何の日 6月14日

世界献血者デー
「ご協力をお願いします」
呼びかける声に俯きながら足を速めた
『6ヶ月以内に男性同士の性的接触があった』
俺はこれから先もすることはできない
何も悪いことをしたわけではない
ただ愛する人がいるからという理由
血の一滴さえもお前のものだ
#1日1のわヒロ

何の日 6月13日

無意味の日
なにも産み出さない
それでも
求める気持ちも
与えられる熱も
繋がる喜びも
確かにそこにある
溶け合う身体と
震える心は決して
偽りの命ではない
生まれる生命はなくとも
そこに愛があるのならば
他になにもいらない
意味なんてなくてもいい
#1日1のわヒロ

何の日 6月12日

日記の日
「交換日記したいです」
「却下」
「だめですか？」
「どうせお前は毎回可愛いとか好きとかばっかり書いてくるんだろーが。そんなの読まされる俺の身にもなれよ」
「ヒロさん…」
「え？あ、いや違う、今のはナシ！」
「書かなくても伝わってましたね」
#1日1のわヒロ

何の日 6月11日

傘の日
「また忘れたんですか」
濡れて素肌にはりついたワイシャツ
髪の毛からも雫が滴っている
「大丈夫ですか？」
「無事だった」
嬉しそうにジャケットで包んだ本をみつめている
タオルで包んだ身体ごと後ろから抱きしめた
「心配してるのは本じゃないです」
#1日1のわヒロ

何の日 6月10日

時の記念日
『もうすぐ着きます』
何年たっても変わらないメールに呆れながら返信をする
それでも
変わらないことを嬉しいと思うべきかもしれない
きっとまた同じ笑顔で走ってくる
あの日と同じ場所で、雪の代わりに暑い陽射しを浴びながら俺は時計塔を見上げた
#1日1のわヒロ

何の日 6月9日

胸キュンの日
「ヒロさん！」
夕日を背負うように走ってくる手足の長いシルエット
「遅くなりました」
荒い息を整えながら笑いかけてくる顔
「…ヒロさん？」
「行くぞ」
「どうしました？」
「別に」
顔が赤いのはこの夕日のせいだ
別にお前のせいじゃない
#1日1のわヒロ

何の日 6月8日

成層圏発見の日
飛行機の窓から見た景色は一面の白い雲が広がっている
日本は晴れてるんだろうか？
俺の出したハガキは届いたんだろうか？
ヒロさんは今頃何をしているんだろうか？
待っててくれてるんだろうか？
空港で買ったパンダの人形を俺はそっと握りしめた
#1日1のわヒロ

何の日 6月7日

プロポーズの日
「先輩にお願いするべきかなぁ？」
「津森に何を頼むんだよ」
「ヒロさんは宇佐見さんですか？」
「秋彦？」
「それとも宮城教授ですか？」
「おい野分、さっきから何のこと言ってんだ？」
「知らないんですか？婚姻届には証人がいるんですよ」
#1日1のわヒロ

何の日 6月7日

むち打ち治療の日
「教授どうかしたんですか？」
「ああ、昨夜おかま掘られてな。イテテ」
「へぇ…」
「…上條？」
「はい」
「誤解してないよな？」
「何をですか？」
「言っとくが俺のは車の事故だからな」
「わかってますけど。つか俺のはって何ですか！」
#1日1のわヒロ

何の日 6月6日

ロールケーキの日
「おかえりなさい」
「野分！？」
手にしたコンビニの袋をそっと後ろに隠す
「夕飯まだですか？」
「まだだけど」
「じゃあ一緒に食べられますね」
「ん」
「すぐできますから」
「悪ぃ」
「だから、それはデザートにして下さいね」
「…」
#1日1のわヒロ