frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
春の弥生の
- 2020/03/05 (Thu)
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ピンポーン、と玄関のチャイムが鳴った。
一人で暮らすことにはだいぶ慣れた秋彦だったが、このチャイムが鳴ったら自分が出なければならないことには、まだ慣れずにいた。今まで住んでいた家では来客時には必ず誰かが応対してくれていたから、チャイムは聞こえても体はイマイチ反応しなかったりする。それに誰かも分からないのに、なぜ本を読むのをやめてまでわざわざ立ち上がる必要があるというのだ。
そう思って居留守を決めようとしたが、すぐさまピンポンピンポン、と立て続けにチャイムが鳴り響いた。
「はいはい」
今度は本を閉じて立ち上がる。
こんな鳴らし方をする奴は一人しかいない。
「何の用だ」
「いいから、とっとと開けろ」
予想通りの声にドアを開けると、なにやら桜色の風呂敷に包まれた荷物を抱えている幼馴染みが立っていた。
「どうしたんだそれ」
「ババァがお前と食えって持ってきやがった」
「おばさんが」
向かいに住んでいた幼馴染みの母親は、小さな頃からいつも自分に優しくしてくれる人だった。
「何が入ってるんだ?」
「俺もまだ見てない」
リビングのテーブルの上で風呂敷包みを広げると、中から小ぶりの重箱が出てきた。蓋を開けると下の段にはちらし寿司が、上の段には桜餅と菱餅の形のケーキが詰められていた、
「マジかよ…」
「桃の節句か」
「つか、お前の誕生日だろ」
「お礼を言わないとな」
「あのババァ、俺の誕生日にはケーキの一つもなかったくせに」
「それは弘樹の日頃の行いが悪いんだろ」
「うるせぇよ」
「せっかくだから一緒に食べるか」
「俺はいいけど。お前はいいのかよ」
「一人じゃ食べ切れない」
子どもの頃から、誕生日にはあまりいい思い出はないけれど。
「おい秋彦、ロウソクあるか?」
「ロウソク?」
「誕生日のお祝いだろーが。ロウソクを歳の数だけ立てようぜ」
「煙草ならあるが」
「ケーキに煙草立てられるかよ!」
「細かいことを気にするな。火がついているんだから、ほぼ同じだろう」
「同じじゃねぇ」
真っ赤な顔で必死になっている弘樹を見ていると、なんだか自分の誕生日も悪くない気がしてくるから不思議だ。
「しかたねぇな。今からロウソク買ってくるか?」
「いや、充分だ」
小さい部屋で過ごす初めての誕生日を春の風がふわりと流れていった。
秋彦、誕生日おめでとう。
一人で暮らすことにはだいぶ慣れた秋彦だったが、このチャイムが鳴ったら自分が出なければならないことには、まだ慣れずにいた。今まで住んでいた家では来客時には必ず誰かが応対してくれていたから、チャイムは聞こえても体はイマイチ反応しなかったりする。それに誰かも分からないのに、なぜ本を読むのをやめてまでわざわざ立ち上がる必要があるというのだ。
そう思って居留守を決めようとしたが、すぐさまピンポンピンポン、と立て続けにチャイムが鳴り響いた。
「はいはい」
今度は本を閉じて立ち上がる。
こんな鳴らし方をする奴は一人しかいない。
「何の用だ」
「いいから、とっとと開けろ」
予想通りの声にドアを開けると、なにやら桜色の風呂敷に包まれた荷物を抱えている幼馴染みが立っていた。
「どうしたんだそれ」
「ババァがお前と食えって持ってきやがった」
「おばさんが」
向かいに住んでいた幼馴染みの母親は、小さな頃からいつも自分に優しくしてくれる人だった。
「何が入ってるんだ?」
「俺もまだ見てない」
リビングのテーブルの上で風呂敷包みを広げると、中から小ぶりの重箱が出てきた。蓋を開けると下の段にはちらし寿司が、上の段には桜餅と菱餅の形のケーキが詰められていた、
「マジかよ…」
「桃の節句か」
「つか、お前の誕生日だろ」
「お礼を言わないとな」
「あのババァ、俺の誕生日にはケーキの一つもなかったくせに」
「それは弘樹の日頃の行いが悪いんだろ」
「うるせぇよ」
「せっかくだから一緒に食べるか」
「俺はいいけど。お前はいいのかよ」
「一人じゃ食べ切れない」
子どもの頃から、誕生日にはあまりいい思い出はないけれど。
「おい秋彦、ロウソクあるか?」
「ロウソク?」
「誕生日のお祝いだろーが。ロウソクを歳の数だけ立てようぜ」
「煙草ならあるが」
「ケーキに煙草立てられるかよ!」
「細かいことを気にするな。火がついているんだから、ほぼ同じだろう」
「同じじゃねぇ」
真っ赤な顔で必死になっている弘樹を見ていると、なんだか自分の誕生日も悪くない気がしてくるから不思議だ。
「しかたねぇな。今からロウソク買ってくるか?」
「いや、充分だ」
小さい部屋で過ごす初めての誕生日を春の風がふわりと流れていった。
秋彦、誕生日おめでとう。
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プロフィール
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さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中
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