【クリスマス】

野分の鞄から出てきたのは
「なあ」
真っ赤なワンピース
「これって…」
「先輩に貰ったんです」
「なんでまた」
「ヒロさんに似合うって」
「俺に？」
「着てみて下さい」
「着ねぇよ」
「サンタになったつもりで」
「どんなサンタだよ！」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【お酒】

「野分」
甘い吐息とともに唇が塞がれる
入りこんだ熱い舌に舌先を絡みとられて息が止まる
「ヒロさん、お水を」
「やだ。こっちの方がいい」
重ねられる唇に白旗を上げる
「もう好きにして下さい」
「する」
ニヤリと笑った顔に酔わされていく
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【ケモ耳】

「なんでこんな姿に」
「大丈夫です」
「お前は平気なのか？」
「寝たら戻るかもしれませんし」
「寝てられるか、ッん」
茶色の耳に落とされたキスに尻尾が震える
「猫のヒロさんも可愛いです」
「この馬鹿犬」
黒い尻尾が揺れる背中に爪を立てた
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【草間野分×上條弘樹】

慣れることなんてできやしねぇ
嬉しそうに笑う顔にも
「好きです」と言われることにも
何年たっても胸がドキドキするし顔も熱くなってくる
だけど、慣れさせてあげますって言ったのはお前なんだから
だからお前は責任を取って、もっと、ずっと…俺を
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【初雪】

静けさにそっとカーテンを開ける
「なに？」
「雪です」
「冷えるはずだ」
もそもそと布団にもぐりこむ額に口づけを1つ
「…もうしねぇぞ」
赤く染まる耳にも1つ
「野分」
「はい」
「寒ぃ…」
「はい」
冷えた寝室に吐息の雪が舞い降りた
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【秋】

「秋といえば」
「読書の秋」
「ヒロさんは一年中じゃないですか」
「いいだろ好きなんだから」
「俺は秋といったら食欲の秋ですよ」
「てめぇは何を食おうってんだ」
「いいじゃないですか。好きなんだから」
「クソガキ…」
「いただきます」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【鈴木さん】

抱きしめている腕を引き剥がす
「ヒロさん、帰りますよ」
「あっ、鈴木さんが」
「そんなにこの人が好きなんですか？」
とろんとした瞳が俺を見上げてへらりと笑う
「野分の方が好き〜」
酔った身体を受けとめながら、床に落ちたクマを睨みつけた
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【部屋着】

「似合います」
「なにが？」
「その服」
「これか」
一人の夜は寒かったから
そう言う間もなく抱きしめられる
とめたボタンは外されて
夜の空気に肌が震える
「寒い…」
囁きを合図に
脱ぎ捨てられた服を見ながら
冷えたベッドへもつれこんだ
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【アイドル】

「もう諦めろって」
「イヤです。なんで俺がこんなことを」
「それはほら『鬼の上條』だから」
「まさか…これ、鬼の格好なんですか？」
「だろ？ツノもあるし」
「それでトラ柄のビキニ……」
「大丈夫、似合ってっから！よっ文学部のアイドル」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

【食欲】

「秋ですね」
「だな」
「秋といえば」
「あ、ババァが梨送ってきてた」
「いいですね」
「帰ったら食おうぜ」
「はい」
夜の風に虫の声
「お腹空いてきちゃいました」
「…がっつくなよ」
逸る気持ちを見透かされて睨まれる
「秋ですから」
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負