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frown

当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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河童の川流れ

リクエストもらったのですが、ズレたような?

お題は「モブとヒロさん」

ちなみに、そういう描写は一切ないです。

2016.8.

「あ…」
伸ばした指先が重なった。
「すみません」
重なった指は僅かながら自分の方が上で、どうやら一瞬遅かったらしいと気がついた弘樹は本から手を離した。
「いいんですか?」
同じ本を選んだのは自分と同じくらいの年ごろの男で、眼鏡の奥からこっちの顔をジッと窺っている。
「…どうぞ」
本当は、長いこと探し続けてようやく見つけた本ではあったのだが、それは相手も同じだろう。
本を譲った男はまだこっちを見ている。自分がいたのでは買いにくいのかもしれないと別の棚へと向かいながら、弘樹は小さくため息を零した。
(縁がなかったな)
本との出会いは運のようなものがある。そう自分に言い聞かせて、気晴らしに暫く物色してみたが、掘り出し物に出会うこともなく、結局手ぶらで古書店を後にした。
緩く冷房の効いていた薄暗い店内から、8月も終わりだというのに容赦なく照りつける太陽の元へと出た弘樹はその眩しさに顔を顰めた。
「あの」
「なんですか?」
店の紙袋を下げた男が目の前に立った。
「あの本なんですけど」
「ああ、さっきの」
「もし、よかったらお譲りしますけど」
「えっ」
「その代わり」
願ってもいない申し出に喜びかけたが、もしかして法外な値段でも示されるんだろうか。
「なんですか?」
警戒した弘樹に出された条件は驚くほど拍子抜けするものだった。

***

「なんだか嬉しそうだな弘樹」
「ん?まあな」
「いいことでもあったのか?」
「ずっと欲しかった本が手に入った」
「どれだ?」
煙草をくわえながら身を乗り出した幼なじみに、手に入れたばかりの本を見せながら、弘樹はその本にまつわる話を教えてやった。
「それで、結局条件はなんだったんだ?」
「それがすげぇいい人でさ。本の代金の他に、コーヒーを奢ってくれたらそれでいいですって言うんだぜ」
「コーヒー?」
「だからそのまま喫茶店に行ってコーヒー飲んで本の話した」
「…それだけか?」
「そうだけど」
ため息をついた秋彦を弘樹は不思議そうに見つめた。
「お前、気をつけろよ」
秋彦の手が、がしゃがしゃと弘樹の髪の毛をかきまぜる。
「何がだよ」
「俺もそうそうお前を助けてはやれないからな」
「いつ俺がお前に助けられたってんだ」
「…スイカ」
ボソリと言われた言葉に子どもの頃の苦い思い出がよみがえる。
「いつの話蒸し返してんだよ!」
「弘樹は変わらないからな」
「人をガキ扱いすんなッ」
真っ赤になった顔を見ながら、ガキじゃないから心配してるんだがな、と秋彦は黙って煙を吐いた。
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女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中

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