忍者ブログ

frown

当ブログ、「frown 」は二次創作テキストブログです。 純情エゴイストが好きすぎて、その想いをひたすら吐き出しております。 女性向け、同人・BL要素が含まれておりますので、閲覧の際には何卒ご注意ください。 原作者、版権元、など公式のものとは一切関係ありません。 ブログ内の文章の無断転載・引用はお断りします。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

今日の間は楽しくあるべし④

ヒロさん、お誕生日おめでとう 〜夜〜


今日最後の講義を終えて教室を出る。
連休前ということもあっていつもより楽しげに散っていく学生の中から呼びかける声が聞こえて立ち止まった。
「上條先生ー」
学生が三人、固まりになって近づいてくる。
「……なんだ?」
講義の後で質問してくるような熱心な学生は歓迎だが、こうして何人かで来るような場合は要注意だ。
「今日誕生日ですよね」
「なんで知ってるんだ?」
「おめでとうございまーす」
質問に対する答えになってない返事に眉をひそめつつ、なぜかは分からないが祝ってくれる気持ちは受け取ることにした。
「ありがとう」
「で、何歳になったんですか?」
好奇心丸出しの視線を頭のてっぺんから足元まで浴びせられてため息をつく。
「何歳でもいいだろ」
「教えて下さいよー」
大学では『鬼の上條』と呼ばれて久しいが、最近の学生は物怖じしないのが増えた。人懐っこいというか、馴れ馴れしいというか。これも時代の流れなんだろうか。
(俺も歳を取るはずだ)
まとわりついてくる学生から逃げるように研究室に入った弘樹がホッとする間もなく今度は宮城教授が抱きついてきた。
「なんなんですか……」
「誕生日おめでとーマイスイートハニー」
「誰がハニーですか!!」
ベタベタとくっついてくる宮城をえいやっとばかりに引き剥がして睨みつける。
「冷たいなー。俺とお前の仲じゃないか」
「一般的に上司と部下の関係をハニーとは言いません」
「ケチケチすんなって」
「勘弁してくださいよ。その悪ふざけのせいであの子に睨まれるのは俺なんですよ」
「あ、そういえば」
「話をそらさないで下さい」
宮城は、暗くなってきた構内を窓から覗きこんだ。
「正門の前にいたぞ」
「誰がですか」
「例の背の高いカ・レ・シ」
「なっ、えっ?!ええ?」
「今日は冷えるから早く行ってやれよー」
「でも、まだ仕事が少し残って」
「いいって、いいって」
「ありがとうございます」
コートと鞄を手にドアへ向かった弘樹が振り返る。
「じゃあ、残りの資料の印刷はご自分でお願いしますね」
「えっ?待って、それって俺の頼んだ」
「お先に失礼します」
上條〜、と叫ぶ悲痛な声をドアで塞ぐ。
はやる気持ちのままに正門に着いた弘樹が見たのはコートを着て佇む野分だった。
「野分」
呼びかけた声に微笑んだ野分の周りが、ぱあっと明るくなったように見えた。
「お疲れ様です」
「いつから待ってたんだ」
「まだ来たばかりですよ」
「寒かっただろ」
「ヒロさんのコートを着てきたんであったかかったです」
着ているコートを撫でる野分の手にドキリとする。
誕生日にコートをプレゼントしてからというもの、野分は毎年寒くなってくるのを待ち遠しく思っているらしい。
(それにしてもよく似合う)
自分が見立てたコートだが、店で見たときより、野分が着ている方が何倍も良く見える。
(コイツは何着ても似合うからな)
さっきからチラチラと野分を見ている学生の視線が痛いくらいだ。
「お前、もしかして本当に迎えに来たのか」
「はい」
忠犬よろしくニコニコ笑う野分につられて笑いながら並んで歩き出した。
PR

この記事へのコメント

Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧できます
 

プロフィール

HN:
さるり
性別:
女性
自己紹介:
ヒロさん溺愛中

最新記事

(07/17)
(07/17)
(07/17)
(07/17)
(07/17)

P R

忍者カウンター

Copyright ©  -- frown --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Photo by momo111 / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]

javascript:void(0); javascript:void(0);