frown
当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。
屋根よりも高く
- 2015/05/07 (Thu)
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秋彦と弘樹のこどもの日
ミニマムです
2015.5.6
ミニマムです
2015.5.6
見上げた青い空を縁どるきれいな緑色。
その緑の色が昨日よりまた少し濃くなっていた。
今日はいい風が吹き、秘密基地にはぽかぼかとお日様の光が降り注いできている。
そういえばお日様の光を浴びると背が伸びるんだった
うーんと腕と膝を伸ばすと俺は大の字になって身体中でお日様の光を受けとめる。背中越しに地面の暖かさが伝わり、鼻先には草と土の匂いが漂ってくる。
ガサッと枝が揺れる音がして見上げると、目の周りが白く囲まれている鶯色の鳥がとまっているのが見えた。
たしか、あれはメジロ。
最近覚えた鳥の名前に一人満足気な笑みを浮かべると、体育座りの格好で隣に座ってノートに鉛筆を走らせている秋彦の顔をそっと見上げた。
びっくりするほど長い睫毛が揺れ、綺麗な榛色の瞳が自分に向いた。
「弘樹、さっきからなにしてるの?」
秋彦が不思議そうな顔で聞いてきた。
「お日様の光を浴びると背が伸びるんだぞ」
大の字のままで得意げに答える俺を秋彦は不思議そうにみつめた。
「大きくなりたいの?」
「なりたいに決まってんだろ」
できることなら、クラスで一番になりたいとさえ思っているけれど、こればかりは努力だけでどうなるものではないらしい。
「弘樹はそのままでいいのに」
「なんでだよ。大きくなるように牛乳だって毎日たくさん飲んでるんだぞ」
「変わらなくてもいいよ」
秋彦は俺の頭に手を乗せて、ぽんぽんと叩いた。
大人が子どもを宥めるような動きに、ムッとした俺は頬をぷくりと膨らませた。
「子ども扱いすんな!」
「弘樹は子どもじゃないの?」
「〜〜〜〜〜〜〜うるさい!」
そう言って起き上がった途端、ぐうーと大きな音がした。
「え?」
俺たちは顔を見合わせて、それからどちらからともなくクスクスと笑った。
「すごい音だ」
「腹が減ったんだよ。そうだ、柏餅!」
「柏餅?」
今日言わなければならないことを思い出して叫んだ俺の顔を秋彦は不思議そうに見ている。
あんまり嬉しそうじゃないその表情になんだかちょっぴり不安になった。
「秋彦、もしかして柏餅嫌いか?」
「…食べたことない」
予想外の答えに俺は思わず声を張り上げた。
「はぁ?お前なんでも知ってるくせに柏餅食べたことねーの?」
そう言うと俺は寝そべっていたせいで身体中についた草をパタパタと手で払った。
「じゃあちょうどいいや。今からウチで柏餅食おうぜ」
「いいの?」
「秋彦の分まで用意してるから、連れてこいってうるさいんだよ」
そう言って歩き出すと、秋彦もノートをしまって立ち上がった。
俺は横に並んだ秋彦の頭のてっぺんを見つめた。
「なぁ、身長何センチになった?」
「え?そんなのわからないよ」
「そっか」
俺の方が少しでも大きいといいのに、そう思いながら並んでみても、あんまり違うようにも見えない。
いつもの穴をくぐり抜けると俺の家が見えてきた。
大きな鯉のぼりが風を受けて気持ち良さそうに泳いでいるのが塀の外からも見える。
「弘樹は鯉のぼりの意味知ってる?」
「意味?」
「うん。鯉は滝をさかのぼって竜になるんだって」
「へぇー、そうなのか」
そう言われて改めて鯉のぼりを見直す。
「だけど、本当にそれでいいのかな?」
「何が?」
「鯉は本当に竜になりたいのかな?」
秋彦は鯉のぼりを見つめている。
「よくわかんねーけど、とりあえず滝を登ればいいんじゃない?」
俺がそう言うと秋彦がビックリしたような顔をした。
「竜になりたいかわからなくても?」
「うん」
俺は鯉のぼりを見ながら言う。
「登らないのも、登れないのも、他の人から見たら同じだろ。なりたくないから先へ進まないなんて、なんだか登れなかった言い訳みたいで格好悪い」
「言い訳?」
「登ってから考えればいいんだよ。鯉のままでいるか、竜になるか。好きな方を選んだらいいんだよ」
俺なら止まらずに進むことを選ぶ。
「……弘樹ってすごいね」
秋彦に褒められて顔に血が上っていくのがわかった。
「すごいって…あ、あったりまえだ!俺は隊長なんだからな!」
「うん。そうだね」
「それより早く柏餅食べようぜ」
「うん」
俺はもっと大きくなりたい。
屋根よりも高いところで、風を受けて、気持ち良さそうにゆっくりと泳いでいる鯉のぼりを見上げた。
その緑の色が昨日よりまた少し濃くなっていた。
今日はいい風が吹き、秘密基地にはぽかぼかとお日様の光が降り注いできている。
そういえばお日様の光を浴びると背が伸びるんだった
うーんと腕と膝を伸ばすと俺は大の字になって身体中でお日様の光を受けとめる。背中越しに地面の暖かさが伝わり、鼻先には草と土の匂いが漂ってくる。
ガサッと枝が揺れる音がして見上げると、目の周りが白く囲まれている鶯色の鳥がとまっているのが見えた。
たしか、あれはメジロ。
最近覚えた鳥の名前に一人満足気な笑みを浮かべると、体育座りの格好で隣に座ってノートに鉛筆を走らせている秋彦の顔をそっと見上げた。
びっくりするほど長い睫毛が揺れ、綺麗な榛色の瞳が自分に向いた。
「弘樹、さっきからなにしてるの?」
秋彦が不思議そうな顔で聞いてきた。
「お日様の光を浴びると背が伸びるんだぞ」
大の字のままで得意げに答える俺を秋彦は不思議そうにみつめた。
「大きくなりたいの?」
「なりたいに決まってんだろ」
できることなら、クラスで一番になりたいとさえ思っているけれど、こればかりは努力だけでどうなるものではないらしい。
「弘樹はそのままでいいのに」
「なんでだよ。大きくなるように牛乳だって毎日たくさん飲んでるんだぞ」
「変わらなくてもいいよ」
秋彦は俺の頭に手を乗せて、ぽんぽんと叩いた。
大人が子どもを宥めるような動きに、ムッとした俺は頬をぷくりと膨らませた。
「子ども扱いすんな!」
「弘樹は子どもじゃないの?」
「〜〜〜〜〜〜〜うるさい!」
そう言って起き上がった途端、ぐうーと大きな音がした。
「え?」
俺たちは顔を見合わせて、それからどちらからともなくクスクスと笑った。
「すごい音だ」
「腹が減ったんだよ。そうだ、柏餅!」
「柏餅?」
今日言わなければならないことを思い出して叫んだ俺の顔を秋彦は不思議そうに見ている。
あんまり嬉しそうじゃないその表情になんだかちょっぴり不安になった。
「秋彦、もしかして柏餅嫌いか?」
「…食べたことない」
予想外の答えに俺は思わず声を張り上げた。
「はぁ?お前なんでも知ってるくせに柏餅食べたことねーの?」
そう言うと俺は寝そべっていたせいで身体中についた草をパタパタと手で払った。
「じゃあちょうどいいや。今からウチで柏餅食おうぜ」
「いいの?」
「秋彦の分まで用意してるから、連れてこいってうるさいんだよ」
そう言って歩き出すと、秋彦もノートをしまって立ち上がった。
俺は横に並んだ秋彦の頭のてっぺんを見つめた。
「なぁ、身長何センチになった?」
「え?そんなのわからないよ」
「そっか」
俺の方が少しでも大きいといいのに、そう思いながら並んでみても、あんまり違うようにも見えない。
いつもの穴をくぐり抜けると俺の家が見えてきた。
大きな鯉のぼりが風を受けて気持ち良さそうに泳いでいるのが塀の外からも見える。
「弘樹は鯉のぼりの意味知ってる?」
「意味?」
「うん。鯉は滝をさかのぼって竜になるんだって」
「へぇー、そうなのか」
そう言われて改めて鯉のぼりを見直す。
「だけど、本当にそれでいいのかな?」
「何が?」
「鯉は本当に竜になりたいのかな?」
秋彦は鯉のぼりを見つめている。
「よくわかんねーけど、とりあえず滝を登ればいいんじゃない?」
俺がそう言うと秋彦がビックリしたような顔をした。
「竜になりたいかわからなくても?」
「うん」
俺は鯉のぼりを見ながら言う。
「登らないのも、登れないのも、他の人から見たら同じだろ。なりたくないから先へ進まないなんて、なんだか登れなかった言い訳みたいで格好悪い」
「言い訳?」
「登ってから考えればいいんだよ。鯉のままでいるか、竜になるか。好きな方を選んだらいいんだよ」
俺なら止まらずに進むことを選ぶ。
「……弘樹ってすごいね」
秋彦に褒められて顔に血が上っていくのがわかった。
「すごいって…あ、あったりまえだ!俺は隊長なんだからな!」
「うん。そうだね」
「それより早く柏餅食べようぜ」
「うん」
俺はもっと大きくなりたい。
屋根よりも高いところで、風を受けて、気持ち良さそうにゆっくりと泳いでいる鯉のぼりを見上げた。
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プロフィール
HN:
さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中
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