何の日 12月12日

漢字の日
あの頃、俺が知らなかった言葉をたくさん知っていたくせに
どうして分からないんだろう
どうして気づいてくれないんだろう
お前が俺の中に入りこんでしまっていることを
「不法侵入」
ボソリと呟いた声は決して届くはずはなく一人の部屋にしみこんでいった
#1日1のわヒロ

何の日 12月11日

胃腸の日
1番最初に捕まったのはきっとここだから
「美味い」
「よかったです」
湯気の向こうで笑う顔
「たまにはお前の好きなもの作れよ」
「ヒロさんと食べるとなんでも美味しいです」
盛大に噎せながら自覚する
捕まえられた胃もココロも逃れることはできない
#1日1のわヒロ

何の日 12月10日

アロエヨーグルトの日
「忙しくてもちゃんと食べて下さいね」
「わかってるって」
「明日は俺が作ります」
「明日って、お前、夕飯まだだろ」
「夕飯よりヒロさんがいいです」
「てめぇこそちゃんと食えってんだ」
返事の代わりに塞いだ唇は甘酸っぱかった
#1日1のわヒロ

何の日 12月9日

国際腐敗防止デー
「やめとけ」
「上條先生」
「バカな真似はよせ」
「俺、どうしても欲しいんです」
「こんなことしてもムダだぞ」
「先生…」
「俺は絶対受けとらねぇからな」
「わかりました…単位は諦めます」
「ったく、なにがお歳暮だよ。ふざけやがって」
#1日1のわヒロ

何の日 12月8日

針供養の日
「ダメですか？」
「てめぇがいつ折れたっていうんだよ、縁起でもねぇ」
「もちろん折れてはいませんけど」
「だろ？」
「でも俺だいぶくたびれてますし」
「どこがだよ…」
「柔らかいものにさすといいって」
「俺は豆腐でもコンニャクでもねぇ！！」
#1日1のわヒロ

何の日 12月7日

クリスマスツリーの日
「二人でやることでもねーだろーが」
「年に1度ですからね」
「ガキかよ」
渡した星を野分がてっぺんにつける
「できました」
「よし、電気消してみろ」
色とりどりの光が瞬く
「きれいですね」
浮かび上がるのは欲しいと願っていた幸せ
#1日1のわヒロ

何の日 12月6日

音の日
ゆるやかな息づかいを感じながら近づいていく
いつもは冷え切っている寝室も今夜は温かい
「…ん」
何かを呟いた口元へと寄せた頭へ腕が巻きついてくる
「ヒロさん…」
胸の中に閉じこめられる
二つの心臓の音を重ねながら、二つの吐息が混じり合っていった
#1日1のわヒロ

何の日 12月5日

バミューダトライアングルの日
「秋彦？！こんなところでなにを」
「お前こそ」
「俺は…」
「ヒロさん！」
「なるほどデートか」
「デートじゃねぇ」
「デートです」
「野分ッ！」
「じゃあまた今度ゆっくりとな弘樹」
「秋彦っ！！」
#1日1のわヒロ

何の日 12月4日

血清療法の日
苦しくて切なくて胸をかきむしる
この不治の病を治せるものがあるのだとしたら
きっと
この病を与えた貴方の持つ毒だけなのだろうと
その滑らかな首すじに唇をあてる
本当は知っている
俺は
治ることなど願ってはいない
ただ貴方が欲しいだけ
#1日1のわヒロ

何の日 12月3日

カレンダーの日
「どれにする？」
真剣な横顔をみつめる
「お前も選べよ」
「なんでもいいです」
「お前のでもあるんだぞ」
「じゃあ、そのパンダで」
「これか？」
来年はもっと同じ時間が過ごせますように
祈るような思いとともに新しいカレンダーを抱えた
#1日1のわヒロ