何の日 9月5日 2016

石炭の日
息が上がって倒れこむ
「も、無理…」
「大丈夫です」
励ますように大きな手が動く
「いきますよ」
黒く光る塊は入れられるたびに熱を持って激しく燃え続ける
「まだ先は長いです」
日の出とともにたどり着くのはどこなのか、わからないまま走り出した
#1日1のわヒロ

何の日 9月4日 2016

オークションの日
「特に価値のある物なんて持ってませんよ」
「あ、あれだ！あれを出してみろ」
「なんですか？」
「上條を抱き枕にする権利」
「は？」
「絶対イイ値がつくぞ」
「絶対イヤです」
「そーか、やっぱり俺だけの抱き枕でいたいのかー」
「教授…」
#1日1のわヒロ

何の日 9月3日 2016

ベッドの日
シーツと枕とマットレスと
たったそれだけなのに
「ヒロさん」
まるで違った人のようになる
「野分…」
いつまでもここに閉じこめていたなら
自分以外の人を見ることもない
そんな薄暗い想いとともに
「好きです」
ギシリと深く身体を沈ませていく
＃1日1のわヒロ

何の日 9月2日 2016

くつの日
「お前のもやってやろうか？」
「いいんですか？」
「おう、早く出せ」
「じゃあ…お願いします」
「でけぇな」
「すみません」
「別に悪いことじゃねぇし」
腕まくりした後ろ姿を抱きしめる
「ンだよ？」
「靴のお礼にヒロさんは俺が磨きますからね」
#1日1のわヒロ

何の日 9月1日 2016

防災の日
「ヒロさん？どうしてここに」
「あっ、こ、これはあれだ。俺の部屋に本雪崩が起きた時のための、避難訓練だ！」
「はい」
「…喜んでんじゃねぇ」
「じゃあ俺も訓練をします」
「へ？」
「今から人工呼吸の練習を」
「てめぇは医者だろーが、っん…」
#1日1のわヒロ

何の日 8月31日 2016

野菜の日
「疲れてんのにそんなことしなくても」
「ヒロさんにはちゃんと食べてもらわないと」
「食ってるし」
「冷蔵庫空っぽでしたよ」
「俺よりお前の方が足りてねぇ顔してるぞ」
「そうですね」
「だろ？お前こそちゃんと食え」
「じゃあ…遠慮なく」
「？」
#1日1のわヒロ

何の日 8月30日 2016

冒険家の日
目指すものはたった１つ
そびえ立つ本の山を通り抜け
「やめろ」
固い扉をゆっくりと開けて
「イヤだ」
冷たい言葉を溶かしながら
「見るなって」
ひたすらに進んでいく
「ヒロさん」
たどり着いた先にあるのは
柔らかくて熱い、驚くほど甘い世界
＃1日1のわヒロ

何の日 8月29日 2016

焼き肉の日
「なんで先輩がいるんですか…」
「元はと言えば俺のオススメの店だろ」
「そうですけど」
「あ、上條さん。この肉、ちょうどイイ感じですよ」
「あ、はい」
「やっぱ、焼き肉は距離が縮まりますねー」
「は？」
「先輩、勝手に縮めないで下さい！」
＃1日1のわヒロ

何の日 8月28日 2016

気象予報士の日
新しいパジャマを着せて、ことんと眠りに落ちた身体を抱きしめた
ひんやりとした足が絡みつく
「…野分」
「ヒロさん？」
「野分」
ふわりと綻んだ顔を胸元に閉じこめる
「明日は雨かな…」
柔らかな髪を指で梳いて、つむじに唇をおしつけた
＃1日1のわヒロ

何の日 8月27日 2016

「男はつらいよ」の日
「泣いてるんですか？」
「泣いてねぇよ」
「でも」
「俺には妹なんていなくてよかったって思っただけだ！」
「妹、ですか…」
「何だよ…その顔」
「だってヒロさんの妹ですよ」
「は？」
「可愛いですね」
「勝手に想像すんじゃねぇ！」
＃1日1のわヒロ