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当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

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忍れど ①

のわヒロの設定捏造パラレルです。
「中学を卒業した野分が働くことを決めたのは、宇佐見冬彦直属の忍者の仕事だった」お話し。

                             2020.5.10

「草間の実力なら、どこの高校でも大丈夫だと思うぞ。今は授業料だって免除されるところが多いし、就職するにしても中卒と高卒じゃ条件が変わる。どうしても高校に行きたくないなら、専門学校だけでも行っておいたほうがいいと思うんだがな」
 何度も言われた言葉を黙って受けとめる。
 窓から西日がさしこんでいる。
 中学三年生の冬。クラスメイトが志望校を決めていく中で、就職希望を出していたのは俺だけだったらしく、連日のように担任の先生に説得されていた。
 家の人とも、もう一度話したい、と言われた時だけは「園長先生は忙しいので」と言い返したが、それ以外はたいてい黙って聞いていた。大人は授業料が免除されるから、とか、奨学金がもらえるから、とか言うけれど、高校に通う、となったら授業料だけではすまないことくらい知っている。制服に教科書、毎日の昼食代。高校生活で必要なモノが全てタダになるわけではない。それに、高校生活の三年間にあまり意味を見出せないでいる俺にとっては、そこで過ごす時間こそが最も大きな無駄だ。
 俺はただ、早く一人で、誰にも迷惑をかけずに生きていけるようになりたい。
多分それは、本当の親の顔も知らずに育った俺だから思うことで、普通の生活をしているこの人に伝えても、理解してはもらえないだろう。
 黙り込んだままの俺に、先生は大きくため息をついた。
「気持ちは変わらないのか?」
「はい。あの、すみません。もう帰らないといけないんで」
 席を立った俺を見上げた顔は悲しそうだった。親切なこの人は、きっと俺が本当は進学したいのに我慢しているとでも思っているんだろう。
「就職先は紹介してもらったと言ってたが、本当にちゃんとしたところなのか?」
「ここです」
 山さんからもらった書類を差し出す。中身を確認した先生の表情が変わった。
「宇佐見グループ?まさか、あの宇佐見じゃ」
「はい、その宇佐見さんです。俺の境遇も知った上で、住み込みの仕事です。ですから先生、心配しないで下さい。俺は大丈夫です」
失礼しました、と頭を下げて教室を出た。
誰もいない廊下を早足で歩く。何度も繰り返された面談も、きっと今日で最後だろう。山さんは、こうなることを予想して就職に関する書類を用意してくれていたんだと思った。
 少し窮屈になってきた学生服と、なんとなく気を遣われながら過ごしてきた中学校とも、あと少しでさよならだ。
 早く大人になりたい。
 こればかりはどんなに努力したところで、早くなれるわけではないけれど、今の自分の願いはこれだけだった。


◆◆◆


 大きな会社の社長をしている山さんは「中学を卒業したら草間園を出る」と俺が決めたことを知った時、複雑な顔をした。
「わっちゃんは、えらいな」
「そんなことないです」
「園を出て、どうするんだ?」
「一人暮らししながら働きます」
「そっか」
 この話をすると大人はみんな「無理だ」と言うから、きっと同じことを言われると思っていたけれど、山さんは違った。
「何かやりたい仕事があるのか?」
「特にないです」
「だったら住み込みで仕事してみないか」
「すみこみ?」
「そう。大きなお屋敷の中で仕事をして、使用人はそれぞれ部屋をもらって住むこともできる。それなら家賃もかからないぞ」
「そういう働き方もあるんですね」
「まあ、最近の若い子はあんまりこういう働き方は好きじゃないんだろうけど、わっちゃんならできるんじゃないかと思ってな」
 正直、中卒ではできる仕事は限られるから、働く場所と住む場所が手に入るのはありがたかった。
「働いてみたいってんなら、紹介するぞ」
「どんなところなんですか?」
「宇佐見グループって知ってるか?」
「宇佐見グループ、ですか」
「まあ、とにかくやたら大きな会社なんだが、そこの一番偉い人の家で、住み込みで働けるしっかりした若い子を探してるんだ。わっちゃんなら、若いし、気がきくし、バッチリだ。どうする?」
「お願いします」
 山さんに頼んで数週間後、俺の元へ、一通の手紙が届いた。それは宇佐見グループからの「面接」の案内だった。
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