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当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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trick 、もしくは (終)

ハロウィンのお話し

2018.10.31


「お、お前、仕事じゃ」
「そうなんですけど、ちょっと着替えを取りに」
ここ数日帰宅時間が合わず、すれ違ってばかりいたのに、なんでこんな時に限って会ってしまうんだろう。
「ヒロさん、これからどこかに出かけるんですか?」
「どこにも行かねぇけど」
「ハロウィンパーティーでもあるのかと」
着ている警察官の服を真顔で見つめられて恥ずかしさに目眩がしそうだ。
「アホか!こんなもの着て外に行くわけねーだろーが」
「じゃあなんのために」
「それは」
「もしかして、俺のために着てくれたんですか?」
「ンなわけあるか!」
全力で否定したのに野分はとけそうなくらい嬉しそうに笑っている。
「ああ、でも残念です。俺すぐ戻らないといけなくて。せっかくヒロさんがこんな服装をしてくれているのに」
「お前、人の話を聞いてんのか?」
「そうだ、具合が悪くなったってことにしたら少しくらい遅くなっても大丈夫かも」
「バカなこと言ってんじゃねーぞ野分。今日は仮装していい日であって、仮病使っていい日じゃねぇだろ。とっとと荷物持って戻りやがれ」
「じゃあせめて写真を」
「写真?」
「可愛い人がこんなに可愛い格好をしているんですよ。撮らないわけにはいきません」
そう言いながら野分はいつの間に出したのかスマホで写真を撮りだした。しかも、連写で。
「あっ、てめぇ勝手に撮りやがって。盗撮で逮捕するぞ」
「ちゃんと断りましたから、盗撮じゃないです」
「いいや、今のは盗撮と同じだ。そもそもてめぇの罪状は盗撮だけじゃねぇ。あの時、俺のアパートの鍵を盗んだことを忘れたとは言わせねーぞ」
出会ったその日にアパートの鍵を取っていったことを蒸し返し、あれは完全に犯罪だ、と睨みつけた俺の頬を大きな手が包みこんだ。
真っ黒な瞳が優しく見つめている。
「違います。あの時、盗まれたのは俺の方です。最初に会った時からずっと俺の心はヒロさんのモノになってますよ」
「なっ、なんだよそれ」
あまりにもこっぱずかしい台詞を目の前で言われて息が止まりそうだ。
「ああもう、そんな顔しないで下さい。ほんとに仕事休みたくなっちゃいます」
ハッ、と我に返って野分の脛に蹴りを入れた。
「とっとと仕事に行け!」
「はい。ヒロさん補給できたんで、あと少し頑張ってきます」
ニコニコと笑いながら野分が出て行った玄関を見ると黒いボストンバッグが置きっ放しになっている。
肝心の着替え忘れてどうすんだよ。
「おい、野分!忘れ物だぞ」
慌てて追いかけると、エレベーターの前で魔女の子たちに囲まれていた。
「おじさんもトリックオアトリートする?」
「しねぇよ」
ほらよ、と投げつけるように野分にバッグを渡す。
「もしかしてホンモノのおまわりさんなの?」
見上げてくる子どもに何のことだ、と言いかけて自分が今どんな格好をしているのか思い出した。
「草間先生捕まるの?」
心配そうな子どもの頭を優しく撫でて野分が笑った。
「大丈夫。もうずっと前から捕まってるんだよ」
「てめぇはガキ相手に嘘つくんじゃねぇぞ。捕まってんのは俺の方だ」
うっかりそう言い放って部屋に帰った俺が野分にオモチャの手錠をはめられることになるのはハロウィンから三日後のことだった。


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