何の日 1月19日 2016

空気清浄機の日
「おっ、動きだしたぞ！」
子どものように目を輝かせている
「どうだ野分、何か変わったか？」
振り向いたその顔ごと抱きしめる
「いい匂いです」
ゆっくりと胸の奥深くまで、息を吸いこむ
ヒロさんといれば、それだけで、どんな空気も甘く切ない
#1日1のわヒロ

何の日 1月18日 2016

都バス記念日
「ほら、ヒロさんの大学が見えてきましたよ」
「野分…俺は毎日見てんだって」
「あっ、そうですよね。すみません」
「何をそんなに浮かれてんだよ」
「だって」
いつもの街だけど
「ヒロさんと一緒だから」
「言ってろ」
流れる景色も違って見える
#1日1のわヒロ

何の日 1月17日 2016

おむすびの日
「おっ？！野分は弁当かー」
「はい」
「って、またずいぶんとすごいサイズだな」
「あげませんよ」
「まさか、上條サンが握ったのか？」
「はい」
「へー…あの人って意外と男らしいんだな」
「あげませんからね！」
「お前、ソレ全部食うのか？」
#1日1のわヒロ

何の日 1月16日 2016

禁酒の日
「お水です」
赤い頬がふわりと緩む
「ありがと」
差し出した手に熱い吐息がかかる
「大丈夫ですか？」
「気持ちイイ」
見上げる瞳は潤んでいて
「本当に…」
飲まないで、なんて我儘な願いを唇に注ぎながら抱きしめる
「のわ」
甘い声に酔いながら
#1日1のわヒロ

何の日 1月15日 2016

いちごの日
「ケーキ食ってんのか」
「なんだか甘い物が欲しくなって」
「疲れてるな研修医」
「かわいいですよね…白いクリームに赤いイチゴ」
「かわいい？」
「ヒロさんみたいです」
「へー」
「ヒロさんの方が甘いんですけどね」
「お前相当疲れてるな…」
#1日1のわヒロ

何の日 1月14日 2016

愛と希望と勇気の日
あの日まで
俺はいったいどうやって歩いてきたのだろうか
流れる涙に衝き動かされて手を伸ばす
この人は俺のなんなんだろう
その答えを知るために
決してこの手を離してはいけないということだけは知っていた
それが愛というものだとも知らずに
#1日1のわヒロ

何の日 1月13日 2016

タバコの日
「ありがとな弘樹」
「ったく、いい加減ウチを避難場所にするのはヤメロ」
アパートのドアが閉まり静けさが落ちる
残された煙草の吸いさしを口にする
「まずッ…」
こんなもののどこがいいのか
あんなヤツのどこが好きなのか
答えはいつも出やしない
#1日1のわヒロ

何の日 1月12日 2016

スキーの日
「だからスキーに行きましょう！」
「さっぱり意味がわからねぇんだが」
「ゲレンデだと普段よりかっこよく見えるそうです！だから」
「却下だ」
「ダメ…ですか」
「ったく、そのままで十分だろ」
「ヒロさん、それって…」
「あっ？！今のなし！」
#1日1のわヒロ

何の日 1月11日 2016

成人式
「和服はやめたのか？」
「やってられねぇよ」
「よく着てただろ」
「ガキの頃はな」
「似合ってたぞ」
「アホ」
「本当のことだ」
「そーいやババアが秋彦と写真撮りたいってさ」
「変わらないな」
子ども時代に別れを告げに、俺たちは並んで歩き出した
#1日1のわヒロ

何の日 1月10日

110番の日
「鍵を盗んだだろ」
「はい」
「勝手にアパートに入っただろ」
「はい」
「お前のやったことは立派な犯罪なんだからな」
「すみません」
だけど全部ヒロさんが悪いんです
「一生かけて償います」
あの涙を見た瞬間から
俺はもう捕らえられている
#1日1のわヒロ