【エプロン】

「おかえり。飯できてるぞ」
「エプロン…」
「あ、悪ぃ。お前の勝手に借りてた」
「よく似合います」
「は？」
「でもやっぱりヒロさんには黒より白の方がいいです。今度買ってきますね」
「いや、なにもわざわざ」
「フリルも白でいいですか？」
「あ？」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【暑】

「ただいまで…」
「おかえり」
腰にタオルを巻いただけの姿に息をのむ
「ヒロさん、そんな、ダメです」
「暑いし平気だ」
「無理です」
湯気の立つ肌を腕の中に閉じこめて
「だから暑いって」
「俺もです」
もっとあつくなりたいと濡れたうなじにキスをした
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【家】

「家を建てるなら絶対書庫は必要です」
「悪い」
「寝室を１つにすれば部屋数も問題ないです」
「いや、俺はゆっくり眠りたいんだが」
「大丈夫です。俺、すごくいいダブルベッド見つけました」
「無理だ」
「スプリングも丈夫ですし」
「そこじゃねぇっ！」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【子どもの日】

「これって」
柱に残る印には俺の名前と秋彦の名前がついている
「どっちが大きいか勝負してたからな」
隠すように柱に寄りかかる
「じゃあ俺とも勝負して下さい」
「お前の勝ちに決まってんだろ」
しょぼんとした顔を引き寄せて重ねた唇から柏餅の味がした
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【15周年】

「15年？」
「はい！」
「マジかよ。俺も歳をとるわけだ…」
こぼれたため息をすくい上げるように唇が触れてくる
「ヒロさんは出会った頃と変わらず可愛いです」
「お前はあいかわらずバカだ」
「はい」
ケーキにさしたロウソクの数だけキスが重ねられた
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【GW】

「のわ…」
本の山の中で寝ているヒロさんの寝言をキスで奪う
「え？」
「休みになりました」
「休み？」
「1日ですけど」
「じゃあちゃんと休まねーと」
「はい。ちゃんと補給します」
驚いて大きく開いた目元にも口づけて
ようやく重なった休日が始まる
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【過去】

冷たい手が肌をなぞる
目を閉じて思い浮かべるのはいつだって同じ顔なのに
身体の上に覆いかぶさっているのはいつも違う顔で
与えられる熱に身体は熱くなっていくのに
心の奥は冷えていく
たった1人の幼馴染の名前を呼んで
思い出したくもない夜が流れていく
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【当て馬】

「最近は例の彼氏とうまくやってんだな」
「彼氏って」
「すっかり当て馬にされちゃったなー」
「なんのことですか…」
「まあ上條は今みたいにツヤツヤしてるほうが俺も見てて楽しいし」
「人を見て楽しんでないでとっとと仕事して下さい！」
「怖ーい」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【髪型チェンジ】

「切ったんですね」
「ああ」
ゆっくりと手で髪を梳かれて目を閉じる
「美容師になればよかった」
「ん？」
「そうすればヒロさんの髪を他の人に触らせなくてすむのに」
「髪くらいいいだろ」
「ダメです」
頭のてっぺんにキスをされて髪の毛から痺れ始めた
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【学生】

「なんで法学部なんだ？」
「なんとなく」
久しぶりに同じ学校の門をくぐる
「お前は好きだから入ったんだろう」
「えっ？！」
「文学部」
「まあな」
本当に好きなのは何なのかを伝えることもできずに
散ってしまった桜を踏みながらまた新しい春が始まった
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負