【キス】

「たまにはヒロさんからキスして欲しいです」
「無理」
「ダメですか」
「しかたねぇだろ。俺はお前と違ってうまくねぇし」
「あの、俺ってうまいんですか？」
「あれだけ気持ちいいんだからうまいに決まってるだろ」
「ヒロさん！」
「うわっ、なに、ンん」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【バレンタインデー】

「ヒロさん、どうぞ」
「お前、コレあの有名なやつだろ」
「美味しいって聞いたんで」
「お前も並んだのか？」
「思ったよりすごい人でした」
「俺なんか途中で買うのやめようかと思ったぞ」
「え？」
「あ…」
「あの、もしかしてヒロさんも」
「悪ぃかよ」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【節分】

「お前どこ向いてんだよ。今年の恵方はこっちだろ」
「いいんです」
「いいわけねぇだろ。どうせ食うならちゃんと」
「俺にとっての恵方はヒロさんのいるところです」
「は？」
「俺のことは気にせずヒロさんは恵方を向いて食べて下さい」
「食いづれぇ…」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【センター試験】

いつもと同じ朝の空気のはずなのにぶるりと肩が震えた
『お前なら大丈夫だ』
言葉と一緒にもらったお守りを強く握りしめる
ぞろぞろと歩く人の中で大きく1つ深呼吸
ヒロさんがいる場所はまだ遠いけれど
俺は
止まらずに進まなければいけない
まずはその1歩を
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【お酒】

惚気酒も長ければ絡み酒だ
「幸せそうでなによりだが、そろそろ」
「羨ましいだろ〜」
「はいはい。だからもう」
「やんねーぞ。野分は俺のもんだ」
「だからそういう台詞は彼に聞かせて…おい、弘樹」
幸せそうな寝顔をツマミにグラスのワインを飲み干した
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【お正月】

「3日までに行けば初詣になるんだから」
「大丈夫です」
「いいから休め」
夜勤明けの野分をベッドに押し倒す
「お前は寝正月でいいんだよ」
「わかりました」
「よし」
「一緒に寝正月しましょうね」
「は？」
長い腕に抱きすくめられて新しい年が始まった
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【年末】

年賀状も出した
大掃除もした
「よし」
あとは静かにのんびりと過ごせるはずだったのに
「ただいまです！」
「お前、仕事じゃ…」
「休みになりました」
「嘘だろ」
「一緒に年越しできますね」
「ウソだろ」
押し倒されたソファーの中で2年分のキスをした
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【大切な人】

俺は何番目なんだろう
「1番大切なもの？」
「はい」
「お前はどうなんだよ」
「俺の1番はヒロさんです！」
「ンだよそれ。なら俺もお前に」
「本当ですか？」
「あっ、いやいや、今のはナシ。お前はものじゃねーし」
「じゃあ大切な人なら」
「うるせぇっ」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【お鍋】

「美味かった〜」
お猪口を持つ指先まで桜色に染まっている
「シメはうどんがいいですか？それとも」
「野分がいい」
「ヒロさん？」
「野分がいい」
誘うように笑う瞳に土鍋に蓋をして
「たくさん食べて下さい」
「ん」
寒い夜に感謝しながら熱い舌を絡めた
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【お風呂】

「背中流してやる」
眠りかけていた目に飛びこんできた白い身体に息を飲む
「どうしたんですか」
「年末サービスだ。お前最近疲れてるみたいだし」
「ありがとうございます」
あっという間に元気になっていく自分を泡で隠しながらキスのタイミングを計った
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負