9/10に

「いつまでもバカなこと言ってんじゃねぇよ」
「どうしてですか？」
「世界にはもっと大切なものがある」
「俺の世界には」
「お前の世界だって、もっと大きくなるべきだろ」
ヒロさんはすごい人だけど
「大きくなっても中心は同じです」
譲れないものはある
#9月は毎日がのわヒロ記念日

【草間野分・羽鳥芳雪】

もしもこの手につかむことができるなら
嬉しそうに食べている顔も箸を持つ手もその心さえも、何もかも全てをこの手におさめ、誰の目にもふれないところへとしまいこみたい
でも今はとりあえず
「美味かった」
その胃袋だけでもつかみとっておこう
#セカロマ深夜の真剣文字書き60分一本勝負

9/9

「じゃあ、どこが好きか教えて下さい」
「は？」
可愛い、なんて思った俺がバカだった
「お願いします」
「勝手に考えろよ」
「ヒロさんが好きなところが知りたいんです！」
「なんでだよ」
「決まってるじゃないですか。俺の世界の中心はヒロさんだからです」
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/8

「あの、ヒロさん、さっきの…本当ですか」
「なんのことだ…」
「俺の顔が好きだって」
「ンなこと言ってねぇ」
「そうですか」
あからさまにショボンとしやがった野分の額をビシリと指で弾く
「顔だけじゃねぇっての」
珍しく赤くなった顔も悪くないと思った
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/7

突然長い腕に捕らえられる
「お前、いつから起きて」
強く抱きしめられて息がつまる
「嬉しくて…死にそうです」
「なっ、」
恥ずかしさと苦しさに俺の方が息が止まると思ったけれど
「ありがとうございます」
あんまりにも嬉しそうな笑顔にうっかりと見惚れた
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/6

重ねた唇を離して、穏やかな寝顔を眺める
真っ直ぐに伸びた鼻梁、微かに揺れる睫毛
いつも見られてばかりだけど本当は俺だってちゃんと野分の顔を見たい
「顔も好き…なんだよな」
ポツリと呟くと目の前の頬が赤くなる
「えっ？」
俺は真っ黒な瞳にのみこまれた
#9月は毎日がのわヒロ記念日

９月は毎日がのわヒロ記念日、ということで

９月の野分月間の間、ツイッターにて１４０文字をしております。うまく９月３０日にまとまるとよいのですが。
また、プライベッターなどの上げていた古いものをこちらにも上げてみたりしています。（恥ずかしい限りですが）

Midsummer

木瀬さん、お誕生日おめでとうございます。パラレル、もしくは、甘々、というリクエストの答えがこれかよ、という気がしなくもないですが、お納め下さいー。

( 2016.8  初出）

9/5

そうっと覗きこんだ部屋で耳をすます
規則正しい寝息にゆっくりと忍び寄り、少し伸びすぎた前髪を指で梳く
「ヒロさん」
不意に名前を呼ばれて息が止まった
「好きです」
ふにゃりと笑う顔はどこか幼く見えて
「夢の中でもそれかよ…」
眠るその顔にキスをした
#9月は毎日がのわヒロ記念日

9/4

「よし」
干し終えた洗濯物が陽の光を浴びて揺れる
野分の服の間に挟まると自分の服はやけに小さく見えてむうと口を尖らせた
悪戯な風にはためいた野分のシャツが俺のワイシャツを抱きしめる
「服までナマイキだ」
自分のより長いその袖を解いてビシリと弾いた
#9月は毎日がのわヒロ記念日