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当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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trick、もしくは ①

ハロウィンのお話

                     2018.10

「なんだコレは」
むやみに広い秋彦のマンションのリビング。その一角に大小様々な箱が高く積み上げてある。
「資料だ」
「資料?」
次の作品に使うモノなのだろうか。
小説家というものは大変だな、と改めて思いながらいつものソファーへと向かえば、鈴木さんが真っ黒な帽子を被って座っていた。
「おい…鈴木さん、どうしたんだよ」
首にはキラキラと派手なオレンジ色のリボンが結ばれている。
「ハロウィン仕様にした」
「秋彦、お前もか」
唸りながら鈴木さんの横に腰を下ろす。つば広でとんがった帽子は魔法使いの扮装なのだろう。
夏が終わったかと思えば唐突にカボチャだらけになる。そんな街の様子から最近のハロウィンが異様に盛り上がっていることに気づいていたが、まさか同じ歳の秋彦までが家の中でこんなことをしているとは思わなかった。
「何が楽しいんだか」
いつもの鈴木さんの方がよっぽど可愛い。
「ハロウィンに何もしないのか?」
「なんでわざわざそんなことしなきゃなんねーんだよ」
「お前、けっこうイベント好きだろう」
「はぁ?」
「豆まきだって七夕だっていつも人一倍張り切ってたじゃないか」
「ガキの頃の話をするな!」
秋彦の言うことは間違いではない。
俺の家は季節の行事を大事にしていた。それはお袋がそういうことを大切にしていたからなのだが、子どもの頃の俺はなんだかんだ言いつつも色々な年中行事を楽しみにしていた。そして秋彦の家ではあまりそういうことをしないと知ってからは秋彦も巻きこんで一緒に楽しんでいた。
一人っ子の俺にとっては二人の方が楽しかったし、秋彦贔屓のお袋も喜んでいたから。
しかし!それはあくまでも子どもの時のことであり、日本の行事であって、ハロウィンみたいな最近急に市民権を得たようなイベントには興味もないし自分でやるつもりもない。
「お前も学生相手の仕事をしているんだから、少しは流行りのものを勉強したらどうだ?」
「必要ねーよ」
「堅いことばかり言ってると、すぐ老けこんでしまうぞ。いいのか?」
「老けこむ?」
「そうだ。例の彼だって、恋人は若い方が嬉しいだろ」
「そんなことはねーよ」
「毎日若い子に囲まれてるんだろ」
「アホか。アイツは仕事で子どもを相手にしているだけで、若い子に囲まれてるのとは違うって」
そうだ。野分に限ってそんなことあるわけない。俺は確かに年上だけど、そんな俺を好きになったのはアイツで。
好きです
野分のあの甘い声を思い出してゾクリと背中が震える。
でも……それは、俺がまだ大学生の時で。
今はどうだ。
俺ももう30代だ。大学で仕事をしているからいつまでも学生のような気分でいるけれど、確実に歳を重ねている…。
ビチビチとした弾けるような若さからは遠ざかっているのは否めない。
野分は優しいから言わないだけで、老けてきている、かも、しれない。
認めたくはないけれど。
そんな不安が胸を掠めたせいで、俺の資料を分けてやるから試してみろ、と言う幼馴染の言葉に抗えなかった俺は、積み上げてあった箱をいくつか持たされて、家に送られてしまったのだった。
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