何の日 4月8日 2016

参考書の日
「なにこれ？」
「参考書の」
「いらねーよ」
「でも…」
「ガキから金はとらねーよ」
鉛筆をギュッと握りしめる
「あれだ、出世払い」
「えっ？」
「大人になったら払いやがれ」
「はい」
未来の約束に背中を押されて、俺は新しい参考書をめくった
#1日1のわヒロ

何の日 4月7日 2016

世界保健デー
「いいって」
「ダメです。ちゃんと調べた方が」
「だから大学で健診受けてるし」
「俺もヒロさんの健康状態を直接」
「お前っ、ヤダ、やめろ」
「大丈夫です」
「んなこと言って、てめぇはどこ触ってんだよ」
「安心して下さい」
「できるか！」
#1日1のわヒロ

何の日 4月6日 2016

白の日
秘密基地から見えた空が毎日違うように
俺たちも同じままではいられない
「眠い」
ベッドに倒れこむように眠る秋彦からは煙草の匂いがする
俺だってあの頃とは違う
それでもコイツの本当の色は変わってはいない
俺だけの透明な白を今日もただ黙ってみつめた
#1日1のわヒロ

何の日 4月5日 2016

ヘアカットの日
前髪をかきあげる仕草にどきりとする
「ずいぶん伸びたな」
「切りに行く時間がなくて」
「ちゃんとしとけよ」
「やっぱり変ですか？」
「つか医者なんだから清潔感が大事だろ」
「そうですね」
顔が見える方が好きだとは言わずに黒髪をかきまぜた
#1日1のわヒロ

何の日 4月4日 2016

幸せの日
「ヒロさん」
包みこむように腕がまわされる
「んだよ」
「なんでもないです」
「なんでもねーのかよ」
「ただ」
「ん？」
「幸せだなぁって思って」
「お前な」
お前よりずっと俺の方が
「…アホ」
それくらい察しろと、後ろを向いてキスをした
#1日1のわヒロ

何の日 4月3日 2016

インゲン豆の日
「あ」
小さな花びらが重箱の胡麻和えに舞い降りた
「満開だな」
「そうですね」
揺れる枝を見上げる
「きれいだな」
「きれいです」
肩に乗った花びらをつまみ上げる
「桜が…」
「桜もきれいです」
桜の色に染まる頬を温い風が撫でていった
#1日1のわヒロ

何の日 4月2日 2016

こどもの本の日
「あの話は本にしねーのか？」
「どれのことだ」
「クマ隊長の話」
「懐かしいな」
「また読みてぇ」
「あれは二人だけの話だからな」
「そっか」
鈴木さんを抱えて目を閉じる
「飲み過ぎだぞ」
「うるせー」
飲まずにはいられない時もある
#1日1のわヒロ

何の日 4月1日 2016

エイプリルフール
「野分、上條さん来てるぞ」
「はいはい」
「行かないのか？」
「先輩…何回騙したら気がすむんですか」
「ふーん。じゃあ俺があの人で遊んでこよっと」
「えっ？！」
「野分は会いたくないって言ってますって言おうかなー」
「やめて下さい！」
#1日1のわヒロ

何の日 3月31日 2016

エッフェル塔落成記念日
「なんだか新婚旅行みたいですね」
「みたいっていうか周りそんなやつばっかじゃねーかよ」
「大丈夫です。フランスでもヒロさんが1番可愛いですよ」
「お前は本当に…」
恋の街で囁かれる甘い言葉に騙されたふりをしてそっと手を繋いでみた
#1日1のわヒロ

何の日 3月30日 2016

マフィアの日
「お前サングラスやめろよ」
「どうしてだ？」
「そのスーツにこの車だろ。ヤバい人に間違えられるって」
「それを言うなら弘樹の方だ」
「どこがだよ」
「黒いボディガードが張りついてる」
「宇佐見さんこんにちは」
「ほらな」
「これは違うッ」
#1日1のわヒロ