何の日 2月8日 2016

つばきの日
薄暗い部屋に浮かぶ白い頬に手を当てる
赤く濡れた唇がまるで雪の中に咲く花のように見えた
冬の寒さの中に咲き誇る姿に見惚れつつ健気に震える花弁を貪るように喰む
甘い香りをまき散らしながらぽとりと音を立てて俺のもとへと落ちてくるまで
何度でも
#1日1のわヒロ

何の日 2月7日 2016

フナの日
「野分、落ち着け」
「無理です」
「…こういうのってなんて言うんだろうな」
「理科室のフナ、ですかね」
「は？それを言うならまな板の鯉だろ」
「ちゃんと分かってるんじゃないですか…ベッドの上のヒロさん」
「てめぇ」
「もう逃げ場はないですよ」
#1日1のわヒロ

何の日 2月6日 2016

抹茶の日
「苦い」
「無理して飲まなくても」
「でも」
「甘いものでも食うか？」
「はい！」
「たしかここに、、んんっ」
「…甘い」
「野分…いつまでも俺がお前に甘いと思うなよ」
「じゃあもう一度確かめます」
「えっ？ちょっ、そういう意味じゃねぇっ」
#1日1のわヒロ

何の日 2月5日 2016

笑顔の日
「教授、やっぱり無理です…」
「やればできるって」
「でも」
「上條、これも仕事だ」
「わかりました」
「もっと力抜いて」
「こう、ですか？」
「いい感じだ」
「早くして下さい」
「また眉間に皺入ってるぞ」
「本当に俺の写真必要なんですか？」
#1日1のわヒロ

何の日 2月4日 2016

西の日
「また占いですか」
「当たるんだって」
「はいはい」
「今日は西に向かうと幸運に巡り会えるってさー」
「西、ですか」
「悩むな悩むな。西でも東でも行ってこい」
「は？」
「会いたいんだろ？」
「俺は別に…」
「ほらほら早く彼氏に幸せ届けてこい」
#1日1のわヒロ

何の日 2月3日 2016

節分
「上條〜無理すんなよ」
「無理じゃないです」
「いやどう見てもお前の口には入りきらないって」
「バカにしないで下さい。これくらいいつだって」
「…恵方巻きって年に一回だぞ」
「いや、それは、その」
「あーはいはい。学生たちが見てるから早く食えよ」
#1日1のわヒロ

何の日 2月2日 2016

頭痛の日
「よかったです」
「よくねーよ」
「えっ！？どこが」
「全部」
「そんな…ちゃんとヒロさんの善いところを」
「ここがどこか考えろ！バカ」
「玄関ですけど」
「もういい、頭イテェ」
「あっ、風邪引くといけないから一緒にお風呂に」
「入らねぇよ」
#1日1のわヒロ

何の日 2月1日 2016

ニオイの日
「おい…離れろよ」
「もう少し」
「なんなんだよ」
「10日ぶりなので」
「何でそんなところを」
「いい匂いです」
「しねーよ」
「します」
「ったく、どいつもこいつも…」
「どいつもこいつも？」
「ん？」
「どこのどいつか聞かせて下さい」
#1日1のわヒロ

何の日 1月31日 2016

愛妻の日
「今から帰ります」
「おう」
「あの、何か欲しい物とか」
「いや、別にない」
「本は？」
「給料日に買いこんだばかりだし」
「えっと、じゃあ何か食べたいものは」
「野分」
「はい」
「いいから」
「でも今日は」
「いいから…早く帰ってこい」
#1日1のわヒロ

何の日 1月30日 2016

3分間電話の日
「もしもし」
受話器から聞こえる少し低い声
「…野分？」
「はい」
「どうした？」
ただその声が聞きたくて
「好きです」
「ばっ、バカか！」
3分間のヒロさん補給
大きく息を吐いて白衣の襟を直す
あと少し
子どもたちのもとへと歩き出した
#1日1のわヒロ