frown
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龍一郎様の誕生日
- 2015/01/29 (Thu)
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ミニマムあさいさ、龍一郎様と薫のお話です。
本当に突然の井坂さんの誕生日発表に嬉しくなって書きました。
井坂さん、お誕生日おめでとうございます!
2015.1.29
「お誕生日おめでとうございます。」
スーツをキッチリと着こんだ大人たちが、にこやかに声をかけては、プレゼントと思われる箱を龍一郎に渡していく。
「ありがと。」
お礼の言葉を言いながらも、椅子に座ったままで特に喜ぶ顔も見せずに受け取っていく龍一郎の姿は、まるでどこかの国の王子様だと薫は思った。
子どもの龍一郎のお祝いをするために大人が列をなしているのに驚き、キッチンから運びこまれてくるケーキのサイズを見てさらに驚いている薫の目の前で、見たこともないようなご馳走が次々に運ばれては、テーブルの上に並んでいく。
こんな世界が本当にあるんだ。
いつもとは違うグラスやカトラリーが灯りを受けて光っているせいか、部屋全体が普段より眩しいように見える。
そんな中、真ん中の席に座る龍一郎が、なによりも、誰よりも輝いているように見えて、薫はなんだか真っ直ぐ見ることもできなかった。
龍一郎に挨拶をした大人は次に龍一郎の父親の前に行って挨拶をする。
スーツの列の間から見え隠れする龍一郎の姿を薫はボンヤリと見ていた。
大人の笑い声が響く部屋には龍一郎の他には薫しか子どもはいない。
居心地の悪さに薫はモゾモゾと椅子の上で体を動かした。
やっぱり何か手伝ったほうがいいのかもしれない。
部屋の隅の椅子に座りながら薫がそう思って周りを見渡していると、挨拶を終えたスーツの人たちが出口に向かい始めた。
どうやらお客は挨拶だけで帰るらしい。
飲み終わったグラスを下げ始めた母親の手伝いをしようと思った薫は、座っていた椅子から降りた。
「薫!」
自分の名前を呼ばれて振り返る。
スーツの人たちがいなくなったせいで、龍一郎がこっちを向いている顔がはっきりと見えた。
「薫!」
少し怒ったようなその声に、薫は急いで近づいていく。
「はい。」
「お前はそこに座ってろ。」
「でも、、。」
薫は片づけをしている母親たちの方をチラッと見た。
「いいから。」
困って旦那様の方をそっと見るとニッコリ笑って頷いている。
座ってもいいのかな。
「はい。」
指差された席はさっきまで座ってた隅の席とは違って、龍一郎の隣の席だった。ここはきっと本当の自分の席ではないと思った薫は、もう一度、龍一郎の方を見た。
「そこでいいんだって。」
薫は浅く腰かけた。
お客が全員出て行ったのを見た途端、龍一郎はため息をついた。
「オレの誕生日なのにつまんないー。」
テーブルに肘をついて唇を尖らせている龍一郎の顔を薫はまじまじと見つめた。
「、、お腹がすいたんですか?もうすぐ準備ができると思いますけど、、。」
機嫌の悪い龍一郎に何か持って来ようかと薫は腰を浮かしかけた。
「いいから薫はここにいろ!」
「はい。」
あんなにたくさんのプレゼントをもらったのに、どうしてそんな顔をするんだろうか?
そう思いながら再び椅子に座ったとき、自分の服のポケットから、カサッと音がした。
そうだった。
龍一郎の横に積んである贈り物の山を見る。
今さらこんなものいらないかもしれない。
そんな不安がよぎったものの、せっかく描いたんだし、と思い直して薫はポケットから用意していた封筒を出した。
「あの、龍一郎様。」
「なに?」
封筒を手渡す。
「これ、僕からの誕生日プレゼントです。」
「え?」
頬っぺたを膨らませていた龍一郎の顔がみるみる綻んできた。
「薫から?」
「はい。」
封筒を開ける姿がいつもと同じになっていて、薫は少しホッとした。
「あ、俺の顔だ!上手だな薫。」
贈った絵と同じように、笑っている龍一郎様の顔を見て思う。
いつだってこうして笑っていて欲しい。
「お誕生日おめでとうございます。」
「ありがとう。」
こんな風に眩しく輝いている顔をずっと見ていたいと思ってもいいのかな。
そんなことを考えていた薫に声が聞こえてきた。
「龍一郎坊っちゃま、お待たせいたしました。準備が整いましたよ。」
席をかえようと立ち上がった薫の手を龍一郎が掴んだ。
「どこに行くんだよ。」
「自分の席に戻ります。」
「薫はここだって言ってるだろ。」
「でも、、。」
「いいから、俺の隣にいろって。」
「、、はい。」
龍一郎様がそう言うなら、隣にいよう。
薫は椅子に深く腰かけた。
「何か言われても気にするな。」
「わかりました。」
部屋の明かりが落とされて、ケーキのロウソクに火がつけられていく。
年の数と同じ本数のロウソクの火が揺らめき、龍一郎の顔をオレンジ色に照らした。
Happy birthdayの歌が流れる。
「龍一郎様お誕生日おめでとうございます。」
みんなの声が重なる。
ロウソクの数が増えても、こうして隣にいることができますように。
薫は祈るような気持ちでロウソクの火をみつめた。
いつまでもこうしていることができますように。
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