frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
Deep and Sweet
- 2015/05/23 (Sat)
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アマドコロの日を記念した企画で、あさいさ書きました。
5月23日はアマドコロの日
キスの日
5月23日はアマドコロの日
キスの日
珍しい
朝風呂から上がった龍一郎の目に入ってきたのは笑っている朝比奈の顔だった。
朝の爽やかな空気の中で、マンションのベランダに立っている朝比奈は穏やかに微笑んでいる。
もっともその稀少ともいえる微笑みは龍一郎ではなく、ベランダに並んだ鉢植えに向けられている。
だいたい、一度でもあんな顔で俺を見たことがあったかよ
二人の間にあるのは窓ガラス一枚だけなのに、あっちの世界には別の朝比奈がいる
それは龍一郎にそう思わせるような笑顔だった。
なんだよ
なんとなく面白くない気持ちのままに朝食が並んでいるテーブルに向かうと、龍一郎は椅子に座りながら、陽当たりのいい場所を独占している鉢植えをちらりと見た。
「おはようございます」
如雨露を片づけた朝比奈がベランダから入ってきた。
「・・・おはよ」
朝から糊のきいたワイシャツにスラックスという隙のない格好でキッチンへと入っていった朝比奈はコーヒーを入れたカップを持って戻ってくると龍一郎の前にコーヒーカップを置いた。
置かれたカップに手を伸ばそうとした龍一郎へ朝比奈の咎めるような視線が刺さった。視線の先を辿った龍一郎が自分の胸元を見ると、そこにあるのは風呂上がりに適当に羽織っただけのバスローブと、そこから見えているほんのり上気した上半身。
龍一郎はだからなんだと言わんばかりに朝比奈を見つめ返した。
その視線に朝比奈はため息をつきながら近寄り、立ち上がった龍一郎の緩く結ばれていたバスローブの紐を解くと、何の迷いもなく、襟元をいくぶん詰め気味に、きっちりと着せ直していく。
龍一郎は自分の胸元で揺れる頭に向かって話しかけた。
「なあ、あれ」
「はい?」
キュッと音が出そうなくらいにきつくバスローブの紐を結び終えた朝比奈が顔を上げた。
「あれ、なんかまた増えてねーか?」
そう言った龍一郎の視線を見て、朝比奈は何のことか分かったらしい。
「増やしてますから」
それだけ言うと自分の椅子に戻っていった。
少し苦しくなった襟元に指を入れて緩めながら、龍一郎はベランダを見つめた。
子どもの頃、龍一郎が幼いながらも薫を元気づけようという一心から「貸してやる」と言って渡したアマドコロ。
たった一つだった鉢植えは、いつの間にか随分と増えた。
そーいや社長室にも置いてあるよな。
増えただけではない。
龍一郎がそのことをすっかり忘れていた頃も、そして今も、どんなに仕事が忙しい時であろうとも、朝比奈によってきちんと手入れがされているアマドコロはいつも生き生きとしている。
それは二人にとってアマドコロが大切な思い出と繋がっているから。
そんなことは龍一郎にも分かっているが、それにしても、と思うのだ。
あんな顔をして水遣りをする必要があるか?
俺にも滅多に見せないような顔しやがって
今が見頃と咲く可憐な白い花を眺めながら啜ったコーヒーはなんだかいつもよりも苦く、龍一郎は舌打ちをしながら牛乳を足した。
[newpage]
朝からくだらないことでギスギスとしてしまった。
それなのに、こんな日に限って接待もなければ、外での会議もない。
思ったより早くマンションの部屋に帰ってきた龍一郎はソファーに疲れた身体を預けた。
一緒に帰ってきた朝比奈はといえば、座っている龍一郎の前を通り抜けて、休む間もなく家の中のことを始める。
こいつは本当にまめだよな
部屋の灯りをつけた朝比奈はそのまま窓際へと歩いていった。
カーテンを閉めようとして、ベランダに並んでいるアマドコロの様子を愛しそうに見つめる姿に、龍一郎はつい朝のモヤモヤとした気持ちをそのまま口にしていた。
「またそれかよ」
「どうかなさいましたか?」
「別に・・」
そう言って黙りこんだ龍一郎の方をちらりと見た朝比奈は何も言わずにリビングから出て行った。
その後ろ姿を目の端に入れながら龍一郎はネクタイを外して首元を寛げた。
よく考えたら、植物相手になーにイライラしてるんだか
龍一郎は自分の子どもっぽさに呆れて声もなく笑うとそのままソファーの背にもたれて目を閉じた。
「・・・様、龍一郎様」
「ん?」
「このようなところで寝ないで下さい」
「寝てねーよ」
実際は少しばかりウトウトとしかけていたらしい。
目を擦って起き上がった龍一郎の目の前には小さなグラスが置いてあった。
中にはとろりとした黄金色の液体が揺れている。
「・・・酒か?」
「みたいなものです」
グラスを持ち上げるとあまり馴染みのない香りが鼻をくすぐった。
「これ何だ?」
「身体にいいというので作ってみました」
「作った?」
「アマドコロ酒ですよ」
ベランダの方を思わず見る。
「あれって食えるのか?」
「そうですよ。これは根の部分を使ってますが」
そっと口をつけてみる。
アルコールに溶け込んだ香りと甘さが口の中に広がった。
「甘いな」
もう一口ゆっくりと飲む。
「これは何に効くんだ?」
「老化防止、美白、美肌」
朝比奈の言葉に龍一郎は音を立てて噎せた。
「お前は俺をどうしたいんだ?」
思わずグラスに残った酒をまじまじと見つめる。
朝比奈は真面目な顔で続ける。
「それから、滋養強壮」
「あーそれはいいな」
「あとは」
「まだあんのか?」
聞きながら、グラスを口元に傾ける。
「強精です」
ゴクリと飲み干した龍一郎が朝比奈の顔を見上げた。
「キョウセイ?」
「はい。強精、つまり精力増強ですね」
そう言って龍一郎が飲み終えたグラスを下げようと伸ばした手を龍一郎が掴んだ。
「朝比奈」
「はい」
「おかわり」
「いけません」
そう言うと朝比奈はグラスを持った。
「1日200mlまでだそうです」
「なんで?」
「薬みたいなものなんでしょう」
「じゃあ我慢する。その代わり」
仄かに紅潮した目尻を下げて、口角をニッと上げると龍一郎は悪戯っぽく笑った。
「お前も飲め」
[newpage]
新しいグラスを持ってきた朝比奈へと龍一郎が手を伸ばす。
「よこせよ」
「もう飲んではいけませんよ」
「わかってるって」
そう言ってグラスを取り上げた龍一郎は自分の隣に朝比奈を誘った。
「早く座れよ」
言われるがままソファーに座った朝比奈の膝に跨ると、龍一郎は向かい合わせになって座った。
「なあ、薫」
「はい」
「そんなにアマドコロが好きか?」
予想外の問いかけに空いた一瞬の後に、朝比奈が答えた。
「好きですよ」
「ふーん」
「あれは」
朝比奈はベランダの方へ視線を向けながら続けた。
「あれは、貴方のものですから」
そう言うと龍一郎の瞳を見つめた。
「アマドコロを見るたびに私は貴方を想うことができます」
思いがけない返事に龍一郎の顔はみるみるうちに真っ赤になっていった。
本当にコイツは恥ずかしい奴だ
そう思いながらも、その言葉を喜んでいる自分はもっと恥ずかしい奴なのかもしれない。
龍一郎は持っていたグラスに口をつけた。
「龍一郎様、、」
止めようと開いた朝比奈の唇が濡れた龍一郎の唇に塞がれ、柔らかい感触を通して、口腔にとろりとした温かい液体が流れこんでくる。
驚いて見開いたその瞳を、触れそうなほど近くから龍一郎の黒い瞳が嬉しそうに覗きこんでいた。
朝比奈の喉が鳴る。
飲み切れなかった酒は口の端から細い筋となって顎を伝わっていくと、震える喉を濡らし、二人の間に甘い香りを撒き散らした。
自分の与えた酒の甘さを確かめるように龍一郎は朝比奈の口内に舌を入れてぐるりと舐めあげてから、唇をそっと離した。
ゆっくりと離れていく二人の唇の間に細い銀糸がキラキラと光り、プツリと切れた。
龍一郎は笑いながら朝比奈を見下ろしている。
「もっと飲むか?」
「まだ残ってますね」
グラスを見た朝比奈も薄く笑った。
その顔に煽られるように、龍一郎は再びグラスの酒を口に含むと、朝比奈の唇へ重ねて、再び、口移しで流しこんだ。
ゴクリと朝比奈の喉が大きく動く。龍一郎の喉もつられたように、こくんと上下した。
飲み終わった後も口腔内に残る香りと熱を互いに行き来させて味わい、それからゆっくりと離れた。
唇から際限無く溢れてくる熱い吐息に軽い酩酊を覚えた龍一郎は、ふわふわとした感覚に身体が侵食されていく。
気持ちいい
アルコールのせいなのか、それともアマドコロの効能なのか。どちらの吐息なのかもわからないまま、はぁ、と甘い息を吐きながら囁いた。
「薫・・甘いな」
「貴方もですよ」
残ったアマドコロ酒を口にしようとした龍一郎の手を朝比奈が止めると、グラスを持ち、自分で一気に呷った。
「あっ」
不満気に尖らせた龍一郎の唇を朝比奈が啄むように緩く噛む。
「俺が飲ませようと思ってたのに」
「貴方からもらうと、甘くなりすぎます」
龍一郎の頬に朝比奈の手が添えられた。
どちらともなく差し出すように舌を絡めあう。ひたすらに甘く、熱い感覚に溺れながら舌先を吸い上げると、上顎に舌を這わせていき、歯列をなぞるように舐め上げていく。
溢れてくる唾液はもうどちらのかもわからないほどに甘く濃密に満ちて滴っていった。
「薫、もっとよこせ」
「もうだめですよ」
「いいって」
「・・腫れても知りませんよ」
朝比奈の指が龍一郎の艶やかな黒髪に差し込まれ、より深く唇が重なり合う。
吐息も胸の鼓動も重なりあっていくのを感じながら、龍一郎は目を閉じた。
5月23日はアマドコロの日
そして、キスの日
朝風呂から上がった龍一郎の目に入ってきたのは笑っている朝比奈の顔だった。
朝の爽やかな空気の中で、マンションのベランダに立っている朝比奈は穏やかに微笑んでいる。
もっともその稀少ともいえる微笑みは龍一郎ではなく、ベランダに並んだ鉢植えに向けられている。
だいたい、一度でもあんな顔で俺を見たことがあったかよ
二人の間にあるのは窓ガラス一枚だけなのに、あっちの世界には別の朝比奈がいる
それは龍一郎にそう思わせるような笑顔だった。
なんだよ
なんとなく面白くない気持ちのままに朝食が並んでいるテーブルに向かうと、龍一郎は椅子に座りながら、陽当たりのいい場所を独占している鉢植えをちらりと見た。
「おはようございます」
如雨露を片づけた朝比奈がベランダから入ってきた。
「・・・おはよ」
朝から糊のきいたワイシャツにスラックスという隙のない格好でキッチンへと入っていった朝比奈はコーヒーを入れたカップを持って戻ってくると龍一郎の前にコーヒーカップを置いた。
置かれたカップに手を伸ばそうとした龍一郎へ朝比奈の咎めるような視線が刺さった。視線の先を辿った龍一郎が自分の胸元を見ると、そこにあるのは風呂上がりに適当に羽織っただけのバスローブと、そこから見えているほんのり上気した上半身。
龍一郎はだからなんだと言わんばかりに朝比奈を見つめ返した。
その視線に朝比奈はため息をつきながら近寄り、立ち上がった龍一郎の緩く結ばれていたバスローブの紐を解くと、何の迷いもなく、襟元をいくぶん詰め気味に、きっちりと着せ直していく。
龍一郎は自分の胸元で揺れる頭に向かって話しかけた。
「なあ、あれ」
「はい?」
キュッと音が出そうなくらいにきつくバスローブの紐を結び終えた朝比奈が顔を上げた。
「あれ、なんかまた増えてねーか?」
そう言った龍一郎の視線を見て、朝比奈は何のことか分かったらしい。
「増やしてますから」
それだけ言うと自分の椅子に戻っていった。
少し苦しくなった襟元に指を入れて緩めながら、龍一郎はベランダを見つめた。
子どもの頃、龍一郎が幼いながらも薫を元気づけようという一心から「貸してやる」と言って渡したアマドコロ。
たった一つだった鉢植えは、いつの間にか随分と増えた。
そーいや社長室にも置いてあるよな。
増えただけではない。
龍一郎がそのことをすっかり忘れていた頃も、そして今も、どんなに仕事が忙しい時であろうとも、朝比奈によってきちんと手入れがされているアマドコロはいつも生き生きとしている。
それは二人にとってアマドコロが大切な思い出と繋がっているから。
そんなことは龍一郎にも分かっているが、それにしても、と思うのだ。
あんな顔をして水遣りをする必要があるか?
俺にも滅多に見せないような顔しやがって
今が見頃と咲く可憐な白い花を眺めながら啜ったコーヒーはなんだかいつもよりも苦く、龍一郎は舌打ちをしながら牛乳を足した。
[newpage]
朝からくだらないことでギスギスとしてしまった。
それなのに、こんな日に限って接待もなければ、外での会議もない。
思ったより早くマンションの部屋に帰ってきた龍一郎はソファーに疲れた身体を預けた。
一緒に帰ってきた朝比奈はといえば、座っている龍一郎の前を通り抜けて、休む間もなく家の中のことを始める。
こいつは本当にまめだよな
部屋の灯りをつけた朝比奈はそのまま窓際へと歩いていった。
カーテンを閉めようとして、ベランダに並んでいるアマドコロの様子を愛しそうに見つめる姿に、龍一郎はつい朝のモヤモヤとした気持ちをそのまま口にしていた。
「またそれかよ」
「どうかなさいましたか?」
「別に・・」
そう言って黙りこんだ龍一郎の方をちらりと見た朝比奈は何も言わずにリビングから出て行った。
その後ろ姿を目の端に入れながら龍一郎はネクタイを外して首元を寛げた。
よく考えたら、植物相手になーにイライラしてるんだか
龍一郎は自分の子どもっぽさに呆れて声もなく笑うとそのままソファーの背にもたれて目を閉じた。
「・・・様、龍一郎様」
「ん?」
「このようなところで寝ないで下さい」
「寝てねーよ」
実際は少しばかりウトウトとしかけていたらしい。
目を擦って起き上がった龍一郎の目の前には小さなグラスが置いてあった。
中にはとろりとした黄金色の液体が揺れている。
「・・・酒か?」
「みたいなものです」
グラスを持ち上げるとあまり馴染みのない香りが鼻をくすぐった。
「これ何だ?」
「身体にいいというので作ってみました」
「作った?」
「アマドコロ酒ですよ」
ベランダの方を思わず見る。
「あれって食えるのか?」
「そうですよ。これは根の部分を使ってますが」
そっと口をつけてみる。
アルコールに溶け込んだ香りと甘さが口の中に広がった。
「甘いな」
もう一口ゆっくりと飲む。
「これは何に効くんだ?」
「老化防止、美白、美肌」
朝比奈の言葉に龍一郎は音を立てて噎せた。
「お前は俺をどうしたいんだ?」
思わずグラスに残った酒をまじまじと見つめる。
朝比奈は真面目な顔で続ける。
「それから、滋養強壮」
「あーそれはいいな」
「あとは」
「まだあんのか?」
聞きながら、グラスを口元に傾ける。
「強精です」
ゴクリと飲み干した龍一郎が朝比奈の顔を見上げた。
「キョウセイ?」
「はい。強精、つまり精力増強ですね」
そう言って龍一郎が飲み終えたグラスを下げようと伸ばした手を龍一郎が掴んだ。
「朝比奈」
「はい」
「おかわり」
「いけません」
そう言うと朝比奈はグラスを持った。
「1日200mlまでだそうです」
「なんで?」
「薬みたいなものなんでしょう」
「じゃあ我慢する。その代わり」
仄かに紅潮した目尻を下げて、口角をニッと上げると龍一郎は悪戯っぽく笑った。
「お前も飲め」
[newpage]
新しいグラスを持ってきた朝比奈へと龍一郎が手を伸ばす。
「よこせよ」
「もう飲んではいけませんよ」
「わかってるって」
そう言ってグラスを取り上げた龍一郎は自分の隣に朝比奈を誘った。
「早く座れよ」
言われるがままソファーに座った朝比奈の膝に跨ると、龍一郎は向かい合わせになって座った。
「なあ、薫」
「はい」
「そんなにアマドコロが好きか?」
予想外の問いかけに空いた一瞬の後に、朝比奈が答えた。
「好きですよ」
「ふーん」
「あれは」
朝比奈はベランダの方へ視線を向けながら続けた。
「あれは、貴方のものですから」
そう言うと龍一郎の瞳を見つめた。
「アマドコロを見るたびに私は貴方を想うことができます」
思いがけない返事に龍一郎の顔はみるみるうちに真っ赤になっていった。
本当にコイツは恥ずかしい奴だ
そう思いながらも、その言葉を喜んでいる自分はもっと恥ずかしい奴なのかもしれない。
龍一郎は持っていたグラスに口をつけた。
「龍一郎様、、」
止めようと開いた朝比奈の唇が濡れた龍一郎の唇に塞がれ、柔らかい感触を通して、口腔にとろりとした温かい液体が流れこんでくる。
驚いて見開いたその瞳を、触れそうなほど近くから龍一郎の黒い瞳が嬉しそうに覗きこんでいた。
朝比奈の喉が鳴る。
飲み切れなかった酒は口の端から細い筋となって顎を伝わっていくと、震える喉を濡らし、二人の間に甘い香りを撒き散らした。
自分の与えた酒の甘さを確かめるように龍一郎は朝比奈の口内に舌を入れてぐるりと舐めあげてから、唇をそっと離した。
ゆっくりと離れていく二人の唇の間に細い銀糸がキラキラと光り、プツリと切れた。
龍一郎は笑いながら朝比奈を見下ろしている。
「もっと飲むか?」
「まだ残ってますね」
グラスを見た朝比奈も薄く笑った。
その顔に煽られるように、龍一郎は再びグラスの酒を口に含むと、朝比奈の唇へ重ねて、再び、口移しで流しこんだ。
ゴクリと朝比奈の喉が大きく動く。龍一郎の喉もつられたように、こくんと上下した。
飲み終わった後も口腔内に残る香りと熱を互いに行き来させて味わい、それからゆっくりと離れた。
唇から際限無く溢れてくる熱い吐息に軽い酩酊を覚えた龍一郎は、ふわふわとした感覚に身体が侵食されていく。
気持ちいい
アルコールのせいなのか、それともアマドコロの効能なのか。どちらの吐息なのかもわからないまま、はぁ、と甘い息を吐きながら囁いた。
「薫・・甘いな」
「貴方もですよ」
残ったアマドコロ酒を口にしようとした龍一郎の手を朝比奈が止めると、グラスを持ち、自分で一気に呷った。
「あっ」
不満気に尖らせた龍一郎の唇を朝比奈が啄むように緩く噛む。
「俺が飲ませようと思ってたのに」
「貴方からもらうと、甘くなりすぎます」
龍一郎の頬に朝比奈の手が添えられた。
どちらともなく差し出すように舌を絡めあう。ひたすらに甘く、熱い感覚に溺れながら舌先を吸い上げると、上顎に舌を這わせていき、歯列をなぞるように舐め上げていく。
溢れてくる唾液はもうどちらのかもわからないほどに甘く濃密に満ちて滴っていった。
「薫、もっとよこせ」
「もうだめですよ」
「いいって」
「・・腫れても知りませんよ」
朝比奈の指が龍一郎の艶やかな黒髪に差し込まれ、より深く唇が重なり合う。
吐息も胸の鼓動も重なりあっていくのを感じながら、龍一郎は目を閉じた。
5月23日はアマドコロの日
そして、キスの日
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