frown
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年賀状
Twitterで、のわヒロの年賀状の話をしてて思ったことを、書いてみました。
またもや、短いですが、、季節ものということで。
2015.1.11
玄関のドアを開けると思ったよりも冷たい風が吹きつけてきて、肩を竦めた。
「寒っ」
羽織ったカーディガンの前を閉じて、早足でエレベーターへと向かう。
1階で降りると郵便受けを開けて、いつもより分厚い新聞と、葉書の束を手にすると、またエレベーターに乗りこんだ。
手にした葉書の束の一番上の「草間野分様」の文字に、ふっと頬が緩んだ。
新聞を読むのは後回しにして、リビングのテーブルで年賀状の仕分けをする。
野分、野分、俺、野分、俺、と宛名を見ながら分けて積んでいく。
毎年のことながら、野分宛のは、女の名前の年賀状が多い。
憮然としながらも、職場の看護師なんだろうと、勝手に決めつけて分けていく。
草間野分様と上條弘樹様の連名の葉書を見つけて、思わず眉をひそめる。
あのヤロー、、。
裏返して差出人を見ると、案の定、野分の指導医の津森からだった。
『上條さん、今年もよろしくお願いします』
「知るか!」
年賀状の文面に一人で声に出してツッコミを入れながら、乱暴に野分の年賀状の山に乗せた。
俺の方には、大学関係者やゼミの学生からの年賀状が多い中、結婚報告を兼ねた大学の同期からの写真入りの年賀状も一枚あった。
幸せそうな二人の笑顔の写真を裏返すとそっと俺の年賀状の山へ置いた、
きっと、これからはこんな年賀状が増えていく。
そんなことを考えながら、機械的に分けていると、見覚えのある字に手が止まった。
あれほどいらないって言ったのに、やっぱり出したのかよ。
新年の挨拶と可愛い羊の絵の下に、隙間なく文字が綴られている。
昨年あった出来事、今年二人でやってみたいこと、そしてその合間に何度も書かれている『ヒロさんが好きです』の言葉に顔から火が出そうになった。
そして、最後に書かれた言葉。
『今年もヒロさんを大切にします』
「アホか、、」
そう言いながら口元が緩んでいくのがわかって、慌てて自分の年賀状の山へ置いた。
野分宛の年賀状の山をテーブルの上でトントンと端を揃えると、輪ゴムで留めておく。
それから、自分宛の年賀状を一枚一枚ゆっくりと読みながら、重ねていく。
野分からの年賀状だけを手にすると、ソファーに深く座って、もう一度読み返した。
忙しい仕事の中、いつ書く暇があるのかと思うのだが、野分は、毎年俺にまで年賀状を出してくる。その度に、いらないと伝えているのだが、野分はいつも同じことを言う。
「俺がヒロさんに出したいだけです。」
その時の顔を思い出して、また頭に血が上りそうになって、ソファーのクッションを強く抱きしめた。
そのままクッションに向かってボソッと呟く。
「大切にするってんなら、正月くらい早く帰って来いよな。」
そう言った声が聞こえたかのように携帯電話が震えた。
開くと野分からのメールが入っていた。
『今から帰ります』
俺たちの新しい年が、やっと始まる。
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