゃがみこんで子犬の頭を撫でた。
「この犬、ノワールって言うんですか?」
「はい」
名前の通り、確かに真っ黒だな。
「ノワ」
小さな声でそう呼ぶと、真っ黒な目で俺をじーっと見つめてきた。
何かを訴えてくるような黒い瞳。
「その顔には騙されねぇぞ」
そう言いながら俺はもう一度頭を撫でまわした。
[newpage]
「犬がお好きなんですね」
戯れてくるノワールについ話しかけると、そんなことを言われて、そのまま並んで犬の話をしていた。
「ヒロさん!」
聞きなれた声がした。
隣に座って話していた人と同時に声のした方を見る。
「ヒロさん!」
息を切らせて真っ直ぐに走ってくる姿はやっぱり似ている。
「すみません。遅くなりました」
「別に、そんなに待ってねぇよ」
俺は自分の鞄を持つとベンチから立ち上がった。
挨拶をしようとして、隣に座っていた人の目が野分に注がれているのに気がついた。
ああ、まただ
こいつに注がれる視線が多いことは今に始まったことじゃない
その度に落ち着かないような気持ちになる自分が許せないだけで、別に誰が悪いってわけでもない。
まあ、男にも女にもやたらとニコニコ笑ってやがる野分もどうかとは思うけど。
野分を見つめている人を見るのも、見つめられている野分を見るのも嫌だったから、俺はしゃがみこんで今にも千切れそうなくらいに勢いよくシッポを振っているノワールの頭を撫で回した。
俺の膝に前足を乗せてきて頬をペロペロと舐める様子は、まるで俺を慰めてくれているようにも思える。真っ黒な瞳に映る自分の顔を見て、なんだか可笑しくなってきた俺は笑いながら頭を撫でた。
頬を舐めていた舌が口元にきた。
「こら」
そう言ってもやめようとしないノワールを膝から降ろすと、俺は立ち上がった。
それでもまだ俺の足元をクンクンと嗅ぎ回っている。
「またな」
足元に向かってそう言うと飼い主に軽く会釈をして、俺は歩き出した。
野分も同じように頭を下げて、俺の横に並んできた。
「ワンッ!」
元気のいい鳴き声に、俺は振り返るともう一度手を振った。
赤い舌を出してシッポを振っているその顔は笑っているようだった。
「思ったより早かったな」
そう言って見上げた顔はやや俯いていて、伸びた前髪に隠れている。そのせいで、表情がいつもよりわかりにくい。
それでも、不機嫌な気配は濃厚に伝わってきた。
「野分?」
「もっと遅れたほうが良かったですか」
「…何言ってんだ?」
「ヒロさん、ずいぶんと楽しそうでしたね」
「俺が?」
「ああいうの、好きなんですか?」
「ああいうのって」
まさか、あの犬が野分に似てるとか思っていたのがばれたんだろうか
「小さくて可愛かったですね」
「そうだな」
「俺、ヒロさんが好きなの知りませんでした」
「別にわざわざ言うことでもねーだろ」
俺は犬が特別に好きって訳じゃねぇし、もし犬が好きだとしてもそれが怒る理由になるとも思えない
「もしかして飼ってたんですか?」
「俺は飼ったことねぇけど」
子どもの頃可愛がっていたのは秋彦の家の犬だったし
「そうですか」
アレキサンダーは利口な犬だったから嫌いじゃなかったけど、それがなんだっていうんだよ
「野分、てめぇはさっきから何が言いたいんだ」
「あの犬」
「だから犬がどうしたんだよ?」
「ずいぶん仲良さそうだったから」
なんだそれは、お前の日本語はいつもよくわからねぇって言ってんだろーが
「頼むからもう少し分かるように話せ」
ようやく野分が俺の顔を見た。
「犬にあんなことさせたり、笑いかけたりしないで下さい」
やっとお互いの顔をちゃんと見たっていうのに、聞かされたのはあまりにも予想外な言葉だった。
「あ、あんなことって、なんだよ」
「ヒロさん、キスされてました」
晴れた気持ちのいい休日の午後の公園、楽しそうに散歩してる人や子ども連れの人が大勢歩いている中で突然何てことを口にしてんだこいつは。
「アホなこと言ってんじゃねーよ」
とにかくこいつを黙らせないと、そう思って睨みつけたのに野分は眉を顰めて続ける。
「俺だって・・したことないのに」
「はぁ?てめぇはキスよりもっと・・」
危ない。
もうちょっとで俺までとんでもないことを口走りそうになった。
慌てて口を閉じる。
「だって、俺は公園でキスなんて、痛っ!」
言ってダメなら実力行使あるのみ。
俺は野分の頭を力一杯殴りつけた。
それこそ、通りがかりの人が驚いて小さな悲鳴を上げるほどに。
「あれはそんなんじゃねぇだろうが!だいたい、犬だぞ!犬!」
頭をさすりながら野分は涙目で訴えてきやがった。
「犬でもダメです!」
俺は身体中の力が抜ける気がした。いや、実際抜けてしまったに違いない。
「お前本当にアホだな!ノワの方がよっぽど賢いぞ」
「ヒロさん」
「なんだよ」
「ノワって誰ですか?」
うっかり口を滑らせた。
野分は俺の腕を掴まえて、真剣な顔でもう一度聞いた。
「ノワって、ひょっとして」
野分が振り向いてノワールの方を見た。
「あの犬の名前ですか?」
「…そうだよ」
「俺よりあの犬の方がいいんですか?」
「だからお前はアホだって言うんだよ」
俺は野分の腕を振り解くと歩き出した。
二人揃ったの休みの日で、しかもこんなにいい天気なのに
「ヒロさん!」
俺は躾を間違えたんだろうか・・。
「ヒロさん、あの、家に帰りませんか?」
「今来たばっかりだろーが」
「じゃあ、どこか・・」
野分はキョロキョロと辺りを見渡している
「何?」
「ヒロさんが犬にキスされたままなのは嫌なんで、早く俺がキレイにしたいです」
野分は、どこがいいかな、と呟きながら草むらや木が茂っているところを見つめ始めている。
「…野分」
「はい」
「俺はノワの方がよかった…」
「ええ?!どこがですか!」
「あいつはそんな恥ずかしいこと言わねぇからな」
俺は早足で歩き出した。
「ヒロさん」
「うるせぇ」
待ても出来ないようなバカ犬かよ。
必死に追いかけてくるこいつを見ていたら、デートなんだか犬の散歩なんだかわかりゃしねぇ
いや、そもそもデートじゃねぇし!
「早く行くぞ」
それでも、いつだって俺のところへ必死に走って来てくれる野分を見ると嬉しくなってしまうから。
だから俺は、お前を待つのは嫌じゃない。
「待ってください」
シッポが見えそうなお前と一緒に歩くのだって嫌じゃない。
だからってな
「野分、こんなとこで手を繋ぐんじゃねぇ」
「ダメでしたか」
「ったりめぇだろーが」
「残念です」
繋がなくてもちゃんとついてきやがれってんだ。
俺の横はお前の場所なんだから。
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さるり
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ヒロさん溺愛中
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