何の日 11月3日

みかんの日
「寒いな」
「急に冷えてきましたね」
「なあ今年こそコタツ買おうぜ」
「ヒロさん絶対コタツで寝ちゃうでしょ」
「ガキ扱いすんな」
「風邪引かせるわけにはいきません」
「じゃあ…お前で我慢してやる」
「はい」
「みかんも剥けよ」
「はい」
#1日1のわヒロ

何の日 11月2日

キッチン・バスの日
「冷たっ…」
ワイシャツ越しに伝わるステンレスに眉を顰めた
「すみません」
慌てて離れようとした熱と重みが惜しくて、そっとパーカーの裾を握りしめた
「…続きはあたたかいところで」
甘い囁きにあてられて、入る前から頬が上気していく
#1日1のわヒロ

何の日 11月1日

犬の日
じっと待っているのはいつだって俺のほうで
あんなヤツが忠犬なワケがない
それでも
「すみません！」
息急き切って一直線に走ってくる姿と俺に向けられる笑顔を見るたびに、ないはずのシッポが見えてくる
「重症かも…」
「え？」
「なんでもねぇよ」
#1日1のわヒロ

何の日 10月31日

ハロウィン
「秋彦！コレはいったいなんなんだよ」
「コーヒーの礼だ。遠慮するな」
「いらねぇよ！どいつもこいつも同じモノよこしやがって」
「なんだもう持ってるのか？」
「だから貰ったんだよ」
「つけないのか？」
「なんで猫耳つけなきゃなんねぇんだよ」
#1日1のわヒロ

ハロウィンなのわヒロ

「トリックオアトリートです」
「なんだよお前まで」
「ヒロさんもう誰かに言われたんですか？」
「いや別に誰にも…」
「お菓子くれないヒロさんにはコレをあげます」
「…コレって」
「病院で着たんですけど」
「あいつか？」
「いえ俺が」
「野分が？」
「はい」
「でかいナースだな」

ハロウィンな小児病棟

「トリックオアトリート」
「先輩、俺さすがにコレはちょっと」
「安心しろ、似合ってる」
「俺にはスカートが短いですよ」
「子どもにウケてよかったな」
「なんか足がスースーします」
「あ、ソレ、終わったら持って帰っていいぞ」
「本当ですか！頑張ります！」
「その意気だ、草間婦長」

ハロウィンなM大

「トリックオアトリート〜」
「何してるんですか…」
「トリートだ上條〜。俺を癒せ〜」
「抱きつかないで下さい。それでなくても今日は色々と」
「色々って、なに？」
「なんでもありません…早く離れて下さい」
「教えろよ〜」
「教授、カボチャ持って例のあの子が来ましたよ」
「？！」

何の日 10月30日

初恋の日
「うまくいかないもんだな」
何もかももっているコイツでさえ手に入らないものはある
「何年片想いしてんだよ」
口にした皮肉は自分へとはねかえる
1番近くにいるのに通じない
1番近くにいるから伝えられない
この恋の出口はどこにあるんだろう
#1日1のわヒロ

何の日 10月29日

ホームビデオ記念日
小さな手が鍵盤の上で踊る
最後の音符が鳴り響く
テレビ画面の前で立ち上がって拍手をした俺の頭に本が当たった
「お前、大袈裟…」
「素晴らしかったです！」
もう一度、再生ボタンを押す
小さなヒロさんがピアノの前でぺこりとお辞儀をした
#1日1のわヒロ

何の日 10月28日

速記記念日
「どの問題だ？」
揺れる茶色の髪の毛
「これかー」
上目遣いになる瞳
「ここ読んだか？」
参考書を指す白い指
「分かったか？」
説明する赤い唇
「お前ちゃんとノートとったか？」
みつめながら書いていた「可愛い」の文字をそっと隠した
#1日1のわヒロ