何の日 2月28日 2016

バカヤローの日
俺はいつも言葉が足りないようだけど
聞き取る能力はちゃんとある
「ヤダ…」
ここでは嫌だってことですね
「やめろって」
はい、もっと頑張ります
「…バカヤロー」
俺もヒロさんのことが好きですよ
照れ屋な言葉ごと抱きしめて、その口を塞いだ
#1日1のわヒロ

何の日 2月27日 2016

冬の恋人の日
「野分…寒ぃ」
冷たい風が吹きつけるこんな夜は、その背中に『抱きしめろ』の文字が浮かび上がる
「はい」
包みこむように腕をまわす
会えなかった時間を埋めるように
会えない時間を乗り越えられるように
冷え切った窓ガラスが二人の熱で曇るほどに
#1日1のわヒロ

何の日 2月26日 2016

脱出の日
「逃げられると思ってるんですか？」
「てめぇ…」
潤んだ瞳に睨みつけられてゾクリと震える
繋いだ身体を揺すり上げる
分かっている
逃げられないのは俺の方だ
甘い声を立てさせて
背中にしがみつかせて
このまま出口のない部屋に閉じこめたいほどに
#1日1のわヒロ

何の日 2月25日 2016

夕刊紙の日
珍しい
テーブルの上に置かれていたカラフルな紙面をめくる
「どうした？」
「ヒロさん…こういうの好きなんですか？」
「すごいだろ！」
このサッカー選手が？
まさか、水着姿の女の人？
「宇宙人の化石発見だって」
その信じやすさがスクープ級です
#1日1のわヒロ

何の日 2月24日 2016

鉄道ストの日
街灯に照らされたシルエットへと駆け寄る
「遅れてすみません」
「いや、俺も今来たとこ」
「えっ？」
触れた肩は冷え切っていて
「あれだ…電車が止まってた」
「あの…」
「行くぞ」
優しい嘘を吐くその舌を今すぐにでも絡め取ってしまいたかった
#1日1のわヒロ

何の日 2月23日 2016

風呂敷の日
「これは？」
「ババァが置いてった」
家紋が染め抜かれた風呂敷包みを広げる
「着物なんて着ないって言ったのに」
「着てみて下さい」
「めんどくせぇ」
「大丈夫です」
シャツのボタンに手がかけられる
「洋服も着物も脱がすのは俺がやります」
#1日1のわヒロ

何の日 2月22日 2016

猫の日
静まり返った暗い部屋でぱちりと目を覚ました
ふぁあとあくびを一つ落として足音を立てずに歩き出す
向かうのは一番好きなところ
どんなときでもあったかくておひさまの匂いのするところ
そっともぐりこんで顔をこすりつける
抱きしめられてまた目を閉じた
#1日1のわヒロ

何の日 2月21日 2016

日刊新聞創刊の日
「おはようございます」
やけに嬉しそうな野分の顔
「おはよ」
やけに痛む俺の頭
「大丈夫ですか？」
「頭痛い」
「飲みすぎです」
「喉も腰も痛い」
「…覚えてないんですか？」
何を、とは聞けずに、手にした新聞をばさりと広げて顔を隠した
#1日1のわヒロ

何の日 2月20日 2016

アレルギーの日
「俺のこと、ニガテですか？」
「…別に」
「一度検査してみますか？」
「検査？」
「そ、近づいても別に害はないってことを医学的に証明しますよ」
「どうやって」
「肌に直接つけてですね」
「先輩！ヒロさんに変なことしないで下さい」
#1日1のわヒロ

何の日 2月19日 2016

プロレスの日
腕が首に絡み、足が腰を締めつける
「どうだ」
「痛いです」
「ガキの頃教わったんだ」
「誰にですか？」
「誰だったかな」
スルリとはずして組み伏せる
「あっ」
「俺も得意ですよ」
「寝技だけだろ」
「試しますか？」
長い1本勝負が始まる
#1日1のわヒロ