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当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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冬凪

野分の成人式の日。この頃のヒロさんは、野分が自分に対してどう思っているのか、あまり分かっていなかったんではないかと妄想。
ぐるぐるヒロさんです。

2015.1.13



アパートのドアを開ける。
そこには、俺の贈ったネクタイを締めた野分が立っていた。
「どうですか?」
「まあ、いーんじゃねぇの?」
そう言って俺は目を逸らす。
背が高くて、体格がいいからきっと似合うと予想はしていたけれど、スーツを着た野分はいつもよりずっと大人っぽく見えた。
まるで、俺の知らない野分のようだ。
「ヒロさん?」
俯いた俺に心配そうに俺に触れる手はいつだって温かい。
だけど
俺はこの手を掴んでいてもいいんだろうか?
「ほら、ネクタイが曲がってるぞ」
肩に置かれた手をそっと払うと、ネクタイの結び目を直してやった。
「ありがとうございます。」
頭の上から嬉しそうな声が降ってくる。
ネクタイを整えて見上げると、そのまま野分の腕に抱きすくめられそうになった。
ダメだ。
グッと自分の腕を伸ばして身体を離す。
「ヒロさん」
「早く行ったほうがいいぞ。」
成人式に行く前に、わざわざ俺のアパートに寄ってくれたせいで遠回りになっていた。俺は野分の肩をぽんぽんと両手で軽く叩くと、玄関のドアへ押しやった。
「久しぶりに会う友達もいるだろ。」
「あの、俺、早く帰ってきますから。」
「そんなこと言ってねえで、楽しんでこいよ。」
そうだ。
お前には、もっとふさわしい場所がある。
もっとふさわしい人がいる。
俺に会ったときはまだ子どもだったから、気づいていなかっただけで、大人になったらきっと気づく。
気づいてしまう。
だったら、いっそのこと早く気づいてしまえばいい。
そのほうがいい。
自分自身の価値に気がついたら、きっと変わるから。
「ヒロさん。」
玄関で立ち止まった野分が振り返ってジッと見つめてきた。
「何?」
「俺、別に成人式には出なくてもいいんです。」
静かに告げる言葉が冷えたアパートに落ちる。
「何言ってんだよ。式ってもんには、ちゃんと意味があるんだぞ。」
ガキみたいなことを言う野分に対して、俺は思わず説教調になった。
野分の硬い声が返ってきた。
「でも、、俺にとってはそんなに意味ないですから。」
「は?お前なにを、、、」
「ヒロさんだけに祝ってもらえれば、それだけでいいんです。だから、今日の成人式だって、別に出なくても、」
「野分。」
俺は野分の言葉を遮るように名前を呼んだ。野分は真っ直ぐに俺の顔を見ている。
「野分。」
「はい。」
お前はいつだってそうやって俺を困らせる。
真っ直ぐに俺を見つめて、俺の心をぐちゃぐちゃにしてしまう。
だけど
「帰ってきたら、ちゃんとお祝いしてやるから。」
「ヒロさん」
だけど、そんな野分の言葉を待っている俺がいる。
「だから、さっさと成人式に行ってこい。」
「はい。」
嬉しそうに笑うと野分は俺に腕を伸ばしてきた。
「いいですか?」
「聞くんじゃねえ。」
野分はそのまま俺をそっと抱きしめてきた。
大きな手のひらが、俺を包む。
俺はこの手を離すことなんて、できやしないと、また思い知らされる。
いつか、離れていくとしても、今はまだ、俺を掴んでいて欲しい。

許されるならば。
お前が大人になっても。

俺が一人で立てるようになるまで。

俺はそっと目を閉じた。
 

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