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frown

当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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秋立つ

今年もまた、台風のニュースを見るたびに野分を思う

2015.8.25



「ヒロさん」
名前を呼ばれて、読んでいた本から顔を上げる。
いつのまにか目の前に野分が立っていた。
「いつ帰ってきたんだ?」
俺がそう聞くと今度は後ろから声が聞こえた。
「ヒロさん」
振り向くとそこにも野分が立っていた。
「え?」
同じ顔で同じ声で俺の名前を呼ぶ二人の野分。
「お前・・・どうしたんだ?」
「やだなぁヒロさん」
目の前の野分が微笑みながら顔を寄せて頬を触った。
「そうですよヒロさん」
後ろに立っている野分が後ろから肩に顔を乗せてきた。
「俺たち双子じゃないですか」
声が重なると同時に俺は4本の腕に包まれた。


◇◇◇

「・・・ヒロさん・・ヒロさん」
名前を呼ばれて目を開けた。
「ヒロさん」
「ん?」
すぐ近くで黒い瞳が覗きこんでいる。
「うわっ」
飛び上がるように身体を起こした。
「ただいまです」
ソファーの上からずり落ちそうになった俺を見て、野分が慌てて手を伸ばした。
読みかけの本が床に落ちている。
「・・・野分?」
「ヒロさん、寝ぼけてるんですか?」
時計を見る。
「あれ・・寝てた、のか」
リビングのテレビがいつの間にか深夜の番組を流している。
「夜は涼しくなってきましたね」
天気予報に変わった画面を見ながら野分が隣に座った。
「そうだな」
外の風が少し強すぎるような気がする。
『ほぼ同時に発生した二つの台風は勢力を強めながら進み・・・』
テレビの中の天気キャスターが並んだ渦巻きを指し示して解説している。
「台風が二つも来てるんですね」
少し心配そうな野分の言葉にさっきの光景を思い出した。
「双子・・・」
思わず呟く。
「双子の台風ですか?」
「いや、野分が」
「え?」
「なんでもない」
慌てて床に落としたままの本に手を伸ばした。
「双子ならよかったかな」
野分が真剣な声音で呟いた。
「え?」
「あ、でもやっぱりダメですね」
「何がよくて、ダメなんだ?」
「俺が二人ならヒロさんがさみしくないだろうなって」
「お前が二人って・・・」
「でも、俺、もう一人の俺とヒロさんを取り合っちゃいますね」
真剣な顔で俺の顔をじっと見た野分の額を本で叩くと、俺は立ち上がった。
「お前みたいなやつ、二人もいてたまるか」
「ええー、そんなひどいです」
「一人でも俺がもたねぇっての」
そう言って部屋へ向かった俺の背中にぴたりと野分がはりついた。
「ヒロさん」
腰に回された長い腕に力がこめられる。
「・・・何してんだよ」
「試してみますか?」
「何を?」
「ヒロさんがもたないか、どうか」
「試さんでいい」
「明日は休みですし」
耳元で囁く声が甘く沁みこむ。
お前はいつだって俺を巻きこむように包みこんでしまう。
俺は背中の体温に身体を預けた。

たった一人の、俺だけの台風
 

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